いろいろわかる… 林部智史、ロングインタビュー!「泣き歌の貴公子」と言われる、優しく、心に染みる歌声! あの 小椋佳 が認めて、歌を託した若きシンガー! 心の琴線に触れる叙情歌を歌う「琴線歌」シリーズ アルバム 第3弾! 自身が作詞作曲した新曲「時を紡いで」も収録!「皆さんの故郷が見える声で良かったのかな…」 -MUSIC GUIDE ミュージックガイド

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いろいろわかる… 林部智史、ロングインタビュー!「泣き歌の貴公子」と言われる、優しく、心に染みる歌声! あの 小椋佳 が認めて、歌を託した若きシンガー! 心の琴線に触れる叙情歌を歌う「琴線歌」シリーズ アルバム 第3弾! 自身が作詞作曲した新曲「時を紡いで」も収録!「皆さんの故郷が見える声で良かったのかな…」

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Hayashibe Satoshi

林部 智史

New Album
『 琴線歌 其の三 〜はやしべさとし 叙情歌を道づれに〜 』


★ 2016年のデビュー曲『あいたい』が「今、もっとも泣ける歌」として大ヒット!
★「泣き歌の貴公子」と言われる、優しく、心に染みる歌声!
★ あの 小椋佳 が認めて、歌を託した若きシンガー!
★ シンガーソングライターでもありながら「歌手」として独特の存在感を放つ!


★ 心の琴線に触れる叙情歌を歌うアルバム「琴線歌」シリーズ第3弾!
★ 小椋佳による「愛燦燦」などのポップスも含む全15曲!
★ 自身が作詞作曲した新曲「時を紡いで」も収録!



リリース 情報


林部智史 「琴線歌 其の三~はやしべさとし 叙情歌を道づれに~」
【限定販売商品】
アルバム CD
2021年 9月1日 発売
AVC1-96771
2600円(税込)
avex trax / Avex Entertainment


<下記 4ヶ所での限定販売商品>
1)全国の日本生活協同組合 (生協 共同購入 / 宅配カタログ)
2)林部智史 コンサート会場
3)林部 Family Official CD Shop(林部智史ファンクラブ会員 CD 予約販売サイト)※登録無料
4)9/23(祝・木)配信「おうちでコンサート」視聴予約者(9/5まで)


9/23(祝木)配信「おうちでコンサート」視聴予約ページ(9/5まで)

林部 Family Official CD Shop(ファンクラブ会員限定CD予約販売)



収録曲


01 愛燦燦 (美空ひばり、小椋佳)
02 浜辺の歌
03 旅愁
04 いのちの歌 (茉奈 佳奈、竹内まりや)
05 十五夜お月さん
06 翼をください (赤い鳥)
07 みかんの花咲く丘
08 𠮟られて
09 切手のないおくりもの (財津和夫、ボニージャックス、ペギー葉山、田中星児)
10 落葉松(からまつ)
11 宵待草
12 忘れな草をあなたに (ヴォーチェ・アンジェリカ、倍賞千恵子、菅原洋一 ほか)
13 冬の星座
14 雪の降る街を
15 時を紡いで(オリジナル 新曲 / 作詞・作曲:林部智史)


林部智史 エイベックス

林部智史 オフィシャルサイト

林部智史 オフィシャル YouTube


アルバムの歌詞を見る!

林部智史 歌詞一覧



配信コンサート情報


はやしべさとし 三十歳の旅立ち ~叙情歌を道づれに~ 歌の旅路をふり返れば 編

配信日時: 2021年 9月23日(祝・木)15:00開演(14:30開場)
公演時間: 約80分
視聴料金: 3,600円(税込)

発売期間: 2021年 9月5日(日)23時59分 まで 視聴券購入可能

※ リアルタイム配信ではありません。
※ 視聴予約者をすると、限定販売アルバム「琴線歌 其の三~はやしべさとし 叙情歌を道づれに~」の
  注文ができます(ポストカード付)。


9/23(祝木)配信「おうちでコンサート」視聴予約ページ(9/5まで)



ラジオ レギュラー番組


林部智史の「あいたいラジオ」
・山形放送  毎週水曜日 11:30~11:50
・山口放送  毎週土曜日 18:00~18:20 
・ラジオ福島 毎週土曜日 19:30~19:50
・北日本放送 毎週日曜日 12:10~12:30
・福井放送  毎週日曜日 12:40~13:00 

番組サイト


はやしべさとし ~叙情歌を道連れに~
・KBS 京都放送  毎週月曜日 05:00~05:15
・KNB 北日本放送 毎週月曜日 05:15~05:30
・CRT 栃木放送  毎週木曜日 05:15~05:30
・YBC 山形放送  毎週金曜日 21:00~21:15
・SBC 信越放送  毎週土曜日 05:00~05:15
・RNC 西日本放送 毎週土曜日 05:15~05:30
・ABS 秋田放送  毎週土曜日 05:30~05:45
・WBS 和歌山放送 毎週土曜日 06:00~06:15
・RKK 熊本放送  毎週土曜日 07:30~07:45
・ROK ラジオ沖縄 毎週土曜日 17:15~17:30
・RNB 南海放送  毎週日曜日 05:00~05:15
・GBS ぎふチャン 毎週日曜日 15:00~15:15




林部智史 ロング・インタビュー


 林部智史の歌声は優しい。やわらかく、チカラが抜けた豊かな響きで、言葉を語るように歌うから、聴いていて心地よく、疲れない。嫌味がなくて素直だから、メロディや言葉が伝わってくる。情熱的に声を張って力強く歌う歌手が多い中、こういう人は珍しい。

 歌には、その人の性格やそれまでの人生がよく表れるものだ。林部智史の歌が優しいのは、林部智史 自身が優しい人だからだと思う。それも「表面的な優しさ」ではなく、本人は多くを語らないが、きっと辛いこともたくさん経験したからこそ持ち得る「本当の優しさ」を持っているからだと思う。それが、自然と歌に滲み出ているのだろう。

 インタビューでは、ゆっくりと言葉を選びながら誠実に話す姿が印象的だった。繊細で、感受性が強く、どちらかと言えば、人見知りな感じのする、おとなしい好青年というイメージだが、時々、凛とした芯の強さも垣間見せる。

 「歌手として自分の良さは何なのか?」を客観的に見て、「自分がやりたいこと」よりも「歌手として自分に何が求められているか?」を考え、それに答えようとする姿勢からは、本当のプロフェッショナリズムを感じる。

 2016年、シングル『あいたい』で歌手デビューし、「今、もっとも泣ける歌」としてクチコミで広がり、有線全国ランキング1位を獲得。その後もロングセールスを続け15万枚を突破する大ヒットとなり、「第58回 日本レコード大賞」新人賞、「第49回 日本有線大賞」新人賞を受賞。

 聴くと心をつかまれるという「泣き歌の貴公子」の異名も持つ 林部智史は、昨年、2020年にデビュー5周年を迎えた。

 そして、あのレジェンドとも言えるシンガーソングライターの小椋佳が、次世代を担うシンガーとして、林部智史を後継者として指名。小椋佳は、今年、2021年のデビュー50周年を迎える年にファイナルツアーを行い、歌手活動に幕を引く予定だ。

 今年、2021年1月に発売された、林部智史の3枚目となるオリジナルアルバム『まあだだよ』は、小椋佳が林部智史のために全曲を書き下ろした(ボーナストラックには、林部智史が作詞作曲したタイトル曲『まあだだよ』が収録)。

 さらに、アルバム発売日の同日に、小椋佳も自身の音楽活動に自ら幕を引く最後のアルバム『もういいかい』を連動してリリースし、『もういいかい』『まあだだよ』というタイトル、ジャケット写真のイメージの連動だけでなく、収録曲のうち2曲『ラピスラズリの涙』と『僕の憧れそして人生』は、それぞれの解釈のもとにレコーディングされ、それぞれのアルバムに収録されている。

 林部智史と小椋佳のアルバム発売後、テレビ等でも歌われ話題となっていた『ラピスラズリの涙』が、リアレンジされ、5月に新録音でシングルカット。カップリングには、林部智史と小椋佳のデュエットバージョンに、小椋佳の代表曲のひとつ『少しは私に愛を下さい』のカバーも収録されている。

 そういったメインとなる活動の一方、2018年の秋からは、ひらがな表記の「はやしべさとし」名義で、日本の唱歌や童謡など、美しい調べを歌い継ぐ叙情歌コンサートも開始し、2019年3月に、初の叙情歌アルバム『琴線歌 〜はやしべさとし 叙情歌を道づれに〜』をリリース。同年11月には、叙情歌アルバム 第2弾『琴線歌 其の二 〜はやしべさとし 叙情歌を道づれに〜』がリリースされている。

 叙情歌アルバムと言っても、本当に唱歌や叙情歌だけというわけではなく、「叙情歌的な歌謡曲」なども含まれている。

 叙情歌アルバム「琴線歌シリーズ」第3弾となる今作『琴線歌 其の三 〜はやしべさとし 叙情歌を道づれに〜』にも、『浜辺の歌』『旅愁』などの美しい叙情歌とともに、『翼をください』(赤い鳥)、『いのちの歌』(茉奈 佳奈 / 竹内まりや)、『切手のないおくりもの』(財津和夫)や、小椋佳が美空ひばりに提供した『愛燦燦』なども収録されている。

 一瞬、バラバラのようにも感じるが、実際、聴いてみると、ピアノ1本と林部智史の歌のみで綴られたこのアルバムに違和感はないどころか、むしろ統一感を感じるし、「歌」の本質、楽曲が本来持つ魅力をあらためて感じさせてくれる。とても良質な音楽を聴いた気になる。とかく、疲れる音楽が多い中、リラックスできるアルバムだ。

 加えて、この「琴線歌シリーズ」では、毎作、林部智史 自身が作詞作曲したオリジナルの新曲が 1曲収録されている。その歌声と同様に、林部智史が書く詞もメロディも優しい。毎回、とても良い曲を書いている。

 そういう シンガーソングライター でもありながら、自作の曲にはこだわらず、作家による作品やカバー、小椋佳の提供曲や叙情歌カバーも歌う。

 林部智史は、「シンガーソングライター」と言われるよりも、ただ単に「歌手」と呼ばれる方を好む。そこに、林部智史を理解するためのカギがある。


<もくじ>

1 叙情歌を歌うアルバム『琴線歌』シリーズ 〜「そういう思いがいつか重なればいいなと…」〜  
2 自身が作詞作曲した『時を紡いで』 〜「ず〜っと僕の中で残っている言葉だったんです…」〜
3 デビューのきっかけとなったカラオケ番組 〜「気づいてきた時期でもあったんですね…」〜
4 小椋佳が全曲書き下ろしたアルバム 〜「作り手としても思いを伝えたかったんですね…」〜
5 デビュー5周年……、そして、これから 〜「皆さんの故郷が見える声で良かったのかな…」〜


1 叙情歌を歌うアルバム『琴線歌』シリーズ 〜「そういう思いがいつか重なればいいなと…」〜

ーー 林部智史のメインの活動とは別に、ひらがな表記の「はやしべさとし」名義で、日本の唱歌や童謡など叙情歌をカバーして歌うアルバム『琴線歌』シリーズを 2019年からリリースし、今作『琴線歌 其の三 〜はやしべさとし 叙情歌を道づれに〜』が その3作目となる。「現代の叙情歌」とも言えるような歌謡曲やポップスも含むアルバムだ。ピアノ1本と、林部智史の歌だけで聴かせるシンプルなアルバムは、その歌声の優しさから、言葉と楽曲の良さがよく伝わる。とかく、疲れる音楽が多い中、リラックスできるアルバムだ。

林部:きっかけは、もともと叙情歌のラジオ番組からスタートしたんですね。それから、コンサートがスタートして……。コンサートの名前が『はやしべ さとし 三十歳の旅立ち 〜叙情歌を道づれに〜』という名前なんですけど、その後、2019年に1枚目の『琴線歌』が出たっていうことなんです。

ーー 2018年の10月から、ラジオのレギュラー番組『はやしべさとし 〜叙情歌を道連れに〜』が、秋田放送、和歌山放送、熊本放送、栃木放送で始まり(現在は 全国12局ネット)、その後、コンサート化されたことが、このアルバム『琴線歌』シリーズのきっかけだった。

林部:でも、もともとは、アルバムに収録しようと思ってたわけじゃなかったんですね。ラジオ番組で自分の歌う叙情歌を入れていただこうっていうことで、そのために録音していたものがあったんです。だから、今回も、このアルバムのために、3枚目のために録音したという形ではなくて、ラジオで流した楽曲の中から、テーマをもとにまとめて収録させてもらったっていう形ですね。

ーー 今回のアルバムのために録音したのではなく、もともと番組のために収録していた音源から、今回の「つながる」というテーマのもとに集められたアルバムということだ。

林部:そうです、そうです。まあ、番組と、その「叙情歌の旅」っていうコンサートを、今、平行してやらせていただいていて、その一環で「まとめ」みたいな形ですよね。

ーー そもそも叙情歌を歌おうと思ったきっかけは何だったのだろう?

林部:そうですね……。あの……、僕が歌ってる歌って、デビュー曲の『あいたい』もそうですけど、やっぱり「哀愁」とか「懐かしさ」とか、自分自身でもそういうところがあるのかなというふうに思っていて、で、そこを突き詰めると、結局、叙情歌に行きつくんですね。

林部:カバー曲とかもそうですけど、『希望』(5枚目のシングル曲、岸洋子のカバー)もそうですし、そういった「言葉を大切にする」楽曲たち……、それと「哀愁」「懐かしさ」っていうところを含めて、イチから勉強しようとすると、やっぱり到達するところには、童謡、唱歌、叙情歌があったんです。で、僕自身、ドンピシャでその童謡とか叙情歌と触れてきたかっていうとそうでもなくて、今回、出させてもらう楽曲も、半分以上は、正直、知らなかった楽曲っていうのが事実で、だから、30歳を機に、今一度、歌い手として学びたいところがあるなって……。学んだ上で、皆さんに、僕の声を通して聴いていただければということで始めました。

ーー それは、ある意味、歌手としての自分を、客観的に別の視点から見て、「自分はこういうのを求められてるんだろうな」ということを追求した結果だ。

林部:そうですね。あと、今はメインの活動ではないですけど、最終的に目標があって、自分自身でも「叙情歌のように長く愛される、深く愛される楽曲を作れれば……」っていうことで、毎回、オリジナル曲を最後に入れさせてもらってるんですけど……。やっぱり、今は別々な感じで、自分の本ツアーのコンサートと、叙情感コンサートって違う形でやらせてもらってるんですけど、それが、いつかオリジナルっていうところで合わさる日があってもいいと思うし、で、オリジナルを作るにあたっても、叙情歌の影響も受けたり、いろんな学びの中で、できたらいいなっていう……、そういう思いがいつか重なればいいなと思っています。

ーー 2018年の10月から続くラジオ番組で、毎週、叙情歌を歌っていて、叙情歌のアルバム『琴線歌』シリーズも3枚目となり、アルバムに収録された叙情歌だけでも42曲にもなる。それほど歌っていれば、自分の中にも自然と吸収されているだろうし、それが、自分で作るオリジナル曲にも、良い影響を与えるだろう。

林部:そうだと思います……、はい。

ーー 知らなかった曲も多く含まれているから、なおさらだろう。

林部:そうですね。だから、僕は、正直、ほとんど選曲してなくて、選曲はウチのチームでというか……。やっぱり教えてもらわないとわからないところが多いですし、「こういった楽曲があるよ」っていうリストもらって、レコーディングしていくんですね。知らない曲に関してはなるべく歌うようにしますけど、ただ、例えば、童謡でも『ぞうさん』とかは……、『ぞうさん』をレコーディングするわけにいかないじゃないすか(笑)。そういうところは、「違うんじゃないだろうか」って言うことはありますけどね。そうですね……、僕の意見もプラスアルファで入ってますね。だから、「僕の声で歌う意味がある楽曲」っていうところを踏まえて、選曲は、そういう意味では携わってます。

ーー そんな知らなかった曲も含まれた中で、今回、歌って難しかった曲はどの曲なのだろう?

林部:そうですね〜。基本的には全部難しいですね(笑)。シンプルな楽曲は、シンプルだからこそ難しいなと思いますし、サビっていう概念がない楽曲が多いじゃないですか。だから、例えば、歌謡曲でもあり叙情歌でもある『愛燦燦』とか『忘れな草をあなたに』とかだったら、Aメロ〜Bメロ〜サビっていう形があって、そういうちょっとJ-POP的な作りの曲もある中で、『浜辺の歌』『旅愁』とか、そういう歌って、もうオリジナルな味付けができないので、最初はすごい悩みましたね……、「僕が歌う意味」っていうところで……。だけど、あえて個性を出しすぎないっていうところは、歌い手として、すごく叙情歌のときは徹しているところですね。なんか、僕が感情を乗せるべきものじゃない歌が結構多いイメージがありますね。なので、その歌によってのさじ加減っていうのは、非常に難しいなと思ってます。

2 自身が作詞作曲した『時を紡いで』 〜「ず〜っと僕の中で残っている言葉だったんです…」〜

ーー 現代のレコーディング技術は驚くほど進化していて、ずいぶん前からだが、歌を録音する時に、1曲を通して歌うのではなく、Aメロ、Bメロ、サビといったようにブロックごとに分けて録っていく歌手も少なくない。また、部分的にワンフレーズだけを差し替えたり、何度か通して歌ったテイクの良いところだけをつなぎ合わせて1曲にしたりすることも多い。だが、林部智史の場合、そういうふうにブロックごとに録ったりはしないし、1曲通しての一発録音にこだわる。

林部:そうですね、ピアノと一緒に……。

ーー しかも、集中して、できるだけ少ないテイクで仕上げる。

林部:そうですね。何が最終的に収録されるかはわからないので、短時間で、1日6曲とか録ってます……。で、最終的にピアニストの方と「あ、今のは良かったね」っていうのを使ってもらったりします。だから、2テイク目で途中まで良かったけど、途中から声が微妙だったりとかすると、それは使えないので、じゃあ 3テイク目を頑張ろうっていう形になります。あまりうまくいかなくて 3テイク録ったとしたら、その3テイク目で「今の良かったね」ってなって、3テイクを使うことが多いですね。

ーー そういうふうに、技術的にツギハギにせず、一発録りにこだわっていることも、林部智史の歌が伝わる要因のひとつだろう。流れもあるし、呼吸のリズムや緊張感が途切れない。

林部:そうですね。で、例えば、今回の楽曲とかも、『時を紡いで』『いのちの歌』とかと、『旅愁』って、実は、この間が 4年くらい空いてるんですよね、収録した時期が……。なので、本当にラジオが最初で、この『琴線歌 其の三』のために作ったわけではないんですよ。ただ「初出し」ではありますけどね、こうやって形にするのは。『旅愁』は、わりと最初の方、2018年とかに録ってますね。だから、それぞれ、録った時期が全然違うんですよ。一番最後で……でも去年ですね、去年の夏だった気がします、『時を紡いで』『いのちの歌』とか録ってますね。なので、自分の中で、多少歌い方が違うのもあるし、「今だったらこのキー設定はしないな」っていうのもあります。

ーー そういうのを歌い直したいとは思わないのだろうか?

林部:思いますね……(笑)。思いますけど……、なんかこう、やっぱりそれって、自分のオリジナル楽曲もそうなんで……。今、5周年なんですけど、当時の楽曲とかをたまに聴いたりするとね……、当時って言っても 5年前ですけどね……。

ーー 歌手ならば誰でも、昔に録音したものよりも「今の方がうまく歌える」と思うものだ。どんなに歌が上手い歌手でも「もっとうまくなりたい」と思うものだし、それを言ったらキリがない。

林部:そうなんです。だからそれはそれで……。ただ、鼻濁音とか、あと「ここビブラートをかけすぎたな」とか、そういう気づきは少なからず多くなってきて、で、いろいろ自分の中でビブラートを結構減らす時期とか、鼻濁音にすごく気をつける時期とかを経てるんで、だから、それぞれで結構歌い方は違ってますね……、うん。

ーー 今回、小椋佳が美空ひばりに提供した『愛燦燦』も収録されている。美空ひばりでも知られているし、ある意味、林部智史にとって師匠のような存在となった小椋佳が作って自身も歌っている曲だから、聴く方のハードルも自然と高くなる。しかし、それを、ちゃんと林部智史のスタイルに昇華して見事に歌っている。歌い出しの「♪あめ〜」の感じなど、小椋佳の歌い方に似ている。

林部:あ、ホントですか! それは良かったです。僕も、すごいハードルが高いですし、やっぱり、年上の、人生の先輩から言わせると、「まだ早い」って絶対言われるんですよ。でも……、それって、全曲そうだと思うんです。「じゃあ、いつならいいのよ?」ってなりますし、今だから残せる歌ってのもあると思うんですね。僕も『愛燦燦』を自分で聴いてて、「あ、今の歌として、わりといいテイク残せたんじゃないかな」って、今回、この CD 聴いて思いました。美空ひばりさんのキーよりも、もちろん下で、小椋佳さんのキーより上なんですけど、その間のキーっていうのも、わりといいところを選んだのかなって思いますね。

林部:『愛燦燦』は、小椋さんのアルバムが出る前、そのプロジェクトが進んでいる去年の秋くらいに録音したんですけど、でも、もともとは、とくにアルバムに収録するなんていう話はなく、たぶん『ラピスラズリの涙』もまだ来ていない時期ぐらいだと思うんですけど……。でも、この『愛燦燦』に関しては……、小椋佳さんは、最後の「♪あ〜あ〜」が下がるんじゃなくて、上がるんですよ……、だから、そうしとけば良かったなぁって……(笑)、「やっちゃったな……」って思ってます……(笑)はい。

ーー 叙情歌のカバーアルバム『琴線歌』シリーズは、毎回、15曲入りで、最後の15曲目には、林部智史 自身が作詞作曲した現代の叙情歌が収録されている。今回、収録されている『時を紡いで』も、詞もメロディも優しい歌で、「あたりまえの幸せ」を歌った歌詞が伝わってくる。

林部:これは、このアルバムの中では一番新しくて、昨年、ちょうどコロナ禍で、『おうちでコンサート』っていうのをやりはじめた時期に、2本目の『おうちでコンサート』を、僕の地元、故郷の山形の「山形県郷土館 文翔館」っていうところでやらせてもらったんですね。旧県庁なんですけど、そこに時計台があって、それが日本で 2番目に古い時計で、今年で105年になるんですけど、それをずっと整備し続けている方とお話しをしながら、その叙情歌の『おうちでコンサート』をやらせてもらったんです。

林部:やっぱり、その……「守り続ける、僕は歌い継ぐ」っていう言葉を、この叙情歌のメインテーマとしてやらせてもらってるんですけど、通ずるところがあるのかなっていうふうに思って、その方と話をして、この曲を書こうと思ったんです。だから、タイトルも『時を紡いで』っていうふうになりました。

林部:だから、もちろん、「その方に……」っていうところもありますし、それだけでなくて、普遍的に皆さんに聴いていただきたいっていう思いも込めて作りました。なんか、その……、僕にとってその文翔館の時計っていうのは、自分の学区だったんで、中学校のころからずっと毎日見ていたものなんですね。で、その時計を、何気なく毎日見てたんですけど、今回、お話するまで、その方が回してたり整備してたりするっていうのは知らなかったんです。3日もすると、ちょっとズレてきたりするんで、整備しないといけないんですけど、そういう風景を見てると、『時を紡いで』の最初のフレーズ、「♪いつも目にする風景は 誰かが見せてくれてる 知らない場所で 時を紡ぐ」とかっていうイメージが湧いたりとかしましたね。

林部:そこからインスピレーション広げて……。あとは、僕がハタチぐらいのときですかね、「”当たり前” っていう言葉の反対は、”有難い” なんだよ……」っていうこと言われたことがあって、ず〜っと僕の中で残っている言葉だったんです。これは、もともと仏教の言葉で、たぶん、法事のときのお坊さんのお話だったと思うんですけど……。

ーー まさに、『時を紡いで』の歌詞、「♪そばにいる人の そばにいれること 当たり前の時こそが 有り難い時と知る」につながっている。今回のアルバムのテーマ「つながる」を締め括るアルバムの最後のメッセージとしてもぴったりだ。

林部:そうですね、今回のアルバムのテーマは「つながる」なんですけど、その〜、なんですかね……、結構、曲の年代的にも、わりとバラバラと、すごい古い楽曲もあれば、竹内まりやさんの楽曲があったりとか、明るめの『切手のないおくりもの』だったりとかも入ってたりするんですけど……。でも、やっぱり今、このコロナ禍だからこそ、人と人とのつながりも微妙な感じになってて……、で、「歌のつながり」というか、コンサートもなかなかしづらい状況でっていうところで考えると、なんかこのバラバラとしたものが、非常に意味があるような気がしてきてるんですね。1枚を通して聴いてると「次は何の曲なんだろう」って……。なんか、流して聴くと、一瞬、一貫性が僕の中でなかったんですよね……、『愛燦燦』聴いて『浜辺の歌』が流れてって……。ただ、今聴くと、なんか、より人生観が感じられる歌が非常に多いなって思ったんですよね。だから、いろんな垣根を越えて、1枚のアルバムになった感じがしています。

3 デビューのきっかけとなったカラオケ番組 〜「気づいてきた時期でもあったんですね…」〜

ーー 林部智史は、山形県新庄市で生まれ、山形市で育った。1浪してまで入った高校では、プロバスケット選手を目指してバスケットボール部に所属。全国大会にも出場し、山形県の国体選手にも選ばれるほどだったが、在学中に挫折し、プロになる夢を諦めてしまう。

林部:そうです。全国レベルを知って諦めました……、逆に。

ーー その後、看護師になろうと思い、高校卒業後は看護専門学校に入学したが、在学中にうつ病になり、看護専門学校は中退。その後も、引きこもり生活となる。その引きこもりから抜け出したきっかけがあった。

林部:そうですね……、そのアクションを起こしたのは、その時は、正直、自分の力じゃなくて、姉の力ですかね。姉が沖縄に住んでたんですけど、姉がすごく心配してくれて「沖縄に来い」って、そういうふうに言ってくれて、で、行きましたね。沖縄でまず姉のところに何ヶ月間か住んで、そこで、基本的には、最初は何もしてませんでしたね。途中から、運動をしだして、料理しだして、で、バイトしだして……、って気づいたときには、「日本全国に行ってみたい……」ってなってました。

ーー それからは、アルバイトをしながら日本中を放浪した。北海道の最北端である稚内からフェリーで約3時間という、まさに最果ての地、礼文島で働いていたこともある。

林部:うん……、そのくらい、何かがはずれた時だったんですよね……。2年弱くらいですかね……。でも、実際、働いたのは、北海道礼文島と、あと新潟くらいですけどね。

ーー その北海道礼文島のホテルで働いていた時、友人から「その声で歌手を目指さないのはおかしい」と
言われたことがきっかけとなり、歌手を目指そうと決心した。しかし、「歌手を目指す」ということは、そんなに簡単に決心できることでもない。何がそうさせたのだろうか?

林部:う〜ん……、なんか「なんで目指してなかったんだろうな……」っていうふうに、ちょうど腑に落ちた時期だったんで……。「歌も歌えるし、人よりはうまいな……」ってのは、ずっと思ってはいたんですけど……。で、まあ言っちゃえば……、「歌うまいね」なんていうのは言われ慣れてたんですけど……(笑)、中学校とか高校の時から。でも、「なんで歌手目指さないの?」って言われたことは、それまでなかったんですよね。

ーー その当時、歌っていたのは、今のような歌ではなく、CHEMISTRY や EXILE など、いわゆる流行りの J-POP だった。

林部:そうですね、EXILE は、よく歌ってましたね。

ーー 歌手を目指すという一大決心をした後は、音楽の専門学校「ESP ミュージカルアカデミー」に入学するために上京。学費が全額免除となる「新聞奨学生」として住み込みで働きながら 2年間通い、ボーカルコースを首席で卒業した。首席ということは、もちろん歌の実力が評価されてのことだが、休まずキチンと通ってもいたということだ。「新聞奨学生」というのは、朝は、1時とか2時に起きて朝刊の配達、午後には夕刊がある。それを、まさに、雨の日も、風の日も、雪の日も……毎日、配り続けなければならない。なかなか続く人が少ない過酷な仕事だ。

林部:うん……、大変でした……、すごいツラかったですね。雨の日とかは、いまだに新聞配達の夢を見ますからね……。

ーー 専門学校在学中から、歌手になるべく『EXILE Presents VOCAL BATTLE AUDITION』など数多くのオーディションを受けるが、ことごとく失敗。卒業後は、東京ディズニーシーでガイドツアーをしていた。
そんな時、テレビ番組『THEカラオケ★バトル』から、ESPミュージカルアカデミーを通して出演のオファーが来た。アマチュアとしては初めてこの番組に出演し、その後、何度も出演を重ね、2015年1月の『THEカラオケ★バトル 全国 No.1選手権 2時間SP』では、K の『Only Human』を歌って優勝した。その後も、2015年4月の『最強アマ集結!歌うま王決定戦!』でも、松田聖子の『あなたに逢いたくて 〜Missing You〜』を歌って優勝。
その年、2015年10月に放送された『2015 年間チャンピオン決定戦 4時間 SP』では、辛島美登里『サイレント・イヴ』、 浜崎あゆみ『LOVE 〜Destiny〜(平井堅Ver.)』を歌い、番組史上初となる予選・決勝と連続100点満点で、それまで絶対女王だった 城 南海(きずき みなみ)を抑えて完全優勝した。そして、そこからデビューのチャンスが、ようやくめぐってきた。

林部:番組を見ていてくださった音楽関係者、今の事務所から声がかかったんです。『あいたい』の曲だけがあって、それを歌える人を探しているってことだったんです。

ーー のちに、林部智史のデビュー曲となる『あいたい』のメロディだけがあって、それを歌う歌手を探していたという。

林部:うん、そうそう。そう思ったって言ってましたね。まあ、ただ……、最初は女性が歌うイメージだったけど、僕の歌を聴いて「あっ、この手もあるな……」って、そういう発想だったと思うんですけど。

ーー たしかに、『THEカラオケ★バトル』では、松田聖子、辛島美登里、浜崎あゆみ……ら、女性ボーカルの曲をよく歌っていた。ちなみに、デビュー後の 2016年にも『THEカラオケ★バトル』に出演し、2年連続で年間チャンピオンになっているが、その時も、予選は加藤いづみ『好きになって、よかった』、決勝では荒井由実『翳りゆく部屋』と、いずれも女性ボーカルの曲を歌っている。

林部:そう、そう、それでだと思うんですけどね……。それで、「まだ歌詞がないから、詞書く?」って言われたんで、「はい、書きます」って言いました(笑)。その……、僕の力もわからないし、書けるかどうかもわかんないんで、もちろん、ボツになる可能性もあったんです。

ーー そうしてデビュー曲『あいたい』が出来上がり、2016年2月24日、27歳で歌手デビューした。しかし、『あいたい』は、それまで林部智史が歌ってきた EXILE などの J-POP とは曲調が全く違う。本当は、歌手としてそういう EXILE のような歌を歌いたかったのではないだろうか? 『あいたい』でデビューすることに戸惑いはなかったのだろうか?

林部:まあ、「どうなるんだろうな……」っていう思いはありましたけど……。やっぱり、その……、昔から見ると今ってデビューしやすい時代だなって言われてるんですけど、僕はそうは思ってなくて……。っていうのは、オーディションだってもう落ち続けたし、そんな中で、結局、僕がオーディションに受かり始めたのって、中島みゆきさんの『糸』を歌ってからなんですよね。だから、もちろん葛藤もあったんですけど、薄々、自分の中では、「こっちの方が自分の良さが出るんじゃないか……」ってことに気づいてきた時期でもあったんですね。ただ「この歌で僕は売れるんだ」っていう発想は、正直、その時はできなかったんですけど……、今思えば……。ただ、これからもやっていく自信はありましたね、その歌で。

ーー 結果、フタを開けてみれば、デビュー曲の『あいたい』は、「今、もっとも泣ける歌」としてクチコミで広がり、発売後 4ヶ月で「有線全国ランキング」で 1位を獲得。その後もロングセールスを続け、15万枚を突破するヒットとなった。2016年末には、「第58回輝く!日本レコード大賞 新人賞」「第49回日本有線大賞 新人賞」も受賞。しかし、デビュー前に『THEカラオケ★バトル』で歌っていた時とは、楽曲のタイプだけでなく、歌い方も全く違っている。『THEカラオケ★バトル』では、パワフルに張って歌っていた。意識的に歌い方を変えたのだろうか?

林部:ああ、それはもう、あの……『THEカラオケ★バトル』では、やさしい声だと点数が出ないので、もう、むちゃくちゃノドをつぶして、頑張って張って声出してましたね。とにかく、すごく張らないと点数が出なかったので。だから、逆に、張って歌う歌い方をそこで学んだので、デビュー曲からは、反面で優しくなったところもありますね……。「もうこの歌い方をしたらノドをこわす」とか、「自分が歌ってて楽しくない」とか、なんかそういうところの反面が、今もあるような気がします。

4 小椋佳が全曲書き下ろしたアルバム 〜「作り手としても思いを伝えたかったんですね…」〜

ーー 林部智史と小椋佳との出会いは、2018年2月に長野県の上田市で行われた、ジョイントコンサート『オールナイトニッポンコンサート in 上田』だった。それぞれが60分ずつの持ち時間で、アンコールでは、小椋佳の『さらば青春』を一緒に歌った。このことが縁で、その後、林部智史の新曲を小椋佳が書くという話になった。小椋佳からは、次々と曲が上がってきて、デモレコーディングをするうちに、気付けばアルバム1枚分にも及ぶ曲数になっていた。それが、今年、2021年1月に、小椋佳のラストアルバム『もういいかい』と連動してリリースされた林部智史のアルバム『まあだだよ』となった。
レジェンドとも言えるような小椋佳ほどの大物が、若手の歌手に曲を書き下ろす……、しかもアルバム1枚分も書くなどということは、極めて珍しいことだろう。それほど、林部智史の歌に惚れ込んだということだ。小椋佳が認めて、自分の後継者として歌を託したのが、若きシンガーが林部智史だった。これは、ものすごいことだ。

林部:ものすごいことだと僕も思っていて、正直、その重みというものを、受け止め切れてはいないと思うんですけど……、自分の中で。でも……、結局、今やることをやるべきことって、目の前のことはあまり変わらないので、そこの向き合い方が少し重みを増すなって思うんですよね。小椋さんからは、ありがたいお言葉をたくさん言っていただいてるんですけど、だから「なんかもっとこういうことをしよう」とか、そういうことじゃなくて、とにかく今は、いただいた楽曲と向き合って、歌っていく……、やるべきことはシンプルなんですよね。その結果、なにか恩返しできるような活動ができればいいなと思っています。

ーー 林部智史のアルバム『まあだだよ』の発売日と同じ日に、小椋佳も自身の音楽活動に自ら幕を引く最後のアルバム『もういいかい』と連動してリリースした。二人はレコード会社も所属事務所も違うが、『もういいかい』『まあだだよ』というタイトル、ジャケット写真のイメージまで連動している面白い企画だ。さらに、収録曲のうち2曲『ラピスラズリの涙』と『僕の憧れそして人生』は、それぞれの解釈のもとにレコーディングされ、それぞれのアルバムにも収録されている。この秀逸な連動企画は、どうして実現したのだろう?

林部:こちらからお願いしました……、僕が直接言える立場ではないですけども。小椋さんから、1年半ぐらいかけて8曲いただいて、で「これをいつ出すのか?」……、コロナ禍もあり、いつ出せるのかっていうところもあって、それで、小椋さんが「ラストアルバムを出す」ってなったときに、いただいた楽曲も『ラピスラズリの涙』だとか重なる楽曲もあったので……。

ーー 『ラピスラズリの涙』は、小椋佳が林部智史に書いた曲で、林部智史のアルバム『まあだだよ』のリード曲でもあるが、小椋佳も自身のアルバムで歌っている。勝手に歌っちゃったのだろうか?

林部:ふふふ……(笑)、いや、そこがちょっと踏み絵だったんですよ……(笑)、「あれっ?あれっ?」って(笑)。もともと小椋さんて、意識はもちろんされると思うんですけど、「誰々に歌って欲しいっていう想像をして書くっていう書き方は僕はしない」って言ってて、でも、いただいた曲の中でも、「これは若い人に聴いてほしい」とか、そういった楽曲ってあるんですけど、ただ……、「僕が歌ってる『ラピスラズリの涙』を小椋さんも入れる〜?」みたいな感じで(笑)、ちょっと意図がわからなかったですね……(笑)。

林部:ただ、そういうことがあったから、「一緒の日に出させていただけないでしょうか」っていう提案もできたと思うんです。で、『もういいかい』っていう小椋さんのアルバムタイトルに掛けさせてもらって『まあだだよ』にさせていただいたんです。まあ、もともとは、小椋さんの方が、黒沢明監督の『まあだだよ』を反対にして『もういいかい』ってしてるんですけど、それを、僕がまた反対にして『まあだだよ』にしてるんです。

ーー 話題作りのための老獪な戦略であり、小椋佳の親心だったのかもしれない。リリース後、林部智史のアルバム『まあだだよ』を聴いた小椋佳はどう思ったのだろう?

林部:聴いた感想は……、よく眠れるって言ってますね……、はい(笑)。「僕の眠り薬だ」って、最後に会ったときはおっしゃってましたね。4曲目ぐらいで寝るって言ってます(笑)。

ーー よく眠れるということは、心地よく聴けるということだ。何か気になったりしたら、眠れなくなってしまう。小椋佳らしい褒め言葉だ。

そうですね……。

ーー 一方、小椋佳のラストアルバム『もういいかい』の方は、まるで遺作と言っていいような重厚なアルバムだ。

林部:重厚ですね〜(笑)。『ラピスラズリの涙』は、僕は小椋さんが歌った歌を聴いてからレコーディングしましたけど、そのアレンジっていうところとかは全然違います……。今回、僕なりにこだわったところは、若いチームで作ったっていうことですかね。アレンジャーの方とか初めての方もいたんですけど、20代、30代で……、『まあだだよ』っていうタイトルも、そういうところからも表したかったなっていうところも含めてますね。それと、小椋さんのアルバムこそ、歌った時期がだいぶ違いましたけどね。だから、やっぱり通して聴いてると、全然、歌い方が違うので、そういう聴き方すると、僕の叙情歌よりも全然わかりやすいですよ。

ーー 林部智史のアルバム『まあだだよ』のボーナストラックとして収録されているオリジナル曲『まあだだよ』は、林部智史が自ら作詞・作曲している。「♪わたしにどんな希望を抱き わたしにどんな夢を見るのか 今全てはわからない」という歌詞は、小椋佳へのメッセージのようにも聞こえる。

林部:はい、ばい……、もちろんそうです。やっぱり、小椋さんのアルバム『もういいかい』のリード曲は『もういいかい』っていう楽曲で、僕の『まあだだよ』は『ラピスラズリの涙』なんですけど、その〜、やっぱり、アルバムタイトルを『まあだだよ』にさせてもらって、僕も歌い手として、作り手として、『まあだだよ』って楽曲がないっていうのは自分の中でちょっと……と思って……。もちろん、いただいた楽曲を受け止めて歌い、心を込めて歌っていくっていうことが、恩返しに繋がるとしても、作り手としても何か思いを伝えたかったんですね。だから、僕が思う、小椋さんに対する「まあだだよ……」っていうところと、ただ、そこだけじゃなくて、やっぱり皆さんも、「こういう想いもあるだろうな」っていうところも想像しながら書きましたね。

ーー ところで、そもそも、小椋佳からは、直接「僕の後継者として、歌い継いでいってくれよ」と言われているのだろうか?

林部:いえ、全然……。小椋さんは、一緒にインタビューとかさせてもらうと、どんどんそういうことをおっしゃってくださるんですけど、二人で話すときは、もちろんそういうこともなく……(笑)。

ーー インタビューで知る?

林部:そうです、そうです(笑)。でも、なんか……、そういうところが、僕は心地いいな〜って思いますね。

ーー たしかに、あらためて言われてしまうと重くなってしまうし、大きなプレッシャーになってしまうかもしれない。

林部:そうですね……、だから、男性ならではっていうか……。僕もそうなんですけど、普段、そんなに口数の多い方じゃないので、「インタビューで答えて初めて自分の気持ちを知る」とかってこともあるんですよ(笑)。小椋さんも、何かリップサービスも含めて、うん……そういうところあるのかなって。すごく人間味を感じたりします。

5 デビュー5周年……、そして、これから 〜「皆さんの故郷が見える声で良かったのかな…」〜

ーー デビューしてから 5年、「泣き歌の貴公子」と言われ、頻繁にテレビに出たりはしないが、コンサート・アーティストとして、優しく心に染みる歌声で人気だ。

林部:人気……?、そんなにないんじゃないですか……(笑)。なんにも人気ないですけど……、ただ……、叙情歌を歌っているのが、今は非常に楽しくって。なんかやっぱり、「個性勝負」だと思ってるんですよね。で、最近、出てきたアーティストっていうのも、わりと声が枯れてる人が多くて、Ado もそうですし、優里 とかもですかね。僕はすごくそういう声の方に憧れたりもするんですけど……、うん、自分にはないですから……。だけど、やっぱり叙情歌っていうのを歌ってると思うのは、僕の故郷しか見えない故郷だったら、歌う必要ないなって思うんですよね。だから、「皆さんの故郷が見える声で良かったのかな」っていうのは思っています。もちろん、今、自分の最大限の個性で歌う楽曲ってのもありながら、個性をなんとなく消して歌うっていう叙情歌みたいなのもあって……、それが逆に個性になるって思うんですよね。

ーー 「個性を消して」と言っても、同じ林部智史が歌うわけだから、個性が完全に消えるわけではない。

林部:うん、そうですね。でも、逆にしゃがれた声の人って、それができなかったりすると思うので、なんかこう自分なりの表現方法を見つけ出せてきたのかなっていうのは思いますね。

ーー やはり、林部智史は「伝える」ということを常に意識している。歌は聴く人に伝わらなければ意味がない。

林部:そうですね……。

ーー 叙情歌の『琴線歌』シリーズの「はやしべさとし」ではなく、林部智史として 2枚リリースされているオリジナルアルバムでは、自身が作詞・作曲をした曲も少なくない。曲作りはいつ頃から始めたのだろう?

林部:音楽学校の時に習ったのが最初ですね。ピアノで書いてます。まあ、習ったって言っても、「自由でいいんだよ」っていう習いでしたけど。

ーー そういう意味で、林部智史は、いわゆるシンガーソングライターである。でも、他の作詞家や作曲家が書いた曲も当たり前のように歌うし、カバーも歌う。シンガーソングライターの場合、基本的には自分が作った曲を歌うものだ。そういう意味で、林部智史は異色で、普通のシンガーソングライターとは、ちょっと立ち位置が違う。

林部:はい、はい、はい……。僕は……なんだろう……、シンガーソングライターって言われることってないというか、僕が一番ピンときてないんですけど……。いつも「歌手」「歌い手」っていうふうに言わせてもらってるんです。デビュー当時から、『あいたい』も歌詞を書いてますけど曲は違う方だったり……、でも、カップリング曲は僕が詞曲書いてたりとかしますしね……。あの〜、デビューの時に、まず方向性決めてなかったのは大きいですね(笑)。

林部:シンガーソングライターって、「基本的にあなたが作るんだよ」「自分が作りたいです」っていうのがあると思うんですよ。でも、僕は、自分で楽曲を全部作っていくっていう発想がなかったし、僕は、もともとはカラオケの畑から出てきてるんで、誰かの楽曲を歌うっていう面白さも知ってるつもりですし。誰かの歌しか歌えなかった時期があったから、オリジナルを作りたいっていう気持ちもあるし、時には歌詞は書くけども、自分で作れないメロディっていうのもあるんですよ。自分じゃ作れないわけですよ、自分のオリジナルと言えど。でも、そういう楽曲を自分のオリジナルにできるってのは、非常に楽しいなって思うんですよね、嬉しいですし。

ーー シンガーソングライターと名乗ってしまうと、全部、自分で書かなければならないような感じになるし、カバーを歌うことも特別なことになってしまう。自分でも曲を作るが、歌いたいけど自分では作れない曲というのもある。そのあたりも冷静に客観的に見ていて、自作の曲だけにこだわらず、まず「歌い手」として自由でいたいのだろう。

林部:そうそう。だから、僕は、やりたいことを全部やりたいな〜っていうふうに思っていて……、だから「歌い手」でいたいんですよね。

ーー 今後の目標を聞いてみた。

林部:そうですね〜、まずは、とくに今は流動的なんで……、目の前にあるコンサートが、この『時を紡いで』の歌詞じゃないですけど当たり前じゃないので、やっぱり一つ一つのコンサートに向けてコンディションを整えて、準備して、しっかりやっていくっていうことが今の目標って毎回言ってるんですけど、とくに、今、それをすごく感じていて……。

林部:で、長い目で見たときには、そうですね……、「ここで歌いたい」とか、「これに出たい」とかっていうのは最近は何も思ってないんです……、そこがゴールになっちゃうので。ただ、自分のジャンルは作りたいですね。林部智史っていうジャンルを作る……。

林部:たとえば、大先輩、大御所の誰かの名前を挙げれば、「あの人ってこういう歌を歌う人」「こういうこともやってるよね」っていうのって、もうイメージがつくじゃないですか。だから、そういうところで、林部智史っていうジャンルがすごく広くなればいいなと思ってますね。その叙情歌とか、J-POP とか、洋楽も歌うんだとか、カバーも歌うんだとか……。

ーー 林部智史という名前が出た時に、すぐに、どういう人で、どういう歌を歌う人かが自然とイメージされるということ。

林部:そうそう、そうです。

ーー 林部智史みたいな歌手が、他にはいないことを考えると、その「林部智史というジャンル」は、ほぼ確立しつつあるようにも思える。

林部:いや〜、まだまだ全然ですけど……。

ーー 「人は、心の傷の数だけ優しくなれる……」という言葉がある。中学浪人、バスケットボール選手への夢の挫折、うつ病とひきこもり、放浪の旅と最果ての地でのアルバイト、新聞奨学生と音楽専門学校での2年間、オーディションに落ち続けた日々……、そういった全てのことが、今の林部智史と、林部智史の優しい歌を作っている。そして、プロしてデビューしてからは、自分がやりたいことよりも、「自分の良さは何なのか?」「プロとして何を求められているのか?」を常に考え、それにこたえようとしている。
林部智史からは、「優しさ」と「極めて高いプロ意識」を感じる。

(取材日:2021年8月17日 / 取材・文:西山 寧)



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林部智史 シングル ディスコグラフィ


1st Single「あいたい」2016年2月24日(ニュー・バージョン MV)

2nd Single「晴れた日に、空を見上げて」2017年2月15日

3rd Single「だきしめたい」2017年6月28日

4th Single「恋衣」2018年6月20日

5th Single「希望」2019年8月21日

6th Single「ラピスラズリの涙」2021年5月26日