ちあきなおみ
人肌恋しいコロナ禍の秋 今こそちあきなおみの息遣いに浸りたい
ちあきなおみが自らの意志で表舞台を去ったのは平成4年(1992年)のこと。以後、活動期間(1969~92年)を超える歳月が流れ、時代は令和へと移った。リアルタイムで活躍を知るのはアラフォー以上ということになろうが、その存在感は薄れるどころか、むしろ時が経つほどに高まっている。実際、折に触れてリリースされる作品集はいずれもヒット。過去の映像を使用した音楽番組や特集番組も繰り返し放送されている。つまりそれだけ彼女の歌が求められているということだ。
その伝説的歌手の名前を、この秋は目にする機会が多い。まずは氷川きよしや宮本浩次など、人気と実力を兼ね備えた後輩歌手たちによる、ちあき作品のカバー。氷川は「かもめの街」(88年)を、宮本は「喝采」(72年)を最新アルバムに収録することを発表しているが、当代屈指のボーカリストがちあきの代表曲をどう歌うかが注目されている。
そして10月9日には、BS-TBSが2時間特番『魂の歌!ちあきなおみ 秘蔵映像と不滅の輝き』をゴールデンタイムに放送。SNSには「表現力に感動した!」「本当に凄い歌手。聴き入ってしまった」「昭和に生まれたかった」といった投稿が相次いだ。放送終了後は通販サイトで過去のCD作品が軒並み上位にランキングされていることからも、彼女の歌が多くの視聴者の心を掴んだことが窺える。
日ごとに涼しくなり、人のぬくもりが恋しくなるこの季節。情感に溢れ、心のひだに寄り添うちあきの歌は秋の夜長にはなおさら沁みる。その真髄は耳元で呟くように、囁くように、息遣いまで感じさせる繊細なボーカルにある。時に激しく、時に穏やかに喜怒哀楽を表現する緩急自在の歌声も彼女ならではの魅力だ。
現在発売中のコンセプトアルバム『微吟』と『ほのぼのと、切なさと、懐かしさと、ちあきなおみの“黄昏のビギン”はあなたの恋する勇気をサポートします。』は、そんなちあきの歌唱力を味わうには最適の2枚。いずれもキャリアを代表するオリジナル曲はもちろん、洋邦のカバー曲やライブ音源がバランスよく配され、ジャンルを超えた唯一無二の“ちあきワールド”を堪能できる構成となっている。
時ならぬ感染症が世界的に拡大した2020年。国内でも“新しい日常”として、マスクの着用やソーシャルディスタンスを余儀なくされるなど、リアルな交流が制限された状況が続いている。そんなときだからこそ、ぬくもりや息遣いを感じさせるちあきの歌声が人々に癒しや潤いを与えてくれるに違いない。
(濱口英樹)
ちあきなおみ コンセプトアルバム
ちあきなおみ「微吟」(びぎん)
2019年4月17日(水)発売
TECE-3529
¥2800円+税
テイチクエンタテインメント
<収録曲>
1、 星影の小径 *ビクター音源
2、 イマージュ
3、 冬隣
4、 雨に濡れた慕情 *コロムビア音源
5、 四つのお願い *コロムビア音源
6、 紅とんぼ
7、 矢切の渡し
8、 すり切れたレコード/LE DISQUE USE *ビクター音源
9、 朝日のあたる家(朝日楼)/House of the Rising Sun *ライブ音源
10、ねえあんた
11、夜へ急ぐ人
12、祭りの花を買いに行く
13、かもめの街
14、嘘は罪
15、黄昏のビギン
16、喝采 *コロムビア音源
17、紅い花
18、そ・れ・じゃ・ネ
ちあきなおみ ベストアルバム
ちあきなおみ
「ほのぼのと、切なさと、懐かしさと、ちあきなおみの”黄昏のビギン”はあなたの恋する勇気をサポートします。」
2013年10月23日 発売
TECE-3209
¥2800円+税
テイチクエンタテインメント
<収録曲>
1、黄昏のビギン
2、かもめの街
3、夜間飛行 *コロムビア音源
4、夜霧よ今夜も有難う
5、秘恋 *ビクター音源
6、涙の酒
7、玄海ブルース
8、酒場川 *コロムビア音源
9、港が見える丘 *ライブ音源
10、朝日のあたる家(朝日楼)*ライブ音源
11、喝采<’89年バージョン>
12、百花繚乱
13、新宿情話 *コロムビア音源
14、紅とんぼ
15、スタコイ東京
16、冬隣
17、伝わりますか
18、紅い花