Steve Vai スティーヴ・ヴァイ
「ギター・イリュージョン」と呼ぶにふさわしいその革新的で変幻自在のプレイスキルと独創性溢れるソングライティングで、40年近くにわたり「奇才ギタリストNo.1」の地位を独占してきたロック・ギタリストの最高峰スティーヴ・ヴァイ。
スタジオ作品としては 6年ぶり、純粋な書き下ろし作品としては実に 10年ぶりとなるオルジナル・アルバム『インヴァイオレット』(Inviolate) が、今月、発売される。
日本盤CDのみ海外に先駆けて 1月26日(水)に、デジタル・アルバムは海外発売日である28日に配信される。アナログLPは 3月18日にリリースされる予定。
新作アルバムの収録曲から、すでに、「リトル・プリティ」のミュージックビデオが公開となっているが、1月13日には、直近リード・シングルとなる「ゼウス・イン・チェインズ」が配信され、YouTube では、ビジュアライザーも公開された。
80年代初頭にフランク・ザッパ・バンドに加入して以来、アルカトラス、デイヴィッド・リー・ロス・バンド、ホワイトスネイクといったスーパー・バンドのギタリストとして活躍し、90年代に入りソロ活動に専念してからは、グラミー賞3度の受賞に加え9度もノミネートされるなど、ギタリストとして破格の成功を収めてきたスティーヴ・ヴァイ。
2012年のアルバム『ザ・ストーリー・オブ・ライト』発表以降は、多くの時間をツアーに費やしており、日本へは13年と14年に単独ツアー、17年と19年はヴァイが主宰するスーパー・ギタリスト5人によるライヴ・イヴェント“ジェネレーション・アックス”と計4度の来日公演を行なってきた。
2016年には、ヴァイの代表作である1991年のセカンド・アルバム『パッション・アンド・ウォーフェア』25周年記念盤に同梱される形で、未発表楽曲で構成されたスタジオ・アルバム『モダン・プリミティヴ』を発表しており、それもオリジナル・アルバムの1枚に数えられてはいるものの、1984年のファースト・ソロ・アルバム『フレクサブル』と『パッション〜』の間に作曲したものや温存していたアイディアを仕上げたものであることから、“書き下ろし楽曲による新作”というものではなく、そのためのツアーも行なわれなかった。
満を持して発表される本作『インヴァイオレット』(“神聖な”の意)は、ヴァイがこの作品を引っ提げてツアーを行なう前提で制作されたものだという。
ヴァイは、新作について以下のように語る。
「とても“ヴァイ的”だよね。それが何を意味するのであれ。俺よりそれを巧く説明できるやつがいるかもしれないな。とにかく、とても正直な音楽だよ。俺の作品は長いものが多いし、コンセプトがたくさんあったり、ストーリーを軸に遊んだりしている。今回はそういう要素が一切ない。今回は、俺がみんなの前で演奏できるように形にして録音したいと思ったかなり濃いインストゥルメンタル曲だけが9曲入っているんだ。」
ヴァイにとって『インヴァイオレット』の構想の中心にあったのは、これらの楽曲をステージで披露したいという意欲だった。
実は、コロナ・パンデミックの初期には、ヴォーカル入りのソロ・アコースティック曲を中心に構成された、まったく異なるアルバムのレコーディングが佳境に入っていたという。
そんな中で、ヴァイは右肩の腱を3本断裂し手術が必要になったのに加え、左親指のばね指発作が最終的には指全体をこわばらせてしまい、楽器の演奏が非常に難しくなってしまったため、その作業を完全にストップすることになる。
そして、晴れて快復のプロセスを乗り切った頃、彼は足下に迫っていた200日以上ものツアー日程をやや興奮気味に見つめていた。
かくしてアコースティック・アルバムは棚上げになり、ステージをより意識して創り上げた『インヴァイオレット』が生まれたのだった。今年の春に配信され本作にも収録される「ナップサック」は、その肩の手術後に(執刀医のドクター・ナップ氏が“ナップサック”と呼んでいた)三角巾で右腕を吊っていた頃、つまり曲を弾くときに左手しか使えなかった頃に作曲とレコーディングを行なっており、この楽曲を左手一本で弾く様子はヴァイの公式動画サイトで見ることができる。
また、昨年、配信された「キャンドルパワー」では、「ジョイント・シフティング」とヴァイが呼ぶ、まったく新しいギター・テクニックを開発している。
そのコンセプトは、同時に複数の弦を反対方向にベンドすることで、「ベンドする指の第1関節だけを他の指から独立した形で使う」という。複数の弦をベンディングすること自体は新しいコンセプトではないものの、ヴァイ曰く「俺が思い描いたようなやり方はかつて見たことがない」とのことで、この実演も同じく公式動画サイトで披露されている。
新作アルバムでは、ザッパ卒業生仲間のテリー・ボジオによる新録のドラム・トラックが採用されている(他のアルバム収録曲には、ビリー・シーン、ブライアン・ベラ—、フィリップ・バイノー、ヘンリック・リンダーのベーシスト陣、キーボーディストのデイヴィッド・ローゼンタール、ドラマーにはヴィニー・カリウタとヴァイのツアー・メンバーでもあるジェレミー・コルソンといったヴァイが信頼する凄腕プレイヤーたちが多数参加)。
そんな驚くべきテクニックを注ぎ込んだヴァイだが、アルバムのアートワークに目を移せば、強烈なインパクトとオーラを放つ異様なシェイプのギターがひと際目を引く。
これはヴァイが「ハイドラ」と名付けた唯一無二のカスタム・ギターで、実際にアルバム冒頭を飾る「ティース・オブ・ハイドラ」で使用されている。星野楽器のデザイナーと共同開発したこのギターは、ヴァイの「スチームパンク・モチーフ」の概念をベースとした、野獣のように強力な楽器に仕上がっている。
1つのボディにヘッドストックが2つ、ネックが3つついたこの“生き物”は、7弦ギター、12弦ギター、4弦ベース、ハープ用の共鳴弦、ハーフ・フレットレスのネック、シングルコイル、ハンバッカー、ピエゾとサスティナーのピックアップ、フローティングとハードテイルのトレモロ・ブリッジ、フェーズ・スプリッター、その他数多くの特徴を擁しているという。
「驚くべき構造のマシンだよ。ホシノの人たちには“慣習的だと思うものは一切やらないでくれ”と言ったんだ。ブルータルなクリエイティヴィティを発揮する機会だったからね。そうしたら彼らはそれを超越してくれたんだ。」
「ギターの素晴らしい点のひとつは、クリエイティヴなヴィジョンを表現するのに達人である必要がないってことなんだ。ほら、ボブ・ディランは彼の表現に理想的なギターの弾き方をするだろう。ジョン・マクラフリンもそうだ。その境地に達するにはどのくらいのテクニックが欲しいか、または必要かを見極める必要があるだけさ。俺自身はすべてが欲しい、すべてが必要だと考えるようになった。だから自分の音楽については何かを証明したり何かに合わせたりする必要があると思わない。ただクリエイティヴなものを考えて、それを実現するために必要なスキルを何であれ駆使するのが大好きなんだ。」
それは彼が本作でまたもややってのけたことである。
ヴァイは最後にこう締めくくる。
「神聖な(インヴァイオレット)インスピレーションというのは、完全にピュアな形で思い浮かぶものなんだ。それはほとんど完全な形で登場して、自分にとって正しい、完璧に正しいものだという認識があるんだ。それには一切エクスキューズもなければファンタジーもない。“イエス”という認識があるだけだ。そして独自のクリエイティヴィティにとって正統派である形でそれを捉える。願わくは、俺がこのアルバムでやったことがまさにそれだといいね。」
先行配信リリース情報
Steve Vai ”Zeus In Chains”
スティーヴ・ヴァイ 「ゼウス・イン・チェインズ」
Digital
2022年1月13日配信
Sony Music Japan International
リリース情報
Steve Vai ”Inviolate”
スティーヴ・ヴァイ「インヴァイオレット」
アルバム CD(Blu-spec CD2) / Digital
2022年1月26日(水)日本先行発売(海外:2022年1月28日)
SICX 30133
¥2,750(税込)
Sony Music Japan International
<収録曲>
01 Teeth of the Hydra / ティース・オブ・ザ・ハイドラ
02 Zeus in Chains / ゼウス・イン・チェインズ
03 Little Pretty / リトル・プリティ
04 Candlepower / キャンドルパワー
05 Apollo In Color / アポロ・イン・カラー
06 Avalancha / アヴァランチャ
07 Greenish Blues / グリーニッシュ・ブルーズ
08 Knappsack / ナップサック
09 Sandman Cloud Mist / サンドマン・クラウド・ミスト
10 Swamp Fairies / スワンプ・フェアリーズ (日本盤限定ボーナス・トラック)