Prince プリンス
2016年4月21日に急逝した世界的なPOPアイコン“PRINCE”の評伝 『プリンス FOREVER IN MY LIFE』が、2022年6月30日に、東洋館出版社から発売された。
本書は、2020年10月にアメリカで刊行したプリンスの評伝『This Thing Called Life: Prince’s Odyssey, On and Off the Record』の待望の日本語訳。発売当初、アメリカで大変話題になり、Publisher’s Weekly 誌「2020年秋回顧録・伝記トップ10」にも選出された。
▶誰もが彼を天才と呼んだ。 孤高の天才、 プリンス―― そんな彼が唯一心を寄せたジャーナリストが語る、 真実の物語
音楽史における唯一無二の男、 プリンス――。 公式発表されたアルバムは43枚、 そのトータルセールスは1億5千万枚。 7度のグラミー賞受賞、 2004年にはロックの殿堂入りを果たすなど、 その功績は正に偉大。 一方で、 インタビューなどは少なく、 その人柄は謎のベールに包まれている。
というのも、 プリンス自身がその少ないインタビューにおいてでさえ真実を語ってきたとは言い難く、 彼に関する情報は、 断片的でまことしやかなものがあまりにも多いからだ。 彼ほど一貫性をもって語ることが難しいアーティストはいないだろう。 むしろ矛盾こそがプリンスと言える。 本書ではそんなプリンスの本質に迫るべく、 著者のニール・カーレン独自の記録以外にプリンスの両親、 バンドメンバーを始めとする関係者の証言、 既出の情報をまとめ上げ解釈を試みた一級品の伝記となっている。 彼についての書籍は多く刊行されているが、 ここまで繊細で多才なアーティストの側面を愛情深く、 丁寧な作業で捉えた書籍はない。
▶元ローリングストーン誌・ジャーナリスト、 ニール・カーレン氏とは
著者のニール・カーレンは、 プリンスと同じミネアポリス出身。 公式のインタビューがほとんど取れなかった80 年代に唯一プリンスが詳細なインタビューを許可し、 さらにロックオペラ「3 Chains o’Gold」を共作したジャーナリストである。 彼は、 プリンスのスタジオ兼住居のペイズリーパーク敷地内に埋めたとされるプリンスの遺言書を書いたことも本書によって明らかにしている。 ニールは 1990年代以降、 プリンスに関する一切の記事執筆をやめていたが、 プリンスが亡くなる 2 週間前にも電話で話すなどその親交は30年以上続いた。 プリンスが亡くなり様々な書籍が刊行される中、 あえて再び筆を執ったのは、 初めてプリンスにインタビューを行った後に彼から貰ったメッセージカードに記された「本当のことを書いてくれてありがとう! 神の恵みがありますように」が忘れられなかったからだという。 ニールとプリンスは育った地域が隣接していたことから、 10歳か11歳のニールをプリンスは見知っていたらしい。 嘘か誠か、 子どものニールはプリンスの仲間たちからキャスパー(映画『キャスパー』の主役で子供のおばけ)と呼ばれていたということをプリンス本人が打ち明けている。
▶本書について
プリンスはインタビューにおいて、録音、メモなどの記録を禁じた。 そこでニールがとった行動は、 正確な情報を記録するために、 頻繁にトイレに行きトイレットペーパーにメモをしたという。 本書執筆にあたってはニールがこのようにメモした大量のトイレットペーパーやインデックスカード、 録音したが記事にしなかった情報をもとに気の遠くなる作業を経て執筆された。 本書ではプリンス・ロジャー・ネルソンという個人がPOPアイコンとしてのプリンスを如何にして作り上げていったのか、 そしてPOPアイコンとしてのプリンスと個人としてのプリンスとどのように折り合いを付けていったのか、 愛憎入り交じった父親との関係、 レコード会社との軋轢、 マイテ・ガルシアとの結婚、 程なく生まれた子どもとの死別、 エホバの証人への入信など、 プリンスの核心とも言える部分を著者独自の視点で解釈している。
▶人間プリンスについて
本書では、 著者のニールは、 POPアイコンのプリンスについては勿論承知しつつも、 人間としてのプリンスを見ることが出来る関係だったようだ。
菜食主義者のように見えていたプリンスだが、 実はミネアポリスには行きつけのバーベキューレストランもあったようで、 そこでニールとプリンスは冗談めいたやりとりをしている。
また、 プリンスはテレビ放送のコメディードラマがたいそう好きだったようで、 死の3週間ほど前にもそのことで深夜にニールに電話をかけていた。 具体的には「コメディドラマ『ジ・オフィス』の再放送で、 ニールが聞いたら大笑いするような場面があったから」だったという。 プリンスにとっては深夜に電話をかけ、 取るに足らない話をする相手が必要だったのかもしれない。
プリンスの人物像については、 その多くが謎だが、 少なくとも本書から垣間見えるプリンスは、 どこまでも人間臭く、 愛くるしい。
▶プリンスとミネソタナイスについて
プリンスが生まれ生涯をおくったミネソタ州には「ミネソタナイス」という言葉がある。 これには「何事もなかったふり」をし続けるという意味がある。
1960年代の住民の99%が白人、 大部分が北欧諸国からの移住者で「自分が特別な存在だと思ってはならない」に代表されるヤンテの掟が根強く染みついた街。 圧倒的マイノリティーの中、 共同体を維持する掟「ミネソタナイス」が染みついた街で、 強い自尊心を維持しつづけ、 自らの才能を信じ、 プリンスは生涯にわたりプリンスのふりを続け、 それは世界を巻き込んだ。 一般的にはミネアポリスが生んだPOPスター、 プリンスというイメージがあるが、 死後はともかく、 生前のプリンスに対し世界的POPアイコンになった後も、 一部のファンを除きミネアポリス住民は消して寛容ではなかったようだ。
プリンスは矛盾に満ちた存在だ。 どんなに彼のことを理解している人間でも15%も知っている人はいないと言われている。 菜食主義者かと思えばバーベキューレストランで骨付き肉を食べている。 何日もスタジオに籠っていたかと思えば、 急にペイズリーパークの従業員一同と映画館を貸し切って映画『テッド』を見てゲラゲラ笑っている。 アルバムが完成したと思ったら、 思い立ってお蔵入りにする。 10年ぶりに電話が掛かってきたと思ったら、 まるで昨日話した続きのように話をする。 このような振る舞いは、 「ふり」をするということが染みついたミネソタ州で育ったプリンスならではのユーモアであり、 プリンスの幅広い音楽性の源泉なのかもしれない。
▶なぜ今プリンスなのか?
プリンスが亡くなる前年の 2015年のシングルカット曲『ボルティモア』。 これは米メリーランド州ボルティモアで警察に拘束された黒人青年が死亡した事件に警鐘を鳴らすものだった。 その後プリンスが亡くなってから 4 年後の 2020年にミネアポリスのペイズリーパーク近くで黒人男性ジョージ・フロイド氏が警察の拘束中に死亡する事件が起こった。
2021年に発売された『ウェルカム・2・アメリカ』。 このアルバムは 2010年に製作され永くお蔵入りになっていたものだ。 タイトル曲をはじめアメリカの分断に警鐘を鳴らすテーマのアルバムだ。 かつてプリンスの表現は時代の 10年先を行っていると言われたが、 くしくも 2010年に製作されたアルバムが、 今の世界情勢に合わせる形で満を持してリリースされた。 プリンスについてはデビュー以降様々な語られ方をしてきた。 皮肉にも亡くなって以降の分断された世界で、 今ほどプリンスが必要とされている時代はない。
2022年6月3日にはキャリア頂点時期の1985年3月30日にNY州シラキュースでの「パープルレインツアー」の模様を収録した『ライブ1985』のデジタルリマスター版の再発売があり、 話題になっている。 更に1986年に録音され発売中止になったアルバム『カミーユ』がジャック・ホワイトのレーベル、 サード・マン・レコードからリリースされるという。 数千曲あると言われているプリンスの未発表音源のリリースはしばらく続くと思われる。
プリンス & ザ・レヴォリューション『ライブ 1985』MUSIC GUIDE
書籍情報
プリンス FOREVER IN MY LIFE
著 者: ニール・カーレン(Neal Karlen):著 / 大石愛里:翻訳
判 型: 四六判
頁 数: 544ページ
発売日: 2022年6月30日
価 格: 3,190円(税10%)
発行元: 東洋館出版社
リリース情報
Prince & The Revolution ”Prince & The Revolution : LIVE”
プリンス&ザ・レヴォリューション 『ライブ 1985』
2枚組 CD(Blu-spec CD2)+ Blu-ray(116分) / 3枚組 LP
2022年 6月3日 発売
CD : SICP-31532~4 ¥6,000+税 (Blu-ray 付属)
LP : SIJP-119~121 ¥7,500+税
Legacy / Sony Music Japan International
< CD + Blu-ray 収録曲>
DISC-1
01 Let‘s Go Crazy (レッツ・ゴー・クレイジー)
02 Delirious (デリリアス)
03 1999 (1999)
04 Little Red Corvette (リトル・レッド・コルヴェット)
05 Take Me with U (テイク・ミー・ウィズ・ユー)
06 Yankee Doodle (ヤンキー・ドゥードゥル)
07 Do Me, Baby (ドゥ・ミー・ベイビー)
08 Irresistible Bitch (あきれた女)
09 Possessed (ポゼスド)
10 How Come U Don‘t Call Me Anymore (つめたい素振り)
11 Let‘s Pretend We’re Married (夜のプリテンダー)
12 International Lover (インターナショナル・ラヴァ―)
13 God (ゴッド)
14 Computer Blue (コンピューター・ブルー)
DISC-2
01 Darling Nikki (ダーリン・ニッキー)
02 The Beautiful Ones (ザ・ビューティフル・ワンズ)
03 When Doves Cry (ビートに抱かれて)
04 I Would Die 4 U (ダイ・フォー・ユー)
05 Baby I‘m a Star (ベイビー・アイム・ア・スター)
06 Purple Rain (パープル・レイン)
DISC-3 (Blu-ray)
※ CD と 同内容の映像 [116分 収録]
プリンス & ザ・レヴォリューション『ライブ 1985』MUSIC GUIDE
リリース情報
Prince “The Gold Experience”
プリンス 「ゴールド・エクスペリエンス」【輸入盤】
2枚組 LP(レコード・ストア・デイ 限定商品)/ CD / Digital
2022年6月18日発売
Legacy Recordings / Sony Music Japan International
※ CDは、Side D の5曲を除いた全18曲収録。
※ LPとCDのジャケットなどアートワークは異なります。
※ 国内盤の発売に関しては近日発表予定。
<収録内容>
Side A
1 P Control(プッシー・コントロール)
2 NPG Operator #1(NPGオペレーター#1)
3 Endorphinmachine(エンドルフィンマシン)
4 Shhh(SHHH)
5 We March(ウィ・マーチ)
Side B
1 NPG Operator #2(NPGオペレーター#2)
2 The Most Beautiful Girl In The World(ザ・モスト・ビューティフル・ガール・イン・ザ・ワールド)
3 Dolphin(ドルフィン)
4 NPG Operator #3(NPGオペレーター#3)
5 Now(NOW)
6 NPG Operator #4(NPGオペレーター#4)
7 319(319)
Side C
1 NPG Operator #5(NPGオペレーター#5)
2 Shy(SHY)
3 Billy Jack Bitch(ビリー・ジャック・ビッチ)
4 Eye Hate U(アイ・ヘイト・ユー)
5 NPG Operator #6(NPGオペレーター#6)
6 Gold(ゴールド)
Side D
1 Eye Hate U (Extended Remix)
2 Eye Hate U (Album Version)
3 Eye Hate U (Quiet Night Mix)
4 Eye Hate U (Single Version with Guitar Solo)
5 Eye Hate U (Single Version without Guitar Solo)
※ 本作リリース当時、アーティスト名はシンボルマークで表現され、通称「ジ・アーティスト・フォーマリー・ノウン・アズ・プリンス」と呼ばれていましたが、今回のリリースでは「プリンス」と表記されています。
プリンス「サイン・オブ・ザ・タイムズ:スーパー・デラックス・エディション」MUSIC GUIDE
プリンス プロフィール
本名:プリンス・ロジャー・ネルソン。1958年6月7日、US・ミネソタ州ミネアポリス生まれ。
2016年4月21日に57歳の若さで急逝した後も、全世界のアーティストや音楽ファンに多大な影響を与え続けている唯一無二の存在。グラミー賞7部門受賞、12作品のプラチナ・アルバム(100万枚以上のセールス)と30曲のトップ40シングルを生み、アルバム累計1億2千枚以上のセールスを記録するスーパー・アーティスト。
1978年のデビュー以来、ポピュラーミュージック・シーンに常に革新をもたらし、80年代、白人アーティストのビデオしか放送しなかった保守的なMTVで、マイケル・ジャクソンとこのプリンスだけがプロモーション・ビデオの放送が許されるなどロック・フィールドでも席捲した。全ての楽器をこなすマルチ・プレイヤーであり、セルフ・プロデュースもする非凡な才能、イメージ戦略を打ち出すような野心、見事成功を自らの勝ち取った前代未聞の存在だ。
ソニー・ミュージックエンタテインメント傘下のレガシー・レコーディングスとプリンス財団の独占契約を機に、2018年8月、1995年以降の入手困難なアルバム23タイトルほか、同時期の軌跡を辿った傑作集『アンソロジー1995-2010』がデジタル配信解禁された。また11月からは秘蔵映像含むミュージック・ビデオの映像解禁が行われ、12月には2019年より現在廃盤となっているCDの再発ほか初のアナログ・レコードの発売を含む“フィジカル解禁”を発表。カタログ再発プロジェクトは〈LOVE 4EVER〉と命名され、これまで簡単に手にすることができなかった貴重な作品群が遂に復活。その非凡な才能と多くのマスターピースが時空を超えて未来へと受け継がれていく。2021年夏、レコーディングから11年、死去から5年の年月を経てついに幻の新作『ウェルカム・2・アメリカ』が発売された。