伊勢正三、ロング・インタビュー! キャリア50周年記念! かぐや姫〜風〜ソロまで収録された 2アイテムが 2社から 同時発売! 初期、PANAM レーベル時代の 2枚組 最新リマスター・ベストに、全60曲中 54曲が未発表の 4枚組 オールタイム・ライブベスト!「それを一番求めてるんだと思って…」「『なごり雪』は僕から旅立った”…という気持ち…」 -MUSIC GUIDE ミュージックガイド

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伊勢正三、ロング・インタビュー! キャリア50周年記念! かぐや姫〜風〜ソロまで収録された 2アイテムが 2社から 同時発売! 初期、PANAM レーベル時代の 2枚組 最新リマスター・ベストに、全60曲中 54曲が未発表の 4枚組 オールタイム・ライブベスト!「それを一番求めてるんだと思って…」「『なごり雪』は僕から旅立った”…という気持ち…」

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Ise Shozo

伊勢 正三

Remastered Best Album(2CD)

『 伊勢正三の世界 〜PANAMレーベルの時代〜 』

All-Time Live Best Album(4CD)

『 THE 伊勢正三 』


★ 1971年「かぐや姫」としてデビューし、解散後は「風」、ソロと、キャリア50周年!
★ かぐや姫〜風〜ソロまで収録された 50周年記念の 2作品が 2社から 同時発売!
★ クラウンから、キャリア初期 PANAM レーベル時代の最新リマスター・ベスト!
★ フォーライフからは、全60曲中 54曲が未発表のオールタイム・ライブベスト!
★ 伊勢正三の音へのこだわり、真髄が詰まった、2つのアニバーサリー作品!


シンガーソングライター 伊勢正三のキャリア50周年を記念して、9月22日に、かぐや姫 〜 風 〜 ソロと、クラウン「PANAM」(パナム)レーベル在籍時代の最新リマスター・ベストアルバム『伊勢正三の世界〜PANAMレーベルの時代〜』(2枚組)が、日本クラウンからリリースされた。

また、現在までのプレミア・ライブ・テイクを凝縮、多数の未発表音源を収録した オールタイム・ライブ・ベスト『THE 伊勢正三』(4枚組)が、フォーライフ・ミュージックから同時リリースされた。

さらに、同じく 9月22日より、「風」の全作品が、サブリクションで音楽配信されている。
 
伊勢正三は、1971年9月25日、第二期「かぐや姫」のメンバーとしてシングル「青春」でデビュー。かぐや姫としてアルバム 6枚を残す。アルバム 4作目「三階建の詩」で、初めて作詞・作曲をした「なごり雪」と「22才の別れ」が、その後、イルカの「なごり雪」、風の「22才の別れ」として大ヒットを記録。

「かぐや姫」解散後の 1975年からは、「風」としてアルバム 5枚をリリース。

1980年からソロとして活動し、現在も積極的に活動を続け、音楽作品のみならずギタリストとしても多くのファンを獲得している。




風 配信リリース情報

2021年 9月22日 配信
PANAM / NIPPON CROWN
 
風「ファースト・アルバム」(1975年6月5日発売)
風「時は流れて…」(1976年1月25日発売)
風「windress blue」(1976年11月25日発売)
風「海風」(1977年10月25日発売)
風「Moony Night」(1978年10月5日発売)
 
風「OLD CALENDAR〜古暦〜」(1979年4月25日発売) *ベスト盤
風「KAZE SINGLE COLLECTION」(2007年7月4日発売)*シングル集
 
伊勢正三「北斗七星」(1980年4月25日発売) *ソロアルバム


風 各配信サイト



CD リリース 情報


伊勢正三 『伊勢正三の世界 〜PANAMレーベルの時代〜』
アルバム CD (2枚組)/ Digital
2021年9月22日発売
CRCP-20579/80
¥3,500
PANAM / NIPPON CROWN
 
<伊勢正三 50th Anniversary 記念作品>
伊勢正三が1971年から1980年クラウンレコードに在籍していた初期、伊勢正三の世界。全曲オリジナルマスターを使用した、 2021年最新リマスター盤。
 
<収録曲>
 
Disc 1
01 なごり雪 (かぐや姫)
02 22才の別れ (かぐや姫)
03 アビーロードの街 (かぐや姫)
04 ペテン師 (かぐや姫)
05 置手紙 (かぐや姫)
06 夏この頃 (かぐや姫)
07 湘南 夏 (かぐや姫)
08 わかれ道 (かぐや姫)
09 遠い街 (かぐや姫)
10 きらいなはずだった冬に (かぐや姫)
11 星空 (風)
12 北国列車 (風)
13 海岸通 (風)
14 お前だけが (風)
15 あいつ (風)
16 何かいいことありそうな明日 (風)
17 でい どりーむ (風)
18 はずれくじ (風)
19 忘れゆく歴史 (風)
20 男は明日はくためだけの靴を磨く (風)
21 時の流れ (風)
22 あの唄はもう唄わないのですか (風 Single ver.)
 
Disc 2
01 ささやかなこの人生 (風)
02 22才の別れ (風)
03 夜汽車は南へ (風)
04 ほおづえをつく女 (風)
05 Bye Bye (風)
06 海風 (風)
07 月が射す夜 (風)
08 少しだけの荷物 (風)
09 曙 (風)
10 アフタヌーン通り25 (風)
11 地平線の見える街 (風)
12 雨の物語 (風)
13 3号線を左に折れ (風)
14 そんな暮らしの中で (風)
15 通り雨 (風)
16 冬京 (風)
17 想い出がつきない夜 (伊勢正三)
18 君と歩いた青春 (風)


伊勢正三 日本クラウン

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伊勢正三 『THE 伊勢正三』
アルバム CD (4枚組)
2021年9月22日発売
FLCF-4523
¥5,500
FOR LIFE MUSIC ENTERTAINMENT
 
<伊勢正三 50th Anniversary 記念作品>
かぐや姫〜風〜ソロ、現在までのプレミアムなライブテイクを凝縮したオールタイムライブベスト。ライブヒストリー盤。
 
<収録曲>
 
DISC 1(セピア)
01 あの唄はもう唄わないのですか(2009津久見市民会館 未発表)
02 22才の別れ(風 1975コンサートインつま恋 初CD化)
03 置手紙~僕の胸でおやすみ(1982千葉文化会館 未発表)
04 今はちがう季節(かぐや姫 1975コンサートインつま恋 未発表)
05 アビーロードの街(かぐや姫 1975コンサートインつま恋 未発表)
06 ペテン師(かぐや姫 1975コンサートインつま恋 未発表)
07 きらいなはずだった冬に(かぐや姫 1978かぐや姫today日本武道館 未発表)
08 湘南 夏(かぐや姫 1978かぐや姫today日本武道館 未発表)
09 わかれ道(かぐや姫 1978かぐや姫today日本武道館 NEW MIX)
10 海岸通(風 1975コンサートインつま恋 未発表)
11 はずれくじ(風 1975コンサートインつま恋 未発表)
12 星空(2007品川ステラボール 未発表)
13 暦の上では(1980日本武道館 未発表)
14 あいつ(風 1977風リサイタル渋谷公会堂 NEW MIX)
15 少しだけの荷物(1994渋谷公会堂 未発表)
16 冬京(1980日本武道館 未発表)
17 君と歩いた青春(風 1977BIG CONCERT海風in武道館 NEW MIX)
18 なごり雪(かぐや姫 1978かぐや姫today日本武道館 NEW MIX)
 
DISC 2(コバルトブルー)
01 ほんの短い夏(1993大阪IMPホール 未発表)
02 青い10号線(2007尾白の森・名水公園 未発表)
03 海辺のジャパニーズレストラン(2009津久見市民会館 未発表)
04 渚ゆく(2009津久見市民会館 未発表)
05 moonlight(1982千葉文化会館 未発表)
06 NEVER(1993渋谷公会堂 未発表)
07 時の化石(1993渋谷公会堂 未発表)
08 有り得ない偶然(1993大阪IMPホール 未発表)
09 さよならの到着便(1994渋谷公会堂 未発表)
10 キッチン(1994渋谷公会堂 未発表)
11 堤防のある町(1996日清パワーステーション 未発表)
12 青い夏(2009津久見市民会館 未発表)
13 Blue Blue Hawaii(1980日本武道館 未発表)
14スモークドガラス越しの景色(1982千葉文化会館 未発表)
 
DISC 3(レッド)
01 ほおづえをつく女(1983サマーピクニック 未発表)
02 Tonight Tonight(1983サマーピクニック 未発表)
03 Cape 117(1983サマーピクニック 未発表)
04 リアス式の恋(1983サマーピクニック 未発表)
05 9月の島(1983サマーピクニック 未発表)
06 B級映画のように(1994渋谷公会堂 未発表)
07 このままずっと(1993渋谷公会堂 未発表)
08 湘南 夏(1994渋谷公会堂 未発表)
09 メガロポリスの錯覚(1994渋谷公会堂 未発表)
10 レミングの街(1993渋谷公会堂 初CD化)
11 二人の周期(1982千葉文化会館 未発表)
12 Heart break Moon(1982千葉文化会館 未発表)
13 That’s where love begins(1982千葉文化会館 未発表)
14 地平線の見える町(1996日清パワーステーション 未発表)
 
DISC 4(ゴールド)
01 海風(1980日本武道館 未発表)
02 汐風(1982千葉文化会館 未発表)
03 雨の物語(1996日清パワーステーション 未発表)
04 冬の地下鉄(1996日清パワーステーション 未発表)
05 新しい静けさ(1993渋谷公会堂 未発表)
06 Sea Side Story~3号線を左に折れ~海岸通(1982千葉文化会館 未発表)
07 夜のFM(1982北海道厚生年金会館 未発表)
08 闇の夜のハネムーン(2008赤坂BLITZ 未発表)
09 涙憶(1993渋谷公会堂 初CD化)
10 月が射す夜(1980日本武道館 未発表)
11 ささやかなこの人生(1980日本武道館 NEW MIX)
12 お前だけが(風 1977BIG CONCERT海風in武道館 NEW MIX)
13 そんな暮らしの中で(1982千葉文化会館 未発表)
14 なごり雪(風 1977BIG CONCERT海風in武道館 未発表)


伊勢正三 フォーライフ

伊勢正三 本人による ライナーノーツ

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コンサート情報

伊勢正三 70th Birthday Anniversary Live 2021
2021年 11月13日 (土) 東京・かつしかシンフォニーヒルズ モーツァルトホール

伊勢正三 LIVE 2021
2021年 12月4日 (土) 東京・ルネこだいら 大ホール

伊勢正三 LIVE 2022 (再々延期公演)
2022年 7月23日(土)福岡・福岡国際会議場 メインホール


伊勢正三 オフィシャルサイト


伊勢正三 YouTube


かぐや姫 歌詞一覧

風 歌詞一覧

伊勢正三 歌詞一覧




伊勢正三 スペシャル インタビュー


 1971年9月25日、第2期「かぐや姫」のメンバーとしてシングル『青春』でデビューした伊勢正三。1975年、「かぐや姫」解散後は、大久保一久とのデュオ「風」として、そして、1980年以降は、ソロとして活躍を続けてきた シンガーソングライターでギタリストの「正やん」こと 伊勢正三 が、今年、2021年、キャリア50周年を迎えた。
 
 これを記念し、2021年9月22日に、レーベルの垣根を越え、「フォーライフミュージック」と「日本クラウン PANAM レーベル」との合同プロジェクト「伊勢正三50th Anniversary × フォーライフミュージック × 日本クラウン PANAM」として、アニバーサリーな作品が 2社からそれぞれリリースされた。
 
 日本クラウン「PANAM」レーベルからは、1971年〜1980年、「かぐや姫」〜「風」〜ソロと、クラウンレコードに在籍していたキャリア初期のスタジオ録音ベスト作品集として、全曲、当時のオリジナルマスター音源に最新リマスタリングを施した『伊勢正三の世界 〜PANAM レーベルの時代〜』が 2枚組でリリース。
 
 「かぐや姫」時代の『なごり雪』や『22才の別れ』、『ペテン師』や『置手紙』(この 2曲は、スタジオ録音された音源はなく、ライブ音源しか存在しない)、「風」の『22才の別れ』『海岸通』『雨の物語』『君と歩いた青春』『ささやかなこの人生』『あの唄はもう唄わないのですか』『北国列車』『お前だけが』『ほおづえをつく女』『Bye Bye』『海風』『3号線を左に折れ』……など、さらに、1980年発売の 1st ソロアルバムから『想い出がつきない夜』と、全40曲を収録。
 
 当時のままの音源、あの頃に聴いた演奏と歌声のままの最新リマスターというのが嬉しい。実に、いい音になっており、当時、聴いた時の感動が蘇ってくる。
 
 そして、フォーライフからは、1975年〜2009年、「かぐや姫」〜「風」〜ソロまで、各時代のプレミアムなライブ音源を集めた究極のオールタイム・ライブ・ベスト 4枚組『THE 伊勢正三』がリリース。
 
 伝説となった、1975年の「つま恋」での 12時間のオールナイトコンサートでの「かぐや姫」のライブ音源や(初音源化)、1978年に「かぐや姫」が期間限定再結成をした時の武道館ライブの音源、さらに、「風」やソロ初期のレアなライブ音源に、充電期間を経て再始動した 1993年の渋谷公会堂から、2009年、大分県津久見での凱旋コンサートまで、収録 全60曲中、54曲が未発表音源となっている。さらに、既発音源も、新たにリミックスされた最新音源となっている。
 
 スタジオ録音盤にはない、ライブ音源ならではのドライブ感やグルーブ、空気感を感じることができるだけでなく、40年以上も前の音源にも関わらず、クリアでみずみずしく、あたたかい音で聴ける。さらに、1975年〜2009年と、35年もの間の音源が集められ、それが必ずしも時系列に並んでいるわけではないにも関わらず、全ての音質が揃っていて、それでいて音がいいから、少しの違和感も感じることなく心地よく聴ける。
 
 これほどのライブ音源が残っていたことも奇跡だが、「聴く人が喜んでくれるなら」と、それらを潔く出す伊勢正三も素晴らしい。ファンにとっては、もちろんその方が嬉しいが、昔のライブ音源をそのまま出すことを嫌がるアーティストも少なくない。真のプロフェッショナリズムを感じる。
 
 伊勢正三と言えば、プロとして初めて(作詞作曲の両方で)作った曲が『なごり雪』で、その次が『22才の別れ』だというから、まさに、天才としか言いようがない。言うまでもなく、『なごり雪』は、その後、イルカのカバーで広まり、今でも歌い継がれる日本のポップスのスタンダード曲になったし、『22才の別れ』は、アコースティックギターを弾く人にはお手本のような曲として、ギターの教本には必ず載っていた。
 
 他にも、イルカの『雨の物語』『海岸通』や、太田裕美の『君と歩いた青春』も、伊勢正三が作詞・作曲し提供した曲だ。
 
 もちろん、それらが、伊勢正三の代表曲であることには違いないが、「風」と、その後のソロの時代にも、実にいい曲が多い。「風」の途中からは、「シングルヒットを狙う」というよりも、自身の音楽と、より「いい音」をアルバム制作で追求していった。2019年、16年ぶりにリリースされた最新のソロ・オリジナルアルバム『Re-born』でも、変わらない「伊勢正三 節」を聴かせてくれる。
 
 1975年「かぐや姫」の解散後、もと「猫」のメンバーだった 大久保一久 と組んだ 2人組のユニット「風」は、ともにフォーク・グループの出身で、よく「フォーク・デュオ」と言われるが、実際は、ロックや AOR のような曲が多く、最近、世界的にも人気となっている 1980年代 ジャパニーズ・シティ・ポップ のパイオニアとも言える。「風」以降、伊勢正三のソロでも同じだ。今、聴いても全く古くなく、心地よく聴けるいい曲が多い。
 
 伊勢正三という人は、一見、気難しそうに見えるが、そのボーカルと同じく、誰にでもやさしい人だ。ソフトな語り口に、繊細さと、細かい気配りも感じる。
 
 音への強いこだわりを持ちながらも、「何を求められているのか?」という聴き手の視点で常に考えている、本当のプロフェッショナルだ。
 
 若い頃の、素直で、真っ直ぐで、爽やかな歌声もいいし、最近の歳を重ねた説得力を持った、エモーショナルな歌唱もいい。いずれにしろ、歌声のやさしさは変わらない。
 
 「風」のメンバーだった 大久保一久 が、今回のリリース直前、2021年9月13日に亡くなった。大久保一久 が亡くなったとされる時間に、伊勢正三は、ちょうど「風」のビデオを見ていたという……。「風」は、1979年に活動を休止したが、解散したことはない。


<もくじ>

1 こだわった音質と選曲 〜「それを一番求めてるんだと思って…」〜
2 初めて書いた曲が『なごり雪』 〜「”『なごり雪』は、僕から旅立った” という気持ち…」〜
3 「かぐや姫」とは全く違う音楽を追求した「風」 〜「なんて言うか……、全てが実験…」〜
4 キャリア 50周年、今、伝えたいこと 〜「みなさんのおかげだと思ってます…」〜


1 こだわった音質と選曲 〜「それを一番求めてるんだと思って…」〜
 
ーー 1971年9月25日、第2期「かぐや姫」のメンバーとしてシングル『青春』でデビューした伊勢正三。1975年、「かぐや姫」解散後は、大久保一久とのデュオ「風」として、そして、1980年以降は、ソロとして活躍を続けてきた、シンガーソングライターでギタリストの伊勢正三が、今年、2021年、キャリア50周年を迎えた。これを記念し、2021年9月22日に、レーベルの垣根を越え、「フォーライフミュージック」と「日本クラウン PANAM レーベル」の 2社から、アニバーサリーな作品が それぞれリリースされた。
 
ーー 日本クラウン「PANAM」レーベルからリリースされたのは、1971年〜1980年、「かぐや姫」〜「風」〜ソロと、クラウンレコードに在籍していた伊勢正三の初期ベスト作品集を、全曲、当時のオリジナルマスター音源に最新リマスタリングを施した 2枚組『伊勢正三の世界 〜PANAM レーベルの時代〜』。
 
ーー フォーライフからリースされたのは、4枚組のオールタイム・ライブ・ベスト『THE 伊勢正三』。1975年〜2009年、「かぐや姫」〜「風」〜ソロまで、約35年間という長い期間の中から選曲され、収録全60曲中、54曲の未発表ライブ音源が収録されている。
 
ーー あらためて、50年間のキャリアを振り返って、今、思うことを聞いた。
 
伊勢:あの〜、50年も やれるなんて、やっぱり……、誰もがそうだろうけど、思ってなかったので、本当に、音楽やれてて良かったなって、今回、こういうものを出せた時に思いますね。で、やっぱり、音楽人生を重ねただけのことはあるなって……。とくに、これだけのものをライブ音源で揃えてみると、本当にこだわってやり続けてきて良かったということですよね。「正やんは音にウルサイよね〜」なんて言われてきたりしたけど……(笑)。
 
伊勢:それで、今回みたいに 50年を振り返ってみると、本当に音楽っていうものを生業に出来てラッキーだったなと思うし、ま、その都度、その都度、音楽的なことに挑戦してきて良かったなと……。あっけないくらい、悔いはないよ。それで、ファンの方に、一番喜んでもらうためには、どうしたらいいのかっていうので、このレコード会社さん……、最初は、フォーライフさんの『THE 伊勢正三』というオール「ライブ CD」 の企画一本だったんだけど、クラウンレコードさんにもお話をして、それとは真逆の、若い当時のまんま、当時のアレンジのまんま、とにかくそのまんまを「いい音」にクリアファイして、リマスターで出して下さいっていう……、二つの似て非なる企画をお願いしたんです。
 
ーー その「まんま」が嬉しい。歌は、私たちの思い出とともにあるから、その当時、聴いたままのアレンジや歌声で聴きたいものだ。本当に聴き手の気持ちをよく考えてくれている。
 
伊勢:ありがとう……、そういう作品もやっぱり必要だよね。下手にイジッて、新しいアレンジとかにしたって、必ずしもみんなが嬉しくはないんですよね、きっと。音楽って、やっぱり、「当時の自分」「あの頃のあなた」「過ぎた日の青春」と出会うための「扉」って役割があるもんね。それを提供するのが僕らの大事な仕事かもしれない。
 
伊勢:まあ、とくに、こういうコロナの時に、何か役に立つ事があるかっていうと、もう、とにかく「いい音」を届ける事しかないからね。こだわれば、結局はこういうものが出来るんだなっていうね……。
 
ーー 伊勢正三は、心に沁みるメロディはもちろん、シンプルで、キャッチーで、歌われて伝わるいい歌詞を書く。「♪やりたいことをやるのさ なぜそれが悪いのかい… 間違うことがこわくて それで何ができるのかい…」と歌われる、伊勢正三が加入した 第2期「かぐや姫」のデビュー曲『青春』(作詞:伊勢正三、作曲:南こうせつ)。「♪泳ぐ魚の群に 石を投げてみた 逃げる魚達には 何の罪があるの」と歌われる、ファースト・アルバム収録の『あの人の手紙』(作詞:伊勢正三/作曲:南こうせつ)。「♪誰もが 一度 川の流れを 変えてみたいと 若く もえた あの日の唄が どこかで聞こえている」と歌われる、1978年に「かぐや姫」が期間限定の再結成をした時にリリースされたアルバム『かぐや姫・今日』(かぐやひめ・トゥディ)1曲目に収録されている『遥かなる想い』(作詞:伊勢正三/作曲:南こうせつ)など、歌詞が沁みる名曲が他にもたくさんある。
ーー 「かぐや姫」時代の曲で、リードボーカルではないが、そういう、伊勢正三が作詞だけを担当した曲は、今回、どちらの作品にも収録されていない。
 
伊勢:あ〜、そうか、そうか……。まあ、『青春』は、僕が初めて「かぐや姫」に入った時の曲なんですけど、自分でも、今、聴いても「こんなのさあ、よく書けたよね〜」って思いますね……。あっ、この前ね、え〜っと 1年ぐらい前かな……、東京のライブかなんかで、自分としてはサービス精神のつもりで新曲ばかりを披露していたんだけど、そしたら、突然、客席から、「正やん!もっと古いのやってよー!」って叫ばれて……(笑)、すごく勉強になったよ。それで、えいっ!と思い切って、いきなり『青春』をやったんだけど、それが拍手喝采でびっくり(笑)。僕は、なんだか……、反省したね。
 
ーー 第2期「かぐや姫」のメンバーとなり、プロになって、最初に作詞した曲が『青春』だった。
 
伊勢:そうですね。あの歌は、いまでも好きです。でも、おっしゃる通り、たしかに『青春』という歌に参加できたのは作詞だけ……。だから、南こうせつさんの明々朗らかなボーカルに、サブコーラスだけを担当したっていう状態でした……(笑)。その様子は、『伊勢正三の世界 〜PANAM レーベルの時代〜』でも『THE 伊勢正三』でも変わりないです……。
 
伊勢:僕の声は、良く言えば「ソフトで繊細」、悪く言えば「舌足らず」で聴き取りにくいみたいなんですね……。だから、「みんなちがって、みんないい」は、金子みすゞさんの言葉でしたっけ……、これに励まされています。それぞれ違う楽しみ方をしていただけたら嬉しいですね。
 
伊勢:だから、「かぐや姫」に入ってから、最初は作詞だけ任されていたんですけど、初めて「作詞・作曲」の両方に全力で挑んだ作品が『なごり雪』。それで、同じようにして、『なごり雪』のスタジオ録音完成の翌日の朝5時にできたのが、『22才の別れ』だったんです。ひとりで、「自由の門戸よ!ついに開いた!」なんて、しきりに呟いてました……(笑)。
 
伊勢:そんな経緯もあって、今回のライブベスト『THE 伊勢正三』は、全曲、僕がリードボーカルを歌っている曲を厳選して、全てで、僕がメインで歌っているっていうことにこだわったんです。これは、『伊勢正三の世界 〜PANAM レーベルの時代〜』の何十倍もの苦労を必要とするものでしたね。手当り次第に音源を探したんだけど、中には音質が劣化寸前のものもあって、どれが商品として耐えられるのかもわからない……。当時の録音機器も多岐にわたるものだったし、だから、商品化する上でかなり難航しましたね。
 
―― オールタイム・ライブベスト『THE 伊勢正三』には、例外として 1曲だけ、もともとは 南こうせつがリードボーカルをとっている『僕の胸でおやすみ』(作詞・作曲:山田つぐと=山田パンダ)を、伊勢正三が弾き語りで歌っている珍しい音源が収録されている。
 
伊勢:いや、自分でもビックリしたんですよ。僕、こんな素敵な曲 歌わせてもらっていたのか〜って知って……。ハッキリと覚えてないんです、よほど緊張していたんでしょうね。当時のライブでは、よくギター 1本の弾き語りのコーナーがあったんですけど、そこで、ギターのチューニングをしてたら、思わずこの曲のイントロになって、つい歌いたくなってしまったんですね。だから、『僕の胸でおやすみ』も、たった 1コーラスなんですけど、こういうシーンも入ってた方が、かえって貴重かな〜と思って……。いわば、アドリブを、今回、収録しちゃったというわけですよ。
 
伊勢:それで、勝手に CD という商品に入れてしまうわけにはいかないから……、もちろん、レコード会社や事務所の許可は必ず取るものなんですけど、気になって、「このパンダさんの『僕の胸でおやすみ』は、1コーラスとは言え、ちゃんとパンダさんの許可もらった?」ってスタッフに確認したら、「あっ、それは、ちょっと……」っていうたどたどしい返答だったんで、それで僕は、あわてて久し振りにパンダさんに直で電話したんですよ。「どうかなぁ、怒られたりして……」とかいろいろ思いながら……。そしたら、パンダさん、ものすごい喜んでくれてね、「久しぶりやな〜正やん! いつ以来かな〜!」って弾んだ明るい声で言ってくれました。今でも忘れませんね。
 
ーー このフォーライフ盤のオールタイム・ライブベスト 4枚組『THE 伊勢正三』には、収録全60曲中、54曲の未発表ライブ音源が収録されている。伝説となった、1975年の「つま恋」での 12時間のオールナイトコンサートでの「かぐや姫」のライブや(初音源化)、1978年に「かぐや姫」が期間限定再結成をした時の武道館ライブの音源、さらに、「風」やソロ初期のレアなライブ音源に、充電期間を経て再始動した 1993年の渋谷公会堂から、2009年、大分県津久見での凱旋コンサートまで入っているが、全て、マルチ・トラック・テープ(※)で録音されていて、かつ、それらが残っていたのだろうか?
 
(※筆者註)スタジオ録音のように、歌や、それぞれの楽器を別々のトラックに録音できるテープで、後から、それぞれの音質や全体のバランスも変えることができるテープのこと。
 
伊勢:いえいえ、そうじゃない。ほぼ、ほぼ、ステレオ 2トラックの一発録音ですよ。マルチ(トラック・テープ)で録れてたのは、ほとんどないです。今回、CD に収録できた曲は、その日のミュージシャンの演奏の出来と、そのコンサートで音響を担当したエンジニアのウデ次第ですね。もちろん、僕のボーカルの調子もですけど(笑)。
 
ーー ボーカルはもちろん、スネアやベースなど、それぞれの楽器の音も良く、その、あまりの音質の良さに、全てマルチ・トラック・テープがあって、それらをミックスしなおしたのだと思っていた。2トラック(ステレオ録音)ということは、楽器ごとの音質やバランスは調整できないから、今回、マスタリングで、全体の音質を調整しただけということになる。やはり、昔から一緒にやっているベテランのエンジニアによるものなのだろうか?
 
伊勢:いや、まだエンジニアとしては中堅の人で、「かぐや姫」の時代には、まだ彼は生まれていなかったでしょう。そういうアナログの時代を知らない人だけど、当時のヴィンテージの機材を使いこなすし、僕も、今の時代、彼がコンピュータの音楽ソフトウエアの中のアプリでしか見たこともない当時のままの本物の機材を持ち込んだり……、いろいろ話し合いながらやりました。
 
伊勢:もともと、マスタリングは、個人的にはミュージシャンの立ち入る領域ではないと思っていますから、もうずっと前から、その人を信頼してお任せしています。そこに至るまでのミックスダウンも、僕のこだわる「倍音」に関してとかは、スタジオのエンジニアのセンスって言うか……。
 
ーー 伊勢正三は、2019年に、16年ぶりとなるソロ・アルバム『Re-born』をリリースしているが、その時にも一緒にやっているエンジニアのようだ。
 
伊勢:だから『Re-born』の時は、ギターはもちろん、生演奏のベースとかも僕が自分で弾いてるから、すごい長い時間、スタジオで一緒にやったり、そういうヴィンテージの機材を全部持ち込んでやったりしたけど、今回は、コロナもあったんで、わりと、まあ、遠隔的に……。彼が調整した音源を聴いて、僕が「ココをもうちょっとこうしてくれない?」って返すとか……。
 
伊勢:だけど、ライブで一発録りのヤツ(2 トラック録音)は、そのままですよね……。その……、要するに、はっきりミストーンに聴こえる音源は、やっぱりさすがに外さなきゃダメなので。あと、それと、やっぱり極端に歌がダメなヤツ(笑)。結構、音源によって、すごく「いい、悪い」があるので……。でも、よくぞこれだけの音源があったな〜って、自分でも思うんですよ。
 
伊勢:実は、「かぐや姫」の頃とかは、一応、マルチ(トラック・テープ)が残ってるんですけど、逆に言うと、そういうものほど、あまりイジってないんですよ、うん。なんか不思議に「もうこのままの方がいいよね」って思っちゃうんですよ……、雰囲気とか。で、極端に言うと、「風」の武道館(1977年)とかも、マルチで録っていたと思っていたんだけど、どこの倉庫を探しても見つからないんですよ、……(笑)。それでも、オープンリールで録った音源はあったんだけど、なぜだかノイズが入ってて使えない……。で、最後に救いがあって、それは、カセットで録ってて、たまたま残っていた音源なんですよ……。
 
ーー なんと、驚いたことに、1977年「BIG CONCERT 海風 in 武道館」での DISC-1 の『君と歩いた青春』、DISC-4 の『お前だけが』『なごり雪』は、カセットテープで録音されていた音を使っていたのだ。  
 
伊勢:うん、そう……、この「風」の武道館はね、カセットの音源なんですよ。そうそう……(笑)、うん。アナログレコードとか、カセットテープには、CD には収録できない音も含まれているから、太くて、あたたかい音に聴こえることもあるんですよ。その、言ってくれた楽曲には、カセットの音源がしっくりときてね……、いろいろと聴き比べながら判断した結果、ここはあえてカセットテープの音源をチョイスしたんです。ほら……、ステンレスのスプーンで食べるより、あえて木のスプーンで食べたほうが美味しいものってあるでしょ……。この歌たちは、あえて「木のスプーンでお試しあれ」という感じかな。
 
ーー たしかに、最近の CD よりも、昔、レコードからカセットテープに録音した方が、太くていい音に感じることがよくある。音には、倍音と言って、聴こえているが、明確に聴き分けられない音が含まれているが、CD は、その性質上、収録できる音の範囲(周波数)が決まっている。しかし、アナログレコードやアナログテープ、カセットテープには、CD には収録できない音も含まれて聴こえるから、太く、あたたかい音に聴こえるのだ。
 
ーー 今回、これら、カセットテープをマスターにした音源も、聴いていて全く違和感がなく、言われなければわからないどころか、1977年の音源なのに、逆に、実にいい音に録れているなどと思って聴いていた。いずれにしろ、1977年〜2009年まで、約35年にもおよぶ期間の音源がランダムに並んでいて、それらが、全て違和感なく、自然に、しかもいい音で聴ける。
 
伊勢:「違和感なく」ですか……、褒めてるよね?(笑)、だったら嬉しいなあ……。それはもう、本当に、そここそを、ファンの方に感じてほしいと思って……。今回、50周年で、一番最初に、「何かすごいものを作ろう」っていうことになって、この企画(オールタイム・ライブ・ベスト)を考えたんですけど、でも、まさか、こんなボリュームのものが出来るとは、自分でも思ってなくて。
 
ーー 最初、フォーライフ盤のオールタイム・ライブ・ベストは 3枚組を考えていたが、音源のセレクトを進めるうち、試行錯誤する中で、最終的に4枚組となった。
 
伊勢:45周年の時に、もうすでに、ほとんどがスタジオ収録の「オールタイム・ベスト」をリリースしてるから、今回は、全てライブ収録した「オール・ライブ」のベスト盤に、思い切って踏み出そうと思って……。それこそ、歳を重ねて、自分の声が変わっていくことも、ひとつの「成熟」「渋味」「男の戦い」みたいに解釈してもらえるかなと……。さらに、願わくば、聴いてくださる方も、そういう「戦う男」「戦う女」のような、人生悲喜こもごもの辛酸を味わい尽くされた方々であろうと……、勝手な仲間意識を持ったりしながら……(笑)。そういうふうに聴いて、一緒に歌って欲しいです。
 
ーー 昔のライブ盤を、そのままの音で出すことを嫌がる歌手は少なくない。「今ならもっと上手く歌えるから……」と思ってしまうのが心理だ。そもそもライブ盤を出したがらない人もいる。そんな中、潔く、約35年間ものライブ音源をズラっと並べたことは、本当にすごいことだ。なかなかいないと思う。そして、それらの音を、そのまま愛せる 伊勢正三 は素敵だ。
 
伊勢:あ〜、いや、多分、ファンって、それを一番求めてるんだと思って……。でも、ライブ盤を出したくないって気持ちは、わかるなあ〜。僕は、今だにこの声で全国ツアーをやってるから、「CDの声と本人の声が違う」とか「昔の正やんは良かった」とか、散々言われるよ……。だけど、自分では若い頃の声を聴くと「余裕がないなあ、まだ蒼いなあ」なんて照れることもある。一番最初の「風」の頃の「つま恋」の音源なんて、あれは夜中の 3時か 4時に歌ったテープですよ。あんまりいい出来ではないんだけど……(笑)、うん、でも、未発表として「もう出しちゃおう」って勢いで判断して……。若いって恥ずかしいよね。でも、だからと言って、今の歌い方は「声がかすんでるなあ、スローモーだなあ」と思うわけだし……、どっちにしても、結局、不満なんだよね(笑)。
 
ーー 歌手は、例外なく、幾つになっても自身の歌には満足できないものだし、いつまでも「もっと上手くなりたい」と思うものだ。だが、伊勢正三は、自分が出したいものではなく、「何が求められているのか?」「ファンは何を喜ぶのか?」という聴き手の側の気持ちをよく理解している。プロフェッショナルとしての高い意識を感じる。
 
ーー オールタイム・ライブ・ベスト『THE 伊勢正三』の DISC-1 の 1曲目には、2009年、地元の「津久見市民会館」でのコンサートからの『あの唄はもう唄わないのですか』(作詞・作曲:伊勢正三)(1975年発売「風」の 2nd シングル)が収録されている。
 
伊勢:今回、このライブベストの中では、2009年の「あの唄はもう唄わないのですか」が、一番、歳とった声なんですよ。それを、あえて頭に持ってきてみたんです。だから「潔く35年間もの……」って言ってくれましたけど、僕は、ずっと伊勢正三なんです……。だから、ファンに僕の方からお願いするとしたら、その変化、成熟、枯れみたいなものも、ご自身の人生とも照らし合わせながら楽しんでほしいなって思うんです。
 
ーー たしかに、この 4枚組オールタイム・ライブ・ベストの中で、1曲目が 2009年で 一番新しく、2曲目が 1975年で一番古い音源になっている。
 
伊勢:まあ、なぜ、その後(2009年の津久見市民会館の音源以降)のテイクを入れないかって言うと、それは、まだ、新譜のオリジナルを聴いてほしいから……、その『Re-born』(2019年)とかもね。だから、そこは、あえて50周年だからって、2009年から2021年までの間の音源を無理して入れなくても……。で、今回のを全部、聴いて、この中で一番大人っていうか、まっ、歳をおびた声のヤツを、あえて頭に持ってきて、で、一番若いヤツを 2番目に持ってこようと……(笑)。
 
ーー そして、4枚の各ディスクごとにも意図がある。
 
伊勢:もちろん、すべてのことに意図があります。1枚 の CD に入る時間って限られるから、収録リストを並べてやり出したら、なかなか難しくて……。やっぱり、普通だったら、もう古い順に時系列で並べていくんだけど、これには……、あの、ある程度のイメージがあって、Disc 1 は 「セピア」っていうイメージで、Disc 2 は 「コバルトブルー」。Disc 3 は 「レッド」……、パッションみたいな意味ね。で、Disc 4 が 「ゴールド」っていうイメージで……。なんかもう、その中でいきなり違う時代がきてもいいかなと……(笑)。
 
ーー 全く違和感はない。
 
伊勢:いや、それは、嬉しい事で……。
 
ーー そして、このオールタイムライブベストには、「かぐや姫」時代の『湘南 夏』(作詞・作曲:伊勢正三)と、『なごり雪』は、それぞれ、別のテイクで 2つずつ、「かぐや姫」の「武道館」でのライブ音源と、その後の「風」やソロでのトラックも入っている。
 
伊勢:そうですね。その弾き語りの『湘南 夏』っていうのは、中の MC でも言ってるように、すごい久しぶりにやったっていうので……、多分、会場リクエストだったと思うんですよ。だから、そういうテイクも、入ってた方が、こうライブ盤としていいのかなと……。
 
ーー 昔のライブ盤は、MC が入っていることも少なくなく、そのころの空気感を感じることができて、リスナーにとっては嬉しい。今回のライブベストにも、ちょこちょこ MC が入っているのもいい。ライブ盤には、歌や演奏はもちろん、そういうところにも、スタジオ録音盤にはない魅力がある。
 
伊勢:そうそう、「あの時代のライブってこうだったんだよ」っていうようなのを感じてもらえればね。全部、武道館クラスでやったのでまとめれば、それなりに出来るんでしょうけど、もう、そんなに何か構えなくても、「自分らしいライブの形」みたいなものが伝われば一番嬉しいので、そういうことで、こういう風にしました。


2 初めて書いた曲が『なごり雪』 〜「”『なごり雪』は、僕から旅立った” という気持ち…」〜
 
ーー 日本クラウン「PANAM」レーベルからリリースされた『伊勢正三の世界 〜PANAM レーベルの時代〜』は、1971年〜1980年、「かぐや姫」〜「風」〜ソロと、クラウンレコードに在籍していた伊勢正三の初期ベスト作品集。
ーー 全曲、当時のオリジナル・マスター音源に最新リマスタリングを施した 2枚組。「かぐや姫」時代の『なごり雪』や『22才の別れ』、『ペテン師』や『置手紙』(この2曲は、スタジオ録音された音源はなく、ライブ音源しか存在しない)、「風」の『22才の別れ』『海岸通』『雨の物語』『君と歩いた青春』『ささやかなこの人生』『あの唄はもう唄わないのですか』『北国列車』『お前だけが』『ほおづえをつく女』『Bye Bye』『海風』『3号線を左に折れ』……などに、1980年発売の 1st ソロアルバムから『想い出がつきない夜』と、全40曲が、古いものから順番に、発表順に収録されている。
 
伊勢:はい、これはもう完璧に時系列です。
 
ーー アーティストとしては、収録されている 60曲、全ての曲に思い入れがあるのは当然だが、あえて、中でもとくに思い入れの強い曲を聞いてみた。
 
伊勢:そうですね……、ひとつには決められないし、決めるべきものでもないと思うけど……。でも、やっぱり、多くの人から愛されてもらった『なごり雪』を演じるときの緊張感は、特別なものがありますよ。それに、初めて作詞・作曲した曲ですから。
 
ーー 今回、オールタイムライブベストの『THE 伊勢正三』には、『なごり雪』が、それぞれ別のテイクで 2つ、「かぐや姫」と「風」の両方のバージョンが入っている。
 
伊勢:そうなんです。気づいてくれてうれしい……(笑)。26歳の時に歌った「風」としての『なごり雪』と、29歳の時に歌った「かぐや姫」再結成の時の『なごり雪』。この両方のテイクを、ディスクを「Disc 1 セピア」と「Disc 4 ゴールド」に、あえてコンセプトを変えて忍ばせてあるんです……。照れくさい気もするけど、それぞれを聴き比べてほしいと思って。
 
ーー 『なごり雪』(作詞・作曲:伊勢正三)と『22才の別れ』(作詞・作曲:伊勢正三)は、伊勢正三が、プロとして最初に作曲をして発表した曲だ。こんな、今でも歌い継がれる名曲 2曲が「初めて書いた曲」とは、本当に驚かされる。とんでもない才能だ。この 2曲は、伊勢正三が加入した 第2期「かぐや姫」の 4枚目のアルバム『三階建の詩』のために書かれた。リーダーの南こうせつが、他のメンバー二人にも等しく印税が入るように、曲を書くことを求めたのだ。
 
伊勢:そうです。それぞれ、僕とパンダさんが頑張って書くことになったんです。それで、いわゆる『神田川』までは「南こうせつとかぐや姫」だったでしょ。それが「かぐや姫」っていうグループ名になって初めてのアルバムなので、『三階建の詩(うた)』っていうのにして……。で、初めて僕にも作詞・作曲をするチャンスがきたんです。
 
ーー そして、最初に出来上がったのが『なごり雪』だった。メロディは、すぐに出来たが、歌詞には時間がかかったという。
 
伊勢:『なごり雪』のサビは、もう本当にすぐ出来てたんですけど、そこに持って行くまでの歌詞を試行錯誤してたんでね……。それで、もう、締め切り、何日過ぎてたかな……。あの時代、一番、急がなきゃいけなかったのは、レコードの中に入る歌詞カードなんですよ、印刷物、コンピューターがないから。それで、部の上の方から「まだ出来てないんですか? せめて歌詞だけでも……」って言われるんですよ……(笑)。ほかのところは全部 出来てる LP の歌詞カードを見せられて、で、僕の作詞・作曲の担当が 2曲っていうのはもう決まってたから、そこだけがポッカリ空いてるんですよ、A面の2曲目、B面の3曲目かな、僕のトコだけ(笑)。だから、その印刷物を欲しがる部の方からは「まだか!まだか!」ってほぼ怒声の中で……(笑)。
 
ーー 実は、初めて書いた『なごり雪』のあと、『22才の別れ』ができるまでの間に、もう1曲あったようだ。
 
伊勢:で、やっと 1曲、『なごり雪』は完成したんだけど、もう1曲がね……。『なごり雪』をまずレコーディングして、すごく満足して……。で、最初、もう1曲、『22才の別れ』になったところに入るべき曲として、別の曲を書いてたんだけど、それが自分で納得いかなくて……。あん時の事……、もう忘れちゃったけど、そのもう 1曲が物足りなくなっちゃった……、自分の中のグレードとして。それで、「もう1日だけ締め切り待って下さい」って、その場で、みんなにお願いして……。で、その日、帰って徹夜して『22才の別れ』を書いてきた。
 
ーー そのボツにした曲は、その後、お蔵入りになったのだろうか?
 
伊勢:うん、もう、まるで忘れてる……(笑)。
 
ーー 『なごり雪』が、最初に収録されたアルバム『三階建の詩』は、オリコン 週間 1位を獲得、その年の年間ランキングでも 5位となる大ヒット。さらに、『なごり雪』は、その約1年8ヶ月後の 1975年11月5日に、イルカ が 3枚目のシングルとしてカバーして大ヒットしたことで、今でも歌い継がれる、日本のスタンダード・ポップスとも言える曲になった。
 
伊勢:あ〜、そうですかね……、ありがたいです。
 
ーー 45年前に書いた時には、こんなにすごい曲になるとは?
 
伊勢:とても思ってないですね〜。
 
ーー たとえば、もう何十年かしたら、もしかしたら、今で言う 服部良一 みたいに言われるかもしれない……。
 
伊勢:あっ はっ はっ はっ……(笑)、それは光栄です……(笑)。
 
ーー それほどすごい曲を書いたというのは、どんな感じなのだろう?

伊勢:『なごり雪』がなかったら、僕はありえなかったですよね、多分。まあ、広めてくれたのは イルカさん ですけど……。でも、時代はめぐるもので、最近の若い人の中には、僕のことはもちろん、イルカさんさえも知らない方もいらっしゃる……。それでも、子どもからお年寄りまで、あらゆる世代で、いまだに『なごり雪』という曲だけは生きている……。作者も歌い手からもどんどん離れて、楽曲だけが、世の中の空気の中に漂い続ける……、これは作家にとって、一番ありがたいことです。
 
ーー 『なごり雪』は、イルカの夫でもありプロデューサーでもあった 神部和夫 が、当時、「かぐや姫」の前座で歌っていたイルカに「どうしても『なごり雪』を歌わせたい」と思い、言ってきたそうだ。
 
伊勢:そう……らしい、ですね。そういう話を、その当時の「ユイ音楽工房」の社長に話したみたいですね。
 
ーー 「ユイ音楽工房」は、吉田拓郎や猫、かぐや姫、風、イルカ らが、かつて所属していた伝説的な音楽プロダクション。
 
伊勢:それで、その話を聞いて、僕は大喜びで OK したんだけど。ただ、イルカさんは、当時「かぐや姫」と一緒にずっとツアーで回ってて、で、自分のステージが終わったら、「かぐや姫」のステージを袖でず〜っと観てくれてたの。だから、僕が『なごり雪』歌ってお客さんが喜ぶ姿も、みんなイルカさんが観てくれてたから、最初は、イルカさんも、なんか「自分が歌っていいのか?」みたいな気持ちがあったと聞きました。
 
ーー イルカは、「こんなに “かぐや姫” で人気の曲を私が歌ってもいいのか?」と、ずいぶん悩んだそうだ。
 
伊勢:それで、そのレコーディング当日まで、まだそんなモヤモヤ感があって、で、スタジオに僕がヒョイと現れて、僕もあんま覚えてないんだけど、「僕は、イルカさん歌ってくれたら本当に嬉しいよ」みたいなこと言ったみたいなんです……。
 
ーー イルカの『なごり雪』の歌入れのスタジオに行った時、出来上がった音を聴いてどう思ったのだろう?
 
伊勢:イルカさんの歌は、もうバッチリでしたし、とにかく、あのアレンジが……、あのピアノのイントロ聴いた時に、もう僕は「あ〜 イケた!」って言うか、完璧に納得して……。あと、今、考えたらメンバーがスゴいじゃないですか。ドラムは、ポンタさん(村上 ポンタ 秀一)、それで、ベースが後藤次利、エレキギターが鈴木茂、アコギが吉川忠英……、ああいう人達ですよ……、うん。それで、多分、マンタさん(松任谷正隆)が、初めて他の人のアレンジをした曲だって……、本人からそう聞きました。
 
ーー イルカの『なごり雪』は、1975年11月5日の同日に発売となったアルバム・バージョン(アルバム『夢の人』編曲:石川鷹彦)と、よく知られている、このシングルバージョン(編曲:松任谷正隆)がある。アコースティック・ギターのレジェンドと言える石川鷹彦がアレンジしたアルバム・バージョンは、ドブロ・ギター(スライド・ギター)が入ったフォーク調の感じで、どちらかと言えば「かぐや姫」のバージョンに近い。
 
ーー ところが、松任谷正隆 がアレンジし、村上ポンタ秀一(Dr)や後藤次利(EB)、鈴木茂(EG)、吉川忠英(AG)ら 今となってはレジェンドのようなミュージシャンたちが録音したシングル・バージョンは、フォークではなく、完全にポップス調になっていた。雪がはらはらと降るようなイントロからおしゃれで、フォークでは使われないようなテンション・コードが使われている。
 
伊勢:あのイントロは発明ですよ……、あれは……。僕も、何かの時に、自分のエッセーにも書いたんだけど、もう、あのアレンジを聴いた時に、「『なごり雪』は、僕から旅立った」という気持ち……(笑)。
 
ーー もちろん、イルカも、自分で作詞作曲をするシンガーソングライターで、『いつか冷たい雨が』とか『まあるいいのち』『サラダの国から来た娘』など、いい曲をたくさん書いているが、イルカにとっても、この『なごり雪』のヒットがあったことで、その後の活躍につながった。そして、『なごり雪』が、名曲であることに疑いの余地はないが、45年以上経った今でも歌い継がれる、「かぐや姫」ファンのみならず、誰もが知るエバーグリーンな曲になったのは、イルカのカバー・バージョンがあったからかもしれない。
 
伊勢:とにかく、イルカさんの歌唱力っていうのは、もう誰よりも僕は知ってたから……。レコーディングで、もう何回も歌わないんですよ、あの人……。イルカさんとのジョイントとかある時に、本当に僕はイルカさんに話すんだけど、「もうフォーク界の美空ひばりさんだよね」っていうくらい……。美空ひばりさんも、2回しか歌わないなんて有名じゃないですか。レコーディングに来て、「1回はクライアントさんのために歌います」、「もう1回は本番のために歌いますよ」……って(笑)。要するに、いつも完成度が高いんですよ。
 
ーー だから、今では、一般的には『なごり雪』と言えば、まず イルカ と言われる。
 
伊勢:もう、ほとんどそうですよ〜。
 
ーー でも、「『なごり雪』は、やっぱり かぐや姫のバージョンで、正やんの歌ってるのがいいよね〜」と言う人も少なくない。
 
伊勢:それは、ファンの人で……、まあ、「どっちもいいよね」って言ってくれる人が多いけど……。まあ、僕の『なごり雪』っていうのが認識されたのは、あの……、「なごり雪」っていう言葉が無かったからなんですよね、本当は「名残りの雪」っていうことで……。
 
ーー 「本当は『名残りの雪』が正しくて、『なごり雪』なんて言葉はない、日本語が乱れる」などと非難されたこともあったと、よく書かれている。
 
伊勢:いや、それは何かのインタビューで、ある方がそういうことを書いてるけど、文句は言われないですよ。だって、僕、知ってたもん、それ。その当時の小説で、立原正秋 さんっていう方がいて、『残りの雪』っていう小説があったんですよ。それで、「名残りの雪」にすると……、名残りの雪って、まだ春が来ても山肌の日陰とかに残ってる、そういうイメージだけど、僕が言いたかったのは、「名残り惜しい雪」ってこと……。その年の最後に降る雪なんですよ。で、「♪季節はずれの雪が降ってる」になるんですよ。そん時に、それを表現したくて、歌詞の中に「なごり雪」っていう言葉を「♪なごり雪も 降る時を知り」っていうのを入れて……。だから、「降る雪」を表現したかったので「なごり雪」にしたんですね。
 
ーー 曲タイトルを、歌詞の中には、たった 1回しか出てこない『なごり雪』としたことも秀逸だ。
 
伊勢:それで、レコーディングが終わっても、実は、まだタイトルが決まってなかったんですよ。で、あの……、すごく考えてて、それも締切りギリギリまで考えてて……。で、当時の名物ディレクターで、『田中君じゃないか』(第2期「かぐや姫」の 2nd シングルで、作詞:伊勢正三/作曲:南こうせつ)のモデルになった田中ディレクターってのがいて、いつも忙しい人で、トントントンって机を叩きながら、「はい、はい、はい、正やん! タイトル! タイトル! タイトル!!」って言われてて……(笑)。それで、その場で、ものすごい急かされて、「う〜ん……、う〜ん……『なごり雪』!」って言ったのがもう決定的で(笑)。これタイトルが『なごり雪』じゃなかったら、多分、こんなに売れてないのかなっていう……、うん。
 
ーー 『なごり雪』という言葉は、曲が作られてから 40年近くたった 2013年に、日本気象協会が選定した「季節のことば36選」で、「3月のことば」のひとつとして選ばれた。
 
伊勢:そうなんです。現代の季語の「3月のことば」のひとつとして認定されたんですよ。他は、えっと……「おぼろ月」と「ひな祭り」だったかな……。その月ごとに 3つずつ選ばれる新しい季語という……。もう、それで、やっとこう胸を撫で下ろすというか、胸のつかえが下りた気分……(笑)。
 
ーー 実は、『なごり雪』の前にも、イルカのソロ・デビュー曲『あの頃のぼくは』(1974年)も、伊勢正三の作詞・作曲で、その後、『なごり雪』のあとにも、『雨の物語』『海岸通』(いずれも、作詞・作曲:伊勢正三)などのイルカのヒット曲は、伊勢正三が提供している。
 
伊勢:イルカさんの『雨の物語』(作詞・作曲:伊勢正三/編曲:石川鷹彦)とかも、本当にいいよね。LA 録音で、ラス・カンケル(Russel Kunkell)がドラム叩いて、リーランド・スカラー(Leland Skalar)がベース弾いて、あんないい音で……。で、あのアレンジ、実は、僕のデモテープのまんまなんですけど……、それを石川鷹彦さんにまかせたら、「なんにもしてないじゃん、あれアレンジ俺じゃん」って……っていう……(笑)。
 
ーー それほど、伊勢正三が最初に作ったデモテープの完成度が高く、もう石川鷹彦には、いじりようがなかったということだ。
 
伊勢:うん……、だけど、渡したデモテープは、全部、自分で弾いてるから、「あっ、こんな素晴らしくなるんだ〜」って……。ああいうフォーキーな曲が、ラス・カンケルが叩いたら、あの独特なちょっとハネた感じで、すごいポップスになるんだな〜っていうのを思いましたね。フレッド・タケットのエレキギターも感動しました。あのフレーズがあってこその『雨の物語』ですね。僕は、そのレコーディングも立ち会ってるから……、ロスまで行って、うん。
 
伊勢:それで、その時ね、神部さん(イルカのプロデューサーの神部和夫)から、「正やん、ちょっとお願いがあるんだけど」って言われて……。「あの『雨の物語』の 2番の歌詞がイルカには合わないと思うんだけど……」って。僕は観光でロスに行ってたのに、まさかのダメ出しが出て……(笑)。で、もうその場じゃ書けないので、ひとりでラスベガスに行ったんですよ。ラスベガスって昼も夜もないから、いつでも思いついたら、なんかこう、突然やりたい時に出来るじゃないですか……、食い物もあるし、何かそういう環境で……。で、まあ、2番のAメロだけだったんですけど、書き直したんですよ。だから、『雨の物語』は、2番のAメロは、最初は今の歌詞じゃなかったんですよ。もっとエグかったの。だから、多分、イルカさん的には、自分のイメージに対する抵抗があったんじゃないかなって思うんですよ。


3 「かぐや姫」とは全く違う音楽を追求した「風」 〜「なんて言うか……、全てが実験…」〜
 
ーー 「風」の 3rd アルバム『WINDLESS BLUE』(1976年11月25日発売)に収録されている名バラード『君と歩いた青春』(作詞・作曲:伊勢正三)も、伊勢正三の代表曲のひとつと言える。「『なごり雪』よりも好き」という人もいるくらい、心に沁みる、泣ける曲だ。もちろん、今回のクラウン盤『伊勢正三の世界 〜PANAM レーベルの時代〜』にも、フォーライフ盤『THE 伊勢正三』にも収録されているが、この曲も、『なごり雪』のイルカの時と同じように、太田裕美がカバーしたことで広く知られるようになった。太田裕美は、『WINDLESS BLUE』のリリース直後の 12月5日 にリリースされたアルバム『12ページの詩集』でカバー。さらに、その5年後の1981年に、再録音して、シングルとしてリリースした。あの太田裕美の声と、萩田光雄によるドラマティックなアレンジで人気となった。
 
伊勢:そうだよね……。これは、『WINDLESS BLUE』ってアルバムで、初めて自分でエレキ持って、ちょっとイカした、ちょっとロックっぽい感じでね……。スティーリー・ダン が大好きで、そっちのサウンドとかの影響を受けてたから、もう、まるでフォーキーじゃないものを作ったんだけど、『君と歩いた青春』は、やっぱり、1曲くらい、何かちょっと売れ線を書いてた方がいいかなっていう……(笑)、はい。
 
ーー ある意味、狙って書いたということだ。たしかに、このアルバム『WINDLESS BLUE』は、ロックや AOR といった曲ばかりで、唯一、この『君と歩いた青春』だけが異色だ。
 
伊勢:ええ、そうなんです。まあ、ちょっと……、やっぱ、これくらい書いとかないと……って(笑)。それは、ある意味、狙ってますよね。で、太田裕美さんから、曲の依頼が来たんですけど、僕は、レコーディング終わったら、すぐ休暇でアメリカに行くつもりだったので、もう発売前の音源を全部渡して「この中から好きなの選んでいいよ」って言ったんです。
 
ーー 『君と歩いた青春』は、その中から、太田裕美が選んだ。
 
伊勢:うん、そう、太田裕美さんが「コレがいい」って言って……。だから、太田裕美さんのお陰……、よく太田裕美さんがシングルにしてくれたなって……。僕も、「なぜシングルにしなかったの?」とかってよく言われるんだけど、とてもそういう……、もう、とにかく、その頃、シングル出すっていう気持ちがもうなくなってたから、自分の中で。
 
伊勢:だから、たとえば、『ささやかなこの人生』(1976年発売「風」の 3rd シングル)って、アルバムに入ってないですからね。あれはあれで、「じゃあシングルっぽい曲を書こう」みたいな、もう狙って書いた曲……。だから、これをアルバムに入れると、ちょっとなんか毛色がかわるので『ささやかなこの人生』は、もうアルバムから外しちゃうっていう……。
 
ーー 1975年「かぐや姫」の解散後、もと「猫」のメンバーだった 大久保一久 と組んだ 2人組のユニット「風」は、ともにフォーク・グループの出身で、デビュー曲が「かぐや姫」の時に書いた『22才の別れ』(同年、解散前にリリース)だったことや、人気の曲にこの『君と歩いた青春』などがあることから、よく「フォーク・デュオ」と言われる。だが、実際は、イーグルスやシカゴを思わせるようなアメリカン・ロックの曲や、まるで AOR のような曲、最近、世界的にも人気となっている 1980年代 ジャパニーズ・シティ・ポップ の先駆けのような、おしゃれなサウンドの曲も多い。「風」以降、伊勢正三のソロでも同じだ。
 
伊勢:ええ、そうです、はい。だから、もうそういう風に、自分自身の好みの音楽が 70年代の後半の……、まあ、ボズ・スキャッグスとか、ああいうね……。あの時代がね、アナログで音も一番良かったし、曲も良かったし、自分がやっぱりだんだん好きになっていったのはそこで、それをどういう風に取り入れていこうかっていう……。その、「風」になって、初めて自分の好きなことが出来るグループじゃないですか。「かぐや姫」は、全部、こうせつさんの意向が強かったし。だから、そういう意味では……、この中(『伊勢正三の世界 〜PANAM レーベルの時代〜』)で、まあ、エポック・メイキングとなったのは『ほおづえをつく女』かな……、初めて、エレキを持って……。
 
ーー 『ほおづえをつく女』(作詞・作曲:伊勢正三)も、「風」の 3枚目のアルバム『WINDLESS BLUE』収録曲で、かつ、「風」の 1976年に発売された4枚目のシングルでもある。伊勢正三が弾くエレキ・ギターは、サンタナのようだ。
 
伊勢:あ〜、よく言われますよ……、おこがましいですけどね(笑)。こっち(オールタイム・ライブ・ベスト)でも、『ほおづえをつく女』は、野外でバリバリ弾いてるでしょ。
 
ーー 伊勢正三は、ギタリストとしても人気が高い。リフや歌中のオブリガードもいいが、とくに、ギター・ソロが、かっこいい。歌と同じで、ソロも、ギターが歌っているかのようにメロディアスだ。
 
伊勢:あ〜、それは嬉しいですね。あの、とにかく、何て言うのかな……、その場で作曲しようと思って弾いてるからね。あまりスケール練習なんてしたこともないし、指もそんな動かないし……、ただ、音色とフレーズだけにはこだわってますよ。
 
ーー 今回の『THE 伊勢正三』に収録されているソロでの『Heart break Moon』は、ツインリードのギターが気持ちいいし、『That’s where love begins』では、シカゴの『Saturday in the Park』のようなアウトロの繰り返しで、ドライブ感のあるギターソロが聴ける。「かぐや姫」の『きらいなはずだった冬に』でも心地よい音のギターソロが入っている。また、スタジオ録音盤の『伊勢正三の世界 〜PANAM レーベルの時代〜』では、『ほおづえをつく女』など以外でも、たとえば、「風」の『君と歩いた青春』では、コンプの効いたクリーントーンのエレキ・ソロに、曲中のオブリガードも全て伊勢正三が弾いている。エモーショナルなフレージングが、歌と同じような情感を伝えてくれる。
 
伊勢:でね、僕らは、なぜ「風」っていう名前のグループにしたかって言うと、「立ち止まってないんだ」と……、うん。まあ、ライブのトークでいつも言ってたんですけど、そうじゃなかったらあのグループ名は「空気」だったんだって(笑)。動くから「風」なんだっていうので、どんどん音楽的に変化していくってことを、もうムチャクチャに……、なんて言うか……、全てが実験。だから、本当にあの『WINDLESS BLUE』の時に、エレキ弾いたのも実験だし、それから、その次のアルバム『海風』で、海外録音を初めてした時の『海風』(タイトル曲、作詞・作曲:伊勢正三)のイントロとかもそうだし。
 
ーー ロサンゼルスで録音された「風」の 4枚目のアルバム『海風』の 1曲目に収録されているタイトル曲『海風』のイントロは、アコースティック・ギターの弦をはじきながら弾く「スラップ奏法」で演奏されている。今でこそ、そういうギターを弾く人は少なくないが、当時としては、斬新で画期的だった。
 
伊勢:『海風』って曲は、ロサンゼルスで書いたんですよ。で、なぜ、ああいう風になったかって言うと、僕は、『WINDLESS BLUE』って 3枚目のアルバムを作って、「スゲーかっこいいアルバムが出来た」と思って、意気揚々とロスに行ったんですけど、そうすると、やっぱり何かの機会で、向こうのミュージシャンの音楽に触れるじゃないですか。で、その時に、「オリジナリティが全然ない」と思ったんですよ、所詮、真似事だと……、いくら洋楽が好きでも。だから、その言ってくれた「サンタナみたいの」の「みたい」じゃないとこに、やっぱり行きたいっていうのがあって、それで、ロスだから『海風』が書けたんだと思うけど……。
 
ーー そうやってロサンゼルスで書かれた『海風』のサウンドは斬新でファンキーだが、歌詞は、ふるさとを思う、どこか切ない感じがする。
 
伊勢:ロスにいて、遠く離れた日本を思った時に、自分の子供時代の事がすごい浮かんできたんですよ。剣道やってたんですよね、小4 から。それで、その時、真冬の板間に 2時間 正座したりとか、何かそういうスピリッツみたいなのとか……(笑)、ライバルだった隣の中学の赤胴付けた奴と、いつも一勝一敗とかで競ってたりとか、何かそういうのがいろいろ浮かんできて……。そん時に、なぜか、琵琶の音がビンビンビンって鳴ったんですよ。で、それを表したくて、バチーンて自分でギター弾いた時に、あの『海風』の「♪ダンダンダダン」てイントロになったんですよ。このスピリッツだな〜と思って……。

伊勢:だから『海風』のスピリッツは、あの歌詞見てもらうとわかると思うんだけど、「♪海風 吹いてた あの頃 いつの時も…… 幼な心に吹いてた」……と。僕、海の真ん前に住んでたから、そん時の歌詞なんだけど、リズムはドゥービーブラザースの「♪チャーンララ」ってアレ(『Long Train Runnin’』)なんですよ〜。まあ、その後の「♪タタタン」のところとかね、ああいう……。だから、まあ、音楽的には、やっぱり洋楽とか、R&B のバックビートとかね……。
 
ーー もともと「かぐや姫」の頃から、そういう洋楽のようなサウンドの曲をやりたかったのだろうか?
 
伊勢:いや、それはなかったです、「かぐや姫」の頃は……。「風」のもう途中からですよね。それでね、「かぐや姫」の頃っていうのは、僕がいちばん洋楽を聴いてなかったですね。よくパンダさんに言われてたもん「正やん、あんま音楽知らないからね〜」って。こうせつさんもパンダさんも、もう毎月『ミュージック・マガジン』とか読んでて、どこのメンバーがどうしたとかって……(笑)。で、2人は、よく洋楽を聴いてたんだけど、僕はもう、ほ ぼ小椋佳 さんだけですよ、聴いてたの……(笑)。スゲ〜いいな〜と思って、あの『彷徨』(さまよい)っていうアルバム。もう、ず〜っと聴いてたから、のちに、ご本人にもお話ししたけど、「あ〜そうですか〜」って言われただけで……(笑)。
 
伊勢:それでも、まあ、「風」の 1枚目のアルバムは、この「PANAM」レーベルにいた「ティン・パン・アレー」のメンバーが入ってくれてたりして、その頃から「かぐや姫」とは、もうガラっと変わる雰囲気でやりたかったんですよ。
 
ーー 「風」のファースト・アルバム『風ファーストアルバム』(1975年)には、のちに、イルカがシングル曲としてカバーしてヒットした『海岸通』(1979年)が収録されているが、収録12曲中 3曲で、もと「ティン・パン・アレー」の松任谷正隆がアレンジをしていて、そのうち『でいどりーむ』『ロンリネス』では、山下達郎がコーラス・アレンジを担当。コーラスには、村松邦男、山下達郎、大貫妙子、山本潤子、吉田美奈子 ら、その後、いわゆる ジャパニーズ・シティ・ポップ を牽引することになる錚々たる面々が参加している。
 
ーー 「風」は、5枚のオリジナルアルバムと、『雨の物語』を初収録し、さらに新録音された9曲を含むベスト盤『Old Calendar〜古暦〜』をリリースした後、1979年に活動を休止し(解散はしていない)、その後、1980年からは、伊勢正三はソロとして活動。さらに、サウンドは洗練され、まさに AOR といった『moonlight』『二人の周期』『スモークドガラス越しの景色』『Sea Side Story』『Tonight Tonight』『汐風』『リアス式の恋』『夜のFM』など、今回のオールタイムライブベストにも収録されている数々の名曲を発表している。


4 キャリア 50周年、今、伝えたいこと 〜「みなさんのおかげだと思ってます…」〜
 
ーー もともと、伊勢正三は、小さい頃、どんな音楽を聴いていたのだろう?
 
伊勢:えー、中学生になった頃だったかなあ……、初めて母ちゃんに買ってもらったレコードが、たしか、坂本九さんの『上を向いて歩こう』で、昔のさ、あの透けた赤いシングル盤ね。嬉しかったなあ〜。そのあと、ギターを弾くようになってから最初に惹かれたのは、荒木一郎さんかな……、『空に星があるように』とかね。
 
ーー そのギターと出会ったきっかけを聞いた。
 
伊勢:まず、中2 の誕生日に父ちゃんからウクレレを買ってもらったんです。それで、見よう見マネで、加山雄三さんの曲にトライしていたんですけど……、そのうちに、4本の弦ではなくて、6本の弦のある楽器があったらなあ〜と欲張り始めて(笑)。で、近くの楽器屋さんに吊るされてたギターを見るとよだれが出てきちゃって(笑)。その後、両親に土下座をして買ってもらったのが最初です。ギターコードとかっていう概念も知らなかったですけどね……。
 
ーー 中学卒業後、大分県立大分舞鶴高校に進学してコーラス部に入ると、2つ上の先輩だった 南こうせつに誘われ、ベースの 釘宮誠司 との 3人で、フォークグループ「ヤング・フォーク・スリー」を結成した。
 
伊勢:そうですね、あの頃は、PPM(ピーター・ポール&マリー)とかやってましたね。あの……、オリジナルも何曲かあったり。
 
ーー 伊勢正三も、高校の頃からオリジナル曲を書いていたのだ。
 
伊勢:そうですね……。で、その頃、アマチュアの時に書いた曲を、今、「ひめ風」って言う こうせつさんと 2人のユニットで、やったりしてるんです……(笑)。
 
ーー 南こうせつと伊勢正三は、2013年から「ひめ風」というユニット名で全国ツアーも行っている。伊勢正三がプロとして最初に曲を書いたのは、「かぐや姫」の 4枚目のアルバム『三階建の詩』の『なごり雪』と『22才の別れ』だが、伊勢正三が「かぐや姫」に加入して最初のシングル『青春』(作詞:伊勢正三/作曲:南こうせつ)では、作詞をしている。
 
伊勢:そうですね。こうせつさんから「書いてみたら?」っていうことで……。でも、最初、多分、北山修さんに頼む予定だったんですね。
 
ーー さらに、続く 第2期「かぐや姫」の 2nd シングル『田中君じゃないか』(作詞:伊勢正三/作曲:南こうせつ)、3rd シングル『僕は何をやってもだめな男です』(作詞:伊勢正三/作曲:よしだたくろう)でも作詞している。いずれも、コミックソングのような楽しい歌だが、よくできた歌詞だ。
 
伊勢:僕は……、「かぐや姫」ってコミックバンドだと思ってたから……(笑)、いやマジで、マジでそうですよ。だってね、えっと、『酔いどれかぐや姫』とかで『変調田原坂』だの、そういうのやってたし。
 
ーー 『酔いどれかぐや姫』『変調田原坂』は、伊勢正三が加入する前の 第1期「かぐや姫」の曲。
 
伊勢:だって、この頃のプロモーションは、リアカー引いてトイレットペーパー売りやったりとかで……(笑)、もう「かぐや姫」ってコミックバンドだったんですよ。だって、あの……、ジョイントコンサートとかやった時に、「殿さまキングス」と一緒だとか……(笑)、そういう時代が、あったもん。僕は、もうコミックバンドに入ったんだと思った(笑)。
 
ーー 伊勢正三は、高校卒業後、大学進学のために上京。南こうせつに誘われ、大学 1年生の時に「かぐや姫」に入った。
 
伊勢:えっと……、その前に、予備校時代があって、そん時に、こうせつさんから打診があったんだよね。その時、こうせつさんは、最初、ソロの時代があったんですね、クラウンレコードで。で、それが全然、売れなくて、 第一次の「かぐや姫」を作って……。それで、『酔いどれかぐや姫』がスマッシュヒットしたんだけど、もう 1年で解散が決まってたんですよ、他のメンバーの就職とかで。それで、その次の、第二次の「かぐや姫」、いわゆる、みんなが認識している「かぐや姫」のメンバーとして、こうせつさんから僕に打診があったんだけど、最初、僕は、プロになるなんて、とても自信がなくて……。こうせつさんは、高校時代から、もう本当に歌が上手かったし、もう群を抜いてたので、「ああ、この人はプロになるな」っていうのを思ってたんですけど。
 
ーー 南こうせつから誘われるまでは、歌手になろうなどとは、夢にも思っていなかった。しかし、自信はなかったが、やりたい気持ちは強くなっていった。
 
伊勢:それで、あの……、父親を説得するのに、手紙を書いたんです……、初めて、親に、やらしてくれっていうので。やっぱり、自分が行きたいところに行きたいという……、うん、そう。
 
ーー そして、「かぐや姫」のメンバーとなり、大学は中退する。
 
伊勢:それで、自分の大きな勘違いはね、僕の田舎の大分から見ると、上京するってことは、千葉も東京も同じだと思ってたわけ(笑)。習志野にある千葉工業大学っていうとこなんだけど、駅が津田沼って総武線の駅で、そこから借りてた下宿が歩いて30分くらいの所で、田畑を抜けて、もうすごい所なんですよ。「大分よか田舎じゃん」って思って……(笑)。そいで、まあ、一応、工学部なんで、真面目に学校に行って、白衣着て試験管を振るような授業やってたんだけど、もう「かぐや姫」っていう活動が始まって、「これ、両方は絶対に無理」って思って……、だって、東京に出るの遠いんだもん……(笑)。だから、活動が始まるもう前に、退学届け出したんだけど。
 
ーー 結局、大学に通ったのは、3ヶ月だった。「かぐや姫」に誘われる前は、工業大学に入ってどうなりたいと思っていたのだろう?
 
伊勢:就職っていうか、多分、サラリーマンは無理だろうから、デザイナーになりたかったです。
 
ーー 私たちが、伊勢正三を好きなように、逆に、伊勢正三が、昔から聴いていて、今でも好きなアーティストや、すごいと思うアーティストを聞いてみた。
 
伊勢:そうですね……、好きなアーティストは数えきれないよ〜。無理やり選ぶとしたら、声とか、作品の完成度からいうと、やっぱり 小椋佳、沢田研二の両巨塔かな……、僕にとっては……。あと、洋楽では、スティーリー・ダン、ボズ・スキャッグス、ネッド・ドヒニー……、あげればキリがないです……、すごいな〜と思うし。あと、山下達郎やサザン、ユーミンはもちろん、来生たかおのピアノの世界も好きです。それと……、オジサンがいうのもアレですけど……エレカシってすごいよね……(笑)。まあ、歌の世界観づくりが上手な方だらけなので、みんなすごいなと思っちゃう……。
 
ーー ギタリストで好きな人は誰なのだろう?
 
伊勢:まず頭に浮かぶのは、エリック・クラプトンですけど……、これも挙げるとキリがないですね。日本では、それはもう 石川鷹彦 さんを外したら、僕にとっては話にならないですけど……。僕が、ギターを弾けるようになったのは、全部、(石川)鷹彦さんのおかげですから。「かぐや姫」でのレコーディングも(石川)鷹彦さんだし、もう『22才の別れ』のあの美しいイントロは、もはや彼の発明ですよ……、アレンジは、瀬尾一三さんですけどね。あの方みたいに、テクニックだけの速弾きとかじゃなくて、物語るようなやさしい音色をつむいで……、「まるで歌うようにギターを奏でる」っていうのを覚えたのは、もう(石川)鷹彦さんのおかげ。
 
ーー 石川鷹彦は、日本のアコースティック・ギター・プレイヤーの第一人者でレジェンドとも言えるスタジオ・ミュージシャンだ。「かぐや姫」はもちろん、「風」や吉田拓郎、イルカ、アリス、中島みゆき、長渕剛、松山千春 らのレコーディングやアレンジも担当している。
 
伊勢:最初、僕は、いわゆるギターテクニックには全然自信がなかったんです。そんな僕に、ギターの役割は「テクニカルな競演」だけじゃなくて、何より「歌に寄りそうこと」「メロディアスであること」「個性・表情を持つこと」が醍醐味であるってことを教えてくれて……。それが、だんだん心に沁みいってきて、のちの「ギタリスト 伊勢正三」としてひとり立ちできたんじゃないかと……、今になって思いますね。
 
伊勢:あと、後日談なんだけど……、ある時、いつものようにコンサートのリハーサルをしていたら、ふいに(吉田)拓郎さんからポンと肩を叩かれて、「お前さ、石川鷹彦みたいだよな」って言われて……、すごい嬉しかったの覚えてる(笑)。
 
ーー 最近、興味を持った音楽を聞いてみた。
 
伊勢:純烈の白川君のボーカルが好きです……(笑)。いや、もう、めちゃくちゃいいボーカリストですよね。もちろん、たとえば、玉置浩二君の歌とか聴くと、「うまいなーっ」ってもう溜息出るくらいうまいけど、白川さんの歌って……、なんて言うのかな……、ああいう声の人って、ちょっとありそうでいないじゃない……。すごい歌唱力で勝負ってわけじゃないんだけど……。
 
ーー 歌は、発声がいいとか、音程やリズムが正確だからいいってものでもないし、伝わるものでもない。
 
伊勢:そうなんでしょうね。耳にして気持ちいいか悪いか……、最終的には、そこが一番大切なんですよ。なんて、口では言っても難しいことだけどね。紆余曲折ありましたが、結局はそういうことなんでしょう。
 
ーー 伊勢正三、キャリア 50周年……、50年前とは、音楽の世界もいろんなことがずいぶん変わった。今の日本の音楽シーンの中で、どういうことを感じているのだろう?
 
伊勢:う〜ん……、なんて言ったらいいのかな……、もう、みんな普通に素人のお子さんがコンクールとか合唱とか、若者がライブハウスとかカラオケで歌っても、平気で転調とかバックビートが取れたりするのがすごいよね。ダンスやパフォーマンスも音楽と完全に一体化してまばゆいし、あと SNS の普及もあって、ミュージックは毎秒ごとに国境を越えているでしょ……。「音楽」というものの定義自体が、本当にめざましく進歩しているし、それは「新しい楽しさ」だと思うよ。
 
伊勢:ただね、少し寂しいよね……、昭和のギター少年としては。もう少しだけ「これぞ日本人っぽいオリジナリティ」っていうのがあったはずなんだけどな……とか、時々、思ってしまうよね。歌詞だけで考えても、「哀しい」は「I’m sad」じゃ足りない気がするし、「青春」は「youth」「early days」とかじゃ、なんだか違うよね……。いわゆるネオ・ミュージックの中に、いかに日本人ならではの「優しさ」「繊細さ」「秘めた想い」「儚い愛」「哀しさ」「切なさ」を忍ばせながら表現していくのか……、それが、これからのジャパニーズ・ミュージックが、世界をぐっと突き放す原動力になるのかもしれないね……。
 
伊勢:それで、今の若い人の音楽を聴いていると、自分が20歳になるかならないかの頃のことを想い出しますね……。どんなことかと言うとね、『なごり雪』にしても『22才の別れ』にしても、変な言い方かもしれないけど、自分が作ったって感覚じゃないんですよ。「出てこようとするものに、素直に向き合ったら出来た」っていう……。まあ、最近の音楽を聴いて思うこととも共通するんですけど、若い時しか出来ないことって、やっぱりあるなと。あの「瞬時」って言うか、徹夜も厭わないエネルギーって言うのはね……、もう絶対に勝てないよ、うん。
 
伊勢:あっ……、でも、僕も、何年か前にね、徹夜を厭わずに寝食忘れて没頭したなぁ……66歳で(笑)。その時に感じたのはね、「出ようとする歌に、素直に向き合った」っていう、あの懐かしい感覚……。音楽づくりに定年はないよね……。いろんな人にずいぶん褒めていただいたので、せっかくだから宣伝しちゃおうかな……。『冬の恋』『秋の葉の栞』『風の日の少年』『俺たちの詩』……、昭和のギター少年が50年分の喜怒哀楽を積もり積もらせた会心作『Re-born』……どうでしょう! 「大人の男」「友情のうねり」「愛と、苦しさと、慈しみ」、そして「かすかな恋のもつれ」若造には作れませぬぞ……(笑)。
 
伊勢:今回のクラウンの方の『伊勢正三の世界 〜PANAM レーベルの時代〜』は、「風」の名曲、ヒット曲が余すところなく入っている 2枚組だから、ぜひ聴いてもらいたいですね。「風」バージョンの『22才の別れ』、『海岸通』、『ささやかなこの人生』、『あいつ』……、どれも、久保やんがそばにいなければできなかった……、本当にそう思うよ。
 
ーー 「風」のメンバーだった 大久保一久 が、今回のリリース直前、2021年9月13日に亡くなった。大久保一久 が亡くなったとされる時間に、伊勢正三は、ちょうど「風」のビデオを見ていたという……。「風」は、1979年に活動を休止したが、解散したことはない。
 
伊勢:とにかく、スタッフがみんな元気で、今回のこの仕事を終えることができたし、満足を越える出来栄えの作品を全国のみなさんに届けることができたと思います。僕の歌手人生50年は、あらためて、みなさんのおかげだと思ってます。


(取材日:2021年9月3日 / 取材・文:西山 寧)



伊勢正三 コメント


<大久保一久さんへ、お別れの言葉に変えて>
 
ちょうどこのCDづくりを終えて、久保やんに発売の連絡をしようとしていたその矢先のこと…。偶然とはいえあまりに悲しい訃報が飛び込んできた。2021年9月12日、彼は眠るように、天国へと旅立ったという。
久保やんが僕を呼んでいたんだろうか。理由のわからない涙が、まだ止まらないよ…。
僕と久保やんはずっと一緒だった。1979年に体調不良で「風」としての活動休止は余儀なくされてしまったが、今でもなお、二人は解散したわけではない。久保やん、あの優しい笑顔で、天国から僕を見つめてくれよ。
ーー 伊勢正三




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