ウィーン・フィルハーモニー 管弦楽団
コロナ禍の中で今年も来日公演を実現させ、日本の音楽ファンに熱いメッセージを届けたウィーン・フィル。
彼らのコンサートの中でも最も有名なのが、毎年1月1日に行なわれるニューイヤー・コンサート。元旦に黄金の「ムジークフェラインザール」から、TVとラジオを通じて世界90カ国以上に放送され、5千万人が視聴するというこのクラシック音楽界最大のイベントは、1939年に始まる80年以上の歴史を誇る。
音楽の都ウィーンを象徴するシュトラウス一家のワルツやポルカが演奏され、その高額のチケットは世界一入手困難。そのため、ニューイヤー・コンサートを聴くことは音楽ファンの憧れでもある。
2022年の指揮者は、現在ベルリン国立歌劇場音楽総監督をつとめるダニエル・バレンボイム。
アルゼンチン出身のバレンボイムがウィーン・フィルと初共演したのは1965年8月のザルツブルク音楽祭でのことで、ピアニストとしてモーツァルトのピアノ協奏曲第24番を演奏している。
それ以来、200回近い共演を重ね、今ウィーン・フィルと最も密接な関係にあるバレンボイムは、昨年コロナ禍で演奏休止を余儀なくなくされた同フィルが、演奏再開後最初に迎えた指揮者でもある。ニューイヤー・コンサートには2014年以来、8年ぶり・3度目の登場となるが、これは来年80歳をむかえる巨匠へのウィーン・フィルからのプレゼントともいえよう。
2022年は、演奏会冒頭に「フェニックス行進曲」、ワルツ「フェニックスの羽ばたき」と、不死鳥(フェニックス)の名を冠した曲が2曲並んでいて、「コロナに屈しない」というウィーン・フィルの決意表明であるかのよう。今年生誕195年となるヨーゼフ・シュトラウスのポルカ・マズルカ「海の精セイレーン」など、ニューイヤー初登場曲は6曲。「こうもり」序曲、「天体の音楽」などの有名曲も並び、「ペルシャ行進曲」や「千一夜物語」、「プラハへご挨拶」といった、名前からエキゾチシズムを喚起させる作品も取り上げられるなど、華やかなコンサートが目に浮かぶようだ。もちろん定番のアンコールや新年の挨拶も予定されている。
元旦の演奏会でのライヴ収録直後に音声の編集が行われすぐさま発売・配信されるのがニューイヤー・コンサートの通例で、2022年は1月7日に全世界でデジタル配信が開始される。
ヨーロッパのCDショップの店頭に並ぶのは1月14日。国内盤での発売はCDが1月26日、ブルーレイが2月16日の予定。CDの音声はフリーデマン・エンゲルブレト率いるベルリンのテルデックス・スタジオ、ブルーレイの収録はオーストリア放送協会(ORF)が担う。
毎年の収録を通じてホールの特性を知り尽くした両者が生み出す鮮明な音声と映像は、たくさんの花で美しく彩られた黄金のホールで繰り広げられる音楽の饗宴を生々しく楽しむ贅沢を与えてくれるだろう。ブルーレイには、海外ではTV生中継の休憩時間に放映されるウィーン・フィルのメンバーによる室内楽でつづった映像作品のほか、恒例のウィーン国立バレエ団によるバレエ・シーン付きの特典映像が収録される予定。
尚、2021年は無観客公演となったニューイヤー・コンサートだが、2022年の公演が無観客で開催されるかどうかは現時点では未定。ウィーンでは、オーストリア政府によるロックダウンのため12月12日までは公演が行われていない。
リリース情報
Vienna Philharmonic Daniel Barenboim ”New Year’s Concert 2022″
ダニエル・バレンボイム (指揮) ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
「ニューイヤー・コンサート 2022」
(2022年1月1日、ウィーン、ムジークフェラインザールにて ライブ収録予定)
アルバム CD(2枚組) / Blu-ray / Digital
SONY CLASSICAL / Sony Music Japan International
Digital: 2022年1月07日 配信(通常配信・24ビット 96kHz ハイレゾ配信・ストリーミング)
2 CD : 2022年1月26日 発売予定 SICC-2236〜7 3,190円(税込)
Blu-ray: 2022年2月16日 発売予定 SIXC-59 6,270円(税込)
収録予定曲
<第1部>
01 フェニックス行進曲 作品105★ (ヨーゼフ・シュトラウス)
02 ワルツ「フェニックスの羽ばたき」 作品125 (ヨハン・シュトラウス2世)
03 ポルカ・マズルカ「海の精セイレーン」 作品248★ (ヨーゼフ・シュトラウス)
04 ギャロップ「小さな広告」 作品4 (ヨーゼフ・ヘルメスベルガー)
05 ワルツ「朝刊」 作品279 (ヨハン・シュトラウス2世)
06 ポルカ・シュネル「ちょっとした記録」 作品128★ (エドゥアルト・シュトラウス)
<第2部>
07 オペレッタ「こうもり」 序曲 (ヨハン・シュトラウス2世)
08 音楽の冗談「シャンパン・ポルカ」 作品211 (ヨハン・シュトラウス2世)
09 ワルツ「夜遊び」 作品466★ (カール・ミヒャエル・ツィーラー)
10 ペルシャ行進曲 作品289 (ヨハン・シュトラウス2世)
11 ワルツ「千一夜物語」 作品346 (ヨハン・シュトラウス2世)
12 ポルカ・フランセーズ「プラハへご挨拶」 作品144 (エドゥアルト・シュトラウス)
13 性格的小品「家の精霊」★ (ヨーゼフ・ヘルメスベルガー)
14 ポルカ・フランセーズ「ニンフのポルカ」 作品50★ (ヨーゼフ・シュトラウス)
15 ワルツ「天体の音楽」 作品235 (ヨーゼフ・シュトラウス)
他、アンコール曲を収録予定。
*日本ヨハン・シュトラウス協会刊の『ヨハン・シュトラウス2世作品目録』(2006)、『ヨーゼフ・シュトラウス作品目録』(2019)に従っています。
★ニューイヤー・コンサート初演奏の作品
ウィーン・フィル ニューイヤーコンサート 公式サイト(日本語)
ウィーン・フィル『ニューイヤー・コンサート2021』MUSIC GUIDE