いろいろわかる… 丘みどり ロングインタビュー 第2弾! 最新シングル『明日へのメロディ』は、J-POP のヒットメーカーが作曲した、言葉が耳に残るポップス調の歌謡曲! 自身の思いから生まれた戦略的な曲 …「なんか悔しいなと思ったので…」さらに、4年連続出場を逃した紅白への想いとは…?

インタビューの最後に、読者プレゼントあり!

Oka Midori

丘 みどり

Single「 明日へのメロディ 」

★ 新曲は、SMAPのヒット曲を書いた J-POPのヒットメーカーが作曲!
★ エモーショナルな歌唱で、言葉が耳に残るポップス調の歌謡曲!
★ 発売初日、オリコン デイリー 総合チャート 1位 とヒット中!
★ 話題の三田村邦彦とのデュエット曲も収録!


★ 2017年「佐渡の夕笛」から「NHK 紅白歌合戦」3年連続出場!
★ 昨年、2020年にソロ歌手デビュー15周年!


「明日へのメロディ」ミュージックビデオ(フルサイズ)

丘みどり「明日へのメロディ」歌詞を見る!

丘みどり「雨のなごり坂」歌詞を見る!

丘みどり「あなたと、君と(w/三田村邦彦)」歌詞を見る!



タイアップ 情報

三田村邦彦&丘みどり「あなたと、君と」
テレビ大阪『おとな旅あるき旅』(毎週 土曜 18:30~19:00) エンディングテーマ

番組サイト



シングル リリース 情報


丘みどり 「明日へのメロディ」【プレミアム盤】
シングル CD + DVD
2021年3月17日発売
KIZM-677~8
¥1,700
KING RECORDS

<収録内容>
DISC 1 (CD)
1.明日へのメロディ(作詞:大柴広己、作曲:コモリタミノル、編曲:京田誠一)
2.雨のなごり坂 (作詞:森田いづみ、作曲:羽佐間健二、編曲:川村栄二)
3.明日へのメロディ (オリジナルカラオケ)
4.明日へのメロディ (一般用カラオケ半音下げ)
5.雨のなごり坂 (オリジナルカラオケ)
6.雨のなごり坂 (一般用カラオケ半音下げ)
DISC 2 (DVD)
1.明日へのメロディ ミュージックビデオ
2.特典映像(メイキング)


丘みどり 「明日へのメロディ」【Type-A】
シングル CD
2021年3月17日発売
KICM-31014
¥1,400
KING RECORDS

<収録内容>
1.明日へのメロディ(作詞:大柴広己、作曲:コモリタミノル、編曲:京田誠一)
2.雨のなごり坂 (作詞:森田いづみ、作曲:羽佐間健二、編曲:川村栄二)
3.明日へのメロディ (オリジナルカラオケ)
4.明日へのメロディ (一般用カラオケ半音下げ)
5.雨のなごり坂 (オリジナルカラオケ)
6.雨のなごり坂 (一般用カラオケ半音下げ)


丘みどり「明日へのメロディ」 / 三田村邦彦&丘みどり「あなたと、君と【Type-B】
シングル CD
2021年3月17日発売
KICM-31015
¥1,400
KING RECORDS

<収録内容>
1.明日へのメロディ(作詞:大柴広己、作曲:コモリタミノル、編曲:京田誠一)
2.あなたと、君と(三田村邦彦&丘みどり)(作詞:向井浩二、作曲:向井浩二、編曲:矢野立美)※
3.明日へのメロディ (オリジナルカラオケ)
4.あなたと、君と(オリジナルカラオケ)
5.あなたと、君と (女性用カラオケ)
6.あなたと、君と (男性用カラオケ)

※ テレビ大阪『おとな旅あるき旅』(毎週土曜、18:30~19:00 放送)エンディングテーマ



ブルーレイ / DVD リリース情報

丘みどり 「丘みどり 配信 LIVE 2020 -生誕祭・秋麗・雪華- 生誕祭・秋麗・雪華」
Blu-ray / DVD (全21曲収録 / 本編96分)
2021年5月26日発売
Blu-ray KIXM-456 ¥5,500
DVD KIBM-876 ¥5,000
KING RECORDS

<収録内容>
01.白山雪舞い ~アコースティック・バージョン~
02.佐渡の夕笛
03.鳰の湖
04.シルエット・ロマンス
05.ルージュ
06.別れの朝
07.難破船
08.北国、海岸線
09.別離の切符
10.能登は冬色
11.雪の砂時計
12.雪の華
13.サイレント・イヴ
14.恋人よ
15.冬の花
16.女の花吹雪
17.伊那のふる里
18.紙の鶴
19.何度も何度も~母への想い~
20.白山雪舞い
21.花の旅・夢の旅 


丘みどり キングレコード


丘みどり オフィシャルサイト

丘みどり 所属事務所 アービング


丘みどり YouTube

丘みどり オフィシャルブログ「みどりはみどり」


丘みどり 歌詞一覧

丘みどり 15周年 ロングインタビュー(2020年9月)MUSIC GUIDE



テレビ/ラジオ レギュラー番組

テレビ レギュラー番組「BSコンシェルジュ」MC(岡田結実と隔週)
NHK 総合 テレビ 毎週 火曜 午前11時05分
NHK BS1 毎週 火曜 午後2時(再放送)
NHK BSプレミアム 毎週 水曜 午前4時35分(再放送)

「BSコンシェルジュ」番組サイト


ラジオ レギュラー番組「丘みどりのそばにいて♡」
東海ラジオ
毎週 土曜 20:15~20:40 放送

東海ラジオ

東海ラジオ radiko




丘みどり ロング・インタビュー 第2弾


 丘みどりの歌には、その場を圧倒するチカラがある。その歌声が聴こえてくると、自然と耳が引き寄せられ、自然と丘みどりの世界に巻き込んでしまうような、圧力感と説得力がある。
 
 その抜群の歌声と歌唱力、歌っている時の鬼気迫る表情とは対照的に、普段は、いつも明るくニコニコしていて、謙虚で礼儀正しく、素直で丁寧。しかも、美人で、トークもテンポが良くハキハキしているから、今では、歌だけでなく、テレビのバラエティ番組などでも引っ張りだこだ。
 
 昨年、2020年には、歌手デビュー15周年迎えた丘みどりだが、売れ始めたのは、大阪での10年間を過ごしたのち、自らの決断で上京、所属事務所もレコード会社も一新してからだった。
 
 2016年にリリースした、キングレコード移籍 第1弾シングル『霧の川』は、初めて、オリコン「演歌・歌謡」週間 シングルチャートで 1位となった。丘みどりが「鬼だと思った」と話すマネージャーとの二人三脚で、移動中に「マスクが涙でベチャベチャになった」というくらい辛いキャンペーンで日本全国を何度も回った結果だった。
 
 そして、翌 2017年には、『佐渡の夕笛』のヒットで、大阪時代は夢にも思わなかった「NHK紅白歌合戦」に初出場。その後、『鳰の湖(におのうみ)』『紙の鶴』で、3年連続出場し、人気は一躍全国区となり、トップ・スターのひとりとなった。
 
 しかし、昨年末、2020年の「NHK紅白歌合戦」への 4年連続出場は叶わなかった。おそらく、私たちには想像もできないくらいの悔しい思いをしたと思うが、それを、いつまでも引きずることもなく、むしろ、それをプラスに変えて、これまで以上に力強く前に進んでいる。
 
 そして、新曲『明日(あす)へのメロディ』は、まさに、その新たな一歩を象徴するかのような歌だ。
 
 『明日へのメロディ』は、発売週に、オリコン「演歌・歌謡」週間 シングルチャートで 1位となっただけでなく、3月17日の発売初日に、なんと、J-POP なども含めた シングル 総合 デイリーチャートで 1位を獲得した。演歌・歌謡曲系の歌手が、この総合チャートで 1位となるのは異例のことだ。
 
 これまでの演歌ファンはもちろんのこと、新しいリスナーが増えたことで、この結果となった。
 
 『明日へのメロディ』は、そういう「もっと多くの人に歌声を伝えたい」「歌手・丘みどりを、さらに広く好きになってもらいたい」という本人の意思がきっかけで作られた、間口を広げるための戦略的な楽曲でもあり、それは、オリコンのシングル総合デイリー1位を取るなど、見事に成功している。
 
 上京後は、ずっと着物で演歌を歌っていたが、新曲は、SMAPの『らいおんハート』『SHAKE』『ダイナマイト』などの作曲でも知られるコモリタミノルが作曲を手がけたポップス調の歌謡曲。洋装で歌うのは、大阪時代、2014年のシングル『椅子 / 何度も何度も〜母への想い〜』以来となる。
 
 演歌からポップス調になったことで、丘みどりの歌唱も、これまでとは変わった。もともと持っている声の良さや、伸びやかな歌声に加え、より力強く、心の叫びのような、エモーショナルなフィーリングも感じる。キャッチーで耳に残るメロディに乗せた言葉はインパクトがあって、一度、聴くと、歌声が耳から離れない。
 
 絶望からの希望を歌った歌詞には、現在のコロナ禍に対するメッセージも入っているが、丘みどりが「私も負けないから、一緒に頑張りましょう」と多くの人の心に寄り添い、勇気付けるとともに、丘みどり自身のさらなる活躍を予見させるような歌にも聴こえる。


<もくじ>

1 自身の思いから生まれた戦略的な曲 〜「なんか悔しいなと思ったので…」〜
2 3曲の候補から選んだ『明日へのメロディ』 〜「素直に思えたことですかね…」〜
3 これまでとは全く違ったレコーディング 〜「何が違うのかがわからなくて…」〜
4 『雨のなごり坂』、三田村邦彦との『あなたと、君と』 〜「幸せな気持ちになりました…」〜
5 コロナ禍に行われた配信ライブ 〜「細かな表現で伝わる良さだったり…」〜
6 紅白への思い 〜「そういう気持ちに変えました…」〜


1 自身の思いから生まれた曲 〜「なんか悔しいなと思ったので…」〜
 
 最近、丘みどりを知った人にとっては、新曲『明日へのメロディ』は、ちょっと意外に感じただろうと思う。『佐渡の夕笛』『鳰の湖』『紙の鶴』『五島恋椿』『白山雪舞い』と、最近は、正統派の演歌を着物で歌っているイメージが一般的だからだ。
 
 新曲『明日へのメロディ』は、SMAP の『らいおんハート』『SHAKE』『ダイナマイト』などの作曲でも知られる J-POP のヒットメーカー、コモリタミノルが作曲を手がけたポップス調の歌謡曲で、洋装、真っ赤なワンピースで歌っている。
 
 しかし、自身のコンサートでは、ポップスのカバーも数多く歌っているし、そもそも、2005年、20歳の時に、ソロ歌手として股旅演歌風の『おけさ渡り鳥』でデビューした時は、ヘソ出しルックでミニスカートだった。その後も、昔からのファンには人気の大阪時代にリリースされた最後の曲『椅子』は、完全にポップス調のバラードで、洋装で歌っている。
 
 だから、『明日へのメロディ』は、新機軸で、チャレンジであるとも言えるが、丘みどり自身にとっては、バリエーションのひとつで、ある種の進化形のようなものではないだろうか。
 
 今回、発売初日に、オリコンの シングル 総合 デイリーチャートで、「DA PUMP」や「Kis-My-Ft2」「KAT-TUN」といったジャニーズ系のアイドル、森山直太朗や人気の声優などを抑え、1位を獲得した。オリコンの「演歌・歌謡」週間 シングルチャートで 1位を取ることはあっても、J-POP なども含めた シングル 総合 デイリーチャートで、演歌・歌謡曲系の歌手が 1位となるのは異例のこと。シングル 総合 週間 チャートでも 4位に入った。
 
 「総合デイリー1位は、初めてだったので嬉しかったですね。なんかこう……、やっぱり、コモリタミノル先生の曲が好きで聴いてくださってる方とか、そっちの広がりをすごい感じますね……、私は。"なんだこれ? 丘みどり? へぇ〜こんな歌ってんだ" みたいな。若い方というか、今まであまり演歌を聞いてなかった層というか……、はい。」
 
 王道の演歌ではなく、ポップス調の歌謡曲だったことで、これまでとは違ったリスナーからも支持された結果が、オリコン 1位という結果につながったのだろう。
 
 たしかに、イントロのミステリアスな「♪タン タン タン タン〜」から印象的だし、何より、スネア・ドラムの音が、これまでの丘みどりの楽曲では聴いたことのないようなポップスならではの音をしている。
 
 サビの「♪サラバイ ララバイ サラバイ 悲しい歌 ひびかせて」は、キャッチーなメロディで耳に残るし、そのあとの予想を裏切られる「♪ルルリララ 生きたいよ まだ終われないよ」のメロディも、さらにダメ押しのように、耳に残るポイントでもある。
 東海テレビの昼ドラのテーマ曲のようなイメージで、とにかく1回聞けば、どこかを覚えてしまう曲だから、これまでよりも、リスナーの間口が広がるのも当然だ。
 
 「嬉しいです〜。そうですね……、なんか新鮮な感じというか、私もなんかまだ慣れてない感じで。今回、スタンドマイクで歌うんですけど、そういうのにも慣れてないですし、今まで本当に4年間ぐらいずっとお着物でやってきたので、その……、自分の曲で、しかも演歌じゃない曲っていうのがすごく新鮮です。」
 
 「聴いてくださる方も、"なんか すごく耳に残る、好きだ" っていうふうに言っていただけたのはすごく嬉しくて、"演歌のファンの方には、今回は受け入れてもらえないかな?" っていうような気持ちも少しあったんですけど、受けてもらえたことが嬉しかったですね。」
 
 ポップス調ではあるが歌謡曲だから、これまでのファンにもそんな違和感はない。
 今回、マイクは手で持たず、ストレートスタンドにガイコツマイクで歌っている。振り付けも、『佐渡の夕笛』から担当していた業界では知らない人のいない大御所の振付師である花柳糸之から、アイドルやポップスの振り付けで有名な菊地ヒロユキに代わった。
 衣装、歌唱スタイル、振り付けなどは、もちろん、楽曲に合わせてのものだが、そもそも、今回の楽曲の方向性は、どういう経緯で決まったのだろうか?
 
 「去年、"さぁ来年はどうしようか?" ってなったときに、やっぱり、今まであんまり演歌を聴いてくれなかったような若い人たちの、ぶ厚い壁みたいなのをもうちょっとだけ薄くしてもいいんじゃないかなっていうのは思ってたので……。たとえば、バラエティ番組とか出演させていただいたときに、若い方がせっかく丘みどりっていう名前を知ってくださったけど、曲を聴いたら "演歌か〜" っていうので終わるっていうのが、なんか悔しいなと思ったので……。だから、そういう、ジャンルが何だっていうのを決めずに、歌えるものがあったらいいなっていう……。」
 
 「それで、"こんな感じの曲で" とか、"こういうふうな歌が歌いたいです" っていうのは、言わせてもらいました。」
 
 出来上がった CD を聴いた時も、まだ慣れない感じだったようだ。
 
 「なんか、こういう歌を私が歌う日が来るっていうのは、新鮮だなって思いました(笑)。いや、本当に、"何か不思議な感じだな" みたいなのは、ありましたね。」

2 候補の3曲から選んだ『明日へのメロディ』 〜「素直に思えたことですかね…」〜
 
 『明日へのメロディ』は、メロディから作られた、いわゆる「曲先」の曲だ。作曲したコモリタミノルも、人気の演歌歌手に曲を書くということで、デモテープは、自身で歌ったものではなく、仮歌をわざわざ女性の声で録音してきた。歌詞は、まだないから、すべて「♪ラララ」で歌われたものだ。
 
 「あの……、3曲も作っていただいて、"好きなのどうぞ" みたいな感じでいただいたんですけど、やっぱりこの曲のサビの部分が、まだ歌詞が付いていないにも関わらず、このメロディーが耳から離れなかったところが……。あの……、歌詞がないのに、なんかすごいミステリアスな感じがして、"耳に残る、この何か不思議な世界観に歌詞が乗ったらどんな歌になるんだろう" っていう、すごく興味を持ったことと、何か "この歌を歌いたい" って素直に思えたことですかね。」
 
 ほかの候補曲 2曲も、いずれもマイナー調の曲ではあったが、それぞれ、この『明日へのメロディ』とは、大きくテンポが違っていたようだ。
 
 「ちなみに、マネージャーの中村さんは、別の曲をイイって言ってて……(笑)。」
 
 一番身近なマネージャーにそんなことを言われたら、迷ってしまう。
 
 「そうなんです、そうなんです。本当に違うのを言ってたんで、私も、なんかひとりで決めるのもあれだなと思って……。なので、うちの父に聞いたりとか……(笑)。本当に LINE で 音源を送って、"パパはどれがいいと思う?" みたいな(笑)。」
 
 「で、お父さんは一緒だったんです。だから、"パパが言うなら間違いない" みたいな……(笑)。」
 
 「でも、中村さんが言ってた曲もすごくいい曲だったので、"あ〜迷うな〜" と思ってて……。で、"一応、丘家ではこういうことになりましたから、あとは、そちらでよろしくお願いします" みたいな感じでお返しました(笑)。」
 
 父親とは、とても仲が良い。自身のリサイタルで歌うカバー曲の中には、父のリクエストで入っている曲もあるくらいだ。ちなみに、歌手を目指していた丘みどりをずっと応援して、支えてくれていた母親は、2006年に、47歳の若さで他界している。
 
 今回採用されなかった曲も、最も近くにいるマネージャーの中村氏が推すくらいだから、きっと良い曲なのだろう。だから、2曲とも、どこかのタイミングで出してほしい。
 
 「そうですね。出したいなと思ってます。はい。」
 
 コモリタミノルが作った 3曲の候補曲から 1曲が決まり、コモリタミノルが、シンガーソングライターの大柴広己に作詞を依頼し、『明日へのメロディ』となった。
 
 「なんかこう……、想像以上にブラックな歌詞というか……。やっぱり、"未曾有の街で" とか" 奈落の底で" とか "屍(しかばね)" とか、あんまりそういう言葉を歌で表現することが今までなかったので……。でも、私はすごく好きです。なんか、こういう世界観というか、この2番の歌詞とかは、今、ネットで誹謗中傷されたりすることとかが問題になっていて、そういうのも入ってたりとかするので、なんか今だからこそ、この歌を歌うことに意味があるんじゃないかなって思えましたね。」
 
 たしかに、絶望からの希望を歌ってるこの歌詞は、希望を歌っているのに、すごく重い。
 
 「そうですね。ひたすら前向きで明るくて "頑張っていこうよ!" っていうのもひとつの励ます歌だったりすると思うんですけど、なんか、あえてこういうダークな言葉というか、ダークな世界観で、"私もそういうことで、みんなもがいてるよね、大変だよね" って。でも、それに負けずに……、めちゃくちゃ頑張らなくていいけど、自分にだけは負けずに一歩踏み出せたらそれでいいんじゃないかなっていう……。なんか、大げさな歌じゃなくって、逆に、そういうふうにしたかったっていうのは、先生たちがおっしゃってて、私もそれはすごく共感しました。」
 
 聴けば聴くほど好きになる、不思議な魅力を持った歌詞だ。現在のコロナ禍に対するメッセージも入っている。
 
 そして、『明日へのメロディ』のミュージックビデオも、楽曲のイメージそのままに、昭和の昼ドラのようなイメージで作られている。監督は、丘みどりのリサイタルの構成と演出を担当し、『紙の鶴』や『五島恋椿』のミュージックビデオも撮っている長田剛氏だけに、これまでの丘みどりのイメージを踏まえつつ、今回の楽曲とチャレンジを的確に表現している。
 
 衣装は、丘みどりのお気に入りのブランド、イタリアのデザイナーが手がける「N°21 (ヌメロ ヴェントゥーノ)」の黒と赤の色違いのワンピースで、黒は絶望、赤は希望を表している。室内のシーンでは、幻想的で色を強く意識させる美しい映像とともに、丘みどりの表情が印象的だ。
 
 1日で撮るために、朝は 5時起きで、撮影は、早朝から深夜までかかった。外撮りのシーンでは、真っ赤なポルシェを自ら運転したり、階段を駆け上がったりもしている。
 
 「はい、16回 駆け上がりました(笑)。監督が鬼のように "もう1回! もう1回!" って……(笑)。しかも、あれが朝イチの撮影でした(笑)。」
 
 何回もやり直しになったこのシーンは、プレミアム盤 付属の DVD でメイキングを見ることができるが、疲れた顔も見せず、何度も、全力で階段を駆け上がる一生懸命な姿が印象的だ。

3 これまでとは全く違ったレコーディング 〜「何が違うのかがわからなくて…」〜
 
 『明日へのメロディ』では、たとえば、サビの「♪ルルリララ 生きたいよ」など声を張るところも、これまでの王道演歌を歌う時の声の出し方とは違って聴こえる。
 
 「はい、そうですね。なんか、"あんまり綺麗に歌わないでくれ" っていうのは、すごくコモリタ先生に言われました。あくまでも、普段は人に見せない苦しみだったり、怒りだったりを叫ぶ感じで歌ってほしいから、"本当に何か悔しいことあったときに、そんなに綺麗に声出します?" みたいなことを、最初に歌ったときに言われて、"あ〜 そうですね" って……。"悔しいこととか、みどりちゃんの人生の中であったでしょ" って、"どうにもならないこととか、そういうのをこのブースの中で、ひとりきりなんだから、思いっきり、もう音を外しても全然いいから、ぶつけてほしい" っていうのを言われて、何度も録り直しました。」
 
 歌には、その「人となり」がよく現れる。その歌手のそれまで生きてきた人生そのものとも言える。今でこそ、音楽番組はもとより、バラエティ番組などでも引っ張りだこの丘みどりだが、デビューして最初の約10年間は、売れない、つらい時期もあった。移動中の新幹線の中で「マスクが涙でベチャベチャになった」というくらい、辛いキャンペーンも経験したことがある。
 悔しい思いはたくさんしてきている。コモリタミノルは、丘みどりのそういう部分も引き出したかったのだろう。
 結果的に、歌録りのレコーディングは、2日間におよんだ。1日目の最後に録ったテイクが良かったため、もう1日やってみようということになったのだ。
 
 「はい、1日目は、めちゃくちゃ録りましたね。普段はすごい早いんですよ。3回くらい歌って終わりですね。はい、3回くらい歌って "もう大丈夫なので終わりです" みたいな感じなんですけど、今回は、もう何テイクかな……、数えきれないくらい……。で、わりと演歌だと、"ここだけ歌ってください" とかあるんですけど、やっぱりこれは物語だからっていうので、先生もこだわりがあって、たとえば、一番後ろのところだけを歌い直すとかはなく、もう全部フルで、何回も何回も、もう何時間も、ずっと歌い続けました。」
 
 歌のレコーディングする場合、1曲を通して歌って録音したあとに、部分的に歌って直したりすることは普通だ。「Aメロだけ」とか「サビだけ」とかブロックごとに録ることもあるし、パンチインと言って、ほんのワンフレーズだけを歌い直して差し替えることもある。
 しかし、部分的にこまかくツギハギで直していくと、どんどんキレイな歌にはなっていくが、流れが悪くなったり、バランスがおかしくなることで、結局、伝わらない歌になってしまうこともある。
 たとえば、キレイに歌われたプロの歌よりも、音は外れたりしていてもアマチュアの歌の方が心に響くこともあるし、何の打算もなくチカラいっぱい歌う子供の歌に感動することもある。
 だから、今回、部分的に直すことはせず、何度も何度も通して歌った。
 
 「めちゃくちゃヘロヘロになりましたね。この歌、結構、張るところが多いので。でも、あの……、レコーディングがいくら長くなっても、最後まで声が続くっていうのは、やっぱり強みかなっていうのはありますね。」
 
 もともと、丘みどりは、レコーディング前に、その歌をあまり練習しない。歌録りの前に歌いこんでしまうと、その歌の形が自分流に出来上がってしまい、実際のレコーディングの時に、作家やディレクターのディレクションに対応できなくなるからだ。
 そういう意味では、今回は、その究極で、2日間かけて、レコーディングスタジオで、これまでになく何度も何度も歌うことで作り上げた歌だ。
 これまで、丘みどりの曲を書いた、弦哲也や花岡優平らとは、レコーディングの時に言われることも全く違った。
 
 「そうですね〜。やっぱり、"もっと!もっと!" みたいな……、なんか、そういうふうに言われることですかね。」
 
 とにかく、キレイに形を作るよりも、コモリタミノルは、丘みどりの感情を引き出そうとしたのだろう。よりエモーショナルな歌にしようという意図だった。しかし、あまりに違う、そのやり方に、最初は戸惑った。
 
 「たとえば、弦先生だっら、音が違うかったら、"もうちょっと、こういうふうに歌ってみて" みたいに、具体的にコブシの入れ方だったりとかを言ってくださるんですけど、コモリタ先生は、"違うんだな〜、もっとその内側の部分出してほしいんだな〜" みたいな感情的な話だったので、自分であってるのか、何が違うのかもわからなくて、歌い続けていくうちに、何が何だかわからなくなるみたいな……。」
 
 「で、もう最後の方とかは投げやりで、"なんか、もう、よくわかんないっ!" みたいな感じで歌ったら、"そうだよ!それだよ!" みたいな感じになって……。それぐらい、自分を捨ててさらけ出さないと伝わらないこともあるんだな、みたいなことも知りましたね。」
 
 もちろん、これまでだって、当然、歌にどう感情を乗せるのかということは考えていたと思う。しかし、無意識に「キレイな声の響きで、音もリズムはずさないように」ということが最優先になっていたのだろう。
 
 「そうです、そうです、はい。」
 
 これまで染み付いていた、無意識に「正確にキレイに歌わなくては……」というところからの解放だった。それが、1日目の最後のテイクでわかった。
 
 「歌ってて、最初は、何が違うのか本当にわからなかったんですけど、1日目に、"じゃ、もう今日はここで終わります。最後のテイクがよかったんで、最後のを使います" って言われたんですけど、"ちなみに一発目に歌ったやつと、最後に歌ったやつはこれだけ差があるんですよ" っていうのを、コモリタ先生が聴かせてくださったんです。その時に初めて "そういうことなんだ!" ってわかったんです。自分では、吐き出してるつもりでも、耳だけで聴くと、全然伝わってなかったんだなっていうのが、めっちゃくちゃ勉強になりましたね。コンサートとかだと、手とか表情とかで表現できるけど、やっぱり歌だけで表現するってことが、それがこんなに難しいんだなっていうのを、あらためて感じました。」
 
 感情を込めて歌えば良いという単純な話ではない。歌い手の感情の入り過ぎた歌は、聴き手の感情が入る余地がなくなり、広く受け入れられる歌にはならない。今回、新機軸とも言えるチャレンジングな楽曲が、丘みどりの歌も変えた。
 
 「そうですね、はい。なんか……、思いっきり、こう、歌っていいんだというか、なんか、"ああしなきゃ、こうしなきゃ" って無意識に考えてたことを、もっともっと とっぱらって、"思いのまま歌っていいんだ" みたいなのを知れたので、すごく勉強になりましたね。」

4 『雨のなごり坂』、三田村邦彦との『あなたと、君と』 〜「幸せな気持ちになりました…」〜
 
 今回のシングル『明日へのメロディ』Type-A のカップリングとして収録されている『雨のなごり坂』も歌謡ポップスだが、メロディも歌詞も、これまでの楽曲に近い雰囲気がある。
 作曲は、松田聖子『瑠璃色の地球』(平井夏美 名義)や、井上陽水『少年時代』(平井夏美 名義、井上陽水と共作)などを作曲した羽佐間健二。作詞は、丘みどりのアルバム『女ごころ』に収録されている『薩摩半島』を書いた森田いづみによるもの。
 
 『雨のなごり坂』も、これまでの歌の感じとはちょっと違って聴こえる。Aメロは、やさしく歌い、丘みどりの声の良さが出ている。その後、サビでは張っていくのかと思えば、サビになってもわりと抑え気味で、抑制的に歌われていて、サビの最後の「♪雨のなごり坂〜」のところで、初めてパワーを一気に解放する感じだ。
 
 「まさに、そうなんです。ディレクターさんから、声をできるだけ抑えて歌ってくれって言われたんです。自分的には、今まで、ウワ〜って出すのが多かったので、"これでいいんですか?" っていうような、なんか不完全燃焼みたいな……。多分、先生(羽佐間健二)からも、そういうふうに言われてたと思うんですけど。とにかく、ぐっと抑えて歌ってほしいというのを言われて。」
 
 しかし、その抑えた感じが、実に絶妙でいい。言葉が伝わってくる。
 
 「あ〜、嬉しいです〜、そう言っていただけて。」
 
 サビの最後の「♪雨のなごり坂〜」は、かなり高い音域だが、毎回、ちょっとずつ違うコブシの感じも耳に残っていい。
 
 「めっちゃくちゃ高いです。そこは、"裏声でもいいよ" って言われたんですけど、ギリギリ出るので、"チャレンジします" って言って……。」
 
 そして、シングル『明日へのメロディ』Type-B のカップリング曲『あなたと、君と』は、三田村邦彦が出演するテレビ大阪の番組『おとな旅あるき旅』(毎週 土曜 18:30〜)のエンディングテーマ曲で、三田村邦彦からオファーがあったデュエット曲。ジャケット写真からもわかるように、Type-B は、両A面のようになっている。
 メジャー調で、ゆったりしたミディアムテンポの爽やかな歌で、やさしく伸びやかで、透明感のある 丘みどりの声の良さが引き立つ歌だ。とくに、サビの「♪あなたと〜」の声が、クリアなまっすぐな響きで、とても心地よく聴こえる。歌い手が独りよがりに「どうだ!」と聴かせる声ではなく、ちゃんと聴き手が心地よく感じるように歌われている。
 
「うれしいです〜。なんか、声をまっすぐ出すっていうのは、レッスンでもすごくこだわっていて、もちろん細かなテクニックとかも大事なんですけど、音をきっちり捉えて真っ直ぐ出すっていうのは、すごく練習しています。」
 
 デュエット曲では、スケジュールの都合などで、デュエットする二人が別々の日に録ることもあるが、今回は、一緒に歌って録ることができた。
 
 「デュエットって、やっぱ相性ってすごいあると思うんです。私もテレビとかで初めてお会いする歌手の方だったりとかとデュエットすることもあるんですけど、"相性合わないな〜" っていう人も、正直たくさんいます。でも、三田村さんは、すごく相性が良かったので、歌ってて単純にすっごい心地よかったです。離れたブースで、"せーの" で一緒に歌ったんですけど、すっごい気持ち良くて、幸せな気持ちになりました。」
 
 三田村邦彦の歌は、嫌味がなく、とても素直でいい。だから言葉も伝わってくる。
 
 「そうですね、人柄がそのまま出てる感じですね。」
 
 昨年、テレビの歌番組で、いしだあゆみ の『港・坂道・異人館』(作詞:喜多條忠、作曲:大野克夫)を丘みどりがカバーして歌ったことがある。その歌がすごく良かったのだが、今回の『あなたと、君と』も、
同じメジャー調で、心洗われるようなさわやかな感じがよく似ている。やさしい感じの声の響きも似ているし、歌声から景色が見えてくる。
 
 「あ〜、うれしいです。『港・坂道・異人館』いい歌ですよね〜。私も、歌うまで知らなかったんですけど、すごい歌だなと思って。歌ってても、すごい爽やかな気持ちになりますよね(笑)。なんか、青空のもとで歌ってる感じの気持ちになります。」

5 コロナ禍に行われた配信ライブ 〜「細かな表現で伝わる良さだったり…」〜
 
 昨年、2020年、新型コロナウィルスの影響で、数多くのコンサートが中止となる中、丘みどりは、無観客 有料 配信ライブを行って話題を呼んだ。
 36歳となった自身の誕生日、7月26日には『丘みどり バースデー 生配信ライブ 〜演魅スペシャル』、9月20日には『丘みどり 配信 LIVE 2020 Vol.2 〜秋麗(あきうらら)〜』、そして、11月18日には『丘みどり 2020 配信 LIVE Vol.3 〜雪華(せっか)〜』と、計3回行われた。
 
 この 3回の無観客ライブの中から、選りすぐりの場面を集めたライブ映像作品『丘みどり 配信LIVE2020 -生誕祭・秋麗・雪華-』が Blu-ray と DVD で5月26日に発売となる。
 これまでの自身のリサイタルは、ただ歌を歌うだけのコンサートではなく、「演じて魅せる」ということをコンセプトにしていて、『演魅(えんび)』と名付けられている。
 
 「やっぱり、配信ライブはお客さんがいないので……。でも、たとえば、顔の表情だったりとか、目で表情を作るとか、演技ひとつにしても、そういうことをカメラでアップで抜いてもらえるので、演技がしやすかったというか、世界観を作りやすかったっていうのはあります。ステージだと、大げさな動きをしないと伝わらないことも、小さな動きとか、細かな表現で伝わる良さだったりとかもあるので、はい。」
 
 コロナ禍になる前のリサイタル『演魅』では、時には目に涙を浮かべ、狂気を感じるくらい入り込んで演じながら歌う姿は、まるで女優のようだ。リサイタルで、ほぼ毎回歌われる中島みゆきのカバー『化粧』は、鏡に向かって歌う演出が見事で、聴きごたえ、見応えがあるし、『幽玄組曲』と題されたコーナーでは、ストーリー仕立てで、数曲のカバーを演じながら歌うという、まさに『演魅』の真骨頂だ。
 
 毎回、カバー曲も、演歌や、昭和流行歌はもちろん、70年代〜80年代のアイドル歌謡曲、フォーク、ニューミュージック、ポップスにロックまで、実に様々な楽曲が選曲されている。
 
 「そうですね、演出の長田さんが候補曲をわ〜っと出してくださるので、その中から、歌えそうなものだったり、相談しながら選曲しています。」
 
 5月26日に発売となるライブ映像作品には、『佐渡の夕笛』『鳰の湖』『伊那のふる里』『紙の鶴』『白山雪舞い』などの代表曲はもちろん、大阪時代のシングル『北国、海岸線』や人気の『何度も何度も〜母への想い〜』、さらに、珍しいシングルのカップリング曲もたくさん入っている。さらに、カバーも、『シルエット・ロマンス』『別れの朝』『サイレント・イヴ』『恋人よ』『難破船』『雪の華』と、これまで、3作品リリースされている『演魅』のリサイタル映像作品の収録曲とは違っている。
 
 「やっぱり配信ライブならではの構成の方がいいなと思って。この配信ライブでも、たとえば『幽玄組曲』とかもしたんですけど、今回は、あえてそっちじゃなくって、配信ライブで新しく歌った歌を中心に入れてます。」
 
 また、この春からは、NHK総合テレビ『BSコンシェルジュ』のレギュラーMCを、岡田結実と週替わりで務めている。大阪時代の2010年〜2015年『演歌百撰』(BS11)のアシスタントをしていたことはあるが、MCとしては初レギュラーだ。
 
 「そうですね、お話が好きなんで……。でも、今までこの何年間は、そういう番組に出演するときって、自分が聞いてもらう立場で、何を自由に喋っても、司会の方が最後まとめてくださるみたいな環境で育ったので、やっぱ、こんなに大変ななんだな〜って思いました。」
 
 これまで、バラエティやトーク番組には、数えきれないくらい数多く出演してきた丘みどりだが、今回は、全く逆の立場になって、ゲストを引き立てなければならない。
 
 「『演歌百撰』の時はアシスタントで、もう隣で座って曲紹介するだけみたいな感じでしたけど、MCは、すごく難しくて……。でも、すごく勉強になったので、今度、私がまたゲスト側で出るときに、もっとこういうふうに喋らないと司会の方に迷惑だなとか(笑)。逆の立場を知ったからわかること……みたいな。」
 
 もともと、トークのテンポもよく話もうまいが、今回、逆の立場を知ったことで、今度は、自分がどういう風にアピールしたらより効果的なのかもわかった。
 
 そして、番組MCに加えて、役者としてのオファーもいくつかあったりするようだ。実際、2019年には、星野源が主演の映画『引っ越し大名』に特別出演している。女優としての丘みどりも見てみたい。
 
 「はい、やってみたいって気はあります。そうですねぇ……、なんか、丘みどりの感じからは一切想像できないような真逆の役とかやりたいです。たとえば、ものすごい怖い女の人とか(笑)、めちゃくちゃドロドロしてる話の意地悪な役とか……(笑)、そういうの好きなんです……私(笑)。」
 
 昼ドラで話題となった小沢真珠みたいな感じだろうか……。さらに、以前は、志村けんのコント番組で、頭から水をかぶったりもしていた。
 
 「好きなんです〜。最初は、お水をかぶる予定はなくて、志村さんに初めてお会いした打ち合わせの時に、"私、水かぶったり、パイ投げられたりとか、突き落とされたりとか、なんかそういうのをしてもらいたいんです!" っていうお願いをしたんです(笑)。そしたら、"じゃあ、まずは、タライの水かぶりぐらいからかな〜" なんて言いながら、徐々に水の量を増やしてもらったりとかしてやってもらいましたね(笑)。」
 
 丘みどりが歌っていると、突然、タライの水が落ちてきてズブ濡れになるという、お決まりのコントだが、すごく楽しそうな表情でやっていた。
 
 「そうなんですよ〜。イヤがらなきゃいけないのに、楽しすぎて(笑)、"やったぁ!" みたいな感じで(笑)。」
 
 水をかぶる前、歌っている時から、すでにノリノリで楽しそうだ。いつも歌っている時とは全く違う。
 
 「あははは……(笑)。もう、ホントに、志村さんのコントはリハーサルもないですし、読み合わせもなくって、何もない状態で、"はい、じゃあ本番行きますよ〜" って感じで、いつ、どう降ってくるかもわからないし、表情とか、間とかも何も教えてもらえないので、何かもうドッキドキしながらも、"やりきるしかない" みたいな、腹をくくってやってました(笑)。志村さんとは、もっともっと一緒にお仕事したかったな〜って思いがすごくあります。」
 
 そのうち、「丘みどり・座長公演」で、コントのコーナーも見たい。
 
 「あははは……、そうですね、ステージでコントとかは、1回してみたいですね(笑)。」

6 紅白への思い 〜「そういう気持ちに変えました…」〜
 
 2017年、『佐渡の夕笛』での初出場から、3年連続で「NHK紅白歌合戦」に出場していたが、昨年末、2020年の「NHK紅白歌合戦」への 4年連続出場は叶わなかった。想像もできないくらいの悔しい思いをしたと思う。
 
 「そうですね、もちろん悔しかったんですけど……、でも、第1位は、"あ〜、みんな、ごめんなさい!" みたいな……。それが第1位で、第2位が "悔しい" ですかね。なんか、その順番で来た感じですかね。」
 
 「自分は、その当日、やっぱりファンの方よりも早く結果を聞いてるので、"うわっ……" って思った気持ちはあったんですけど、それまで、 "どっちなんだろう? どっちなんだろう?" っていうのが……、1ヶ月くらいホント寝れなくって、蕁麻疹とかも出たりして、すごいストレスだったんで、結果がわかったことで眠れたってことがあったくらいで……。」
 
 歌手にとっては、まわりから「今年の紅白は……」と言われることが大きなプレッシャーになる。相手が決めることなので、自分でどうこうできることでもないため、余計に辛い。
 結果を知ってから、その悔しい気持ちをどう処理したのだろうか?
 
 「もちろん、1年を通して紅白を目指して、そこを 1年のゴールとして頑張るっていうのが当たり前になってた数年間だったんですけど……、なんか、そうじゃなくっても、"丘みどりは、ちゃんと歌が歌えるし、いい歌を歌うぞ、っていうところを見せられるようにしなきゃ" っていう方に……、なんか、逆に、"悔しいからこそ、ちゃんとやってやるぞ!" みたいな……、そういう気持ちに変えました。」
 
 実は、4年連続出場が叶わなかったという結果を、丘みどりは、意外な形で知った。
 
 「"噂によると、なんか今日わかるらしい……" みたいな日に、レコード会社に電話かかってきたら、まず中村さん(マネージャー)に連絡が来るっていうことで、"どうなんだろう? どうなんだろう?" って楽屋で待ってたら、中村さんが泣きながら入ってきたんですよ(笑)。」
 
 マネージャーの中村氏は、大阪時代は売れていなかった丘みどりが上京し、所属事務所とレコード会社を一新して再スタートした最初からずっと担当している。
 
 2016年にリリースした、キングレコード移籍 第1弾シングル『霧の川』は、丘みどりが「鬼だと思った」と話すマネージャー中村氏との二人三脚で、移動中の新幹線の中で「マスクが涙でベチャベチャになった」というくらい辛いキャンペーンで日本全国を何度も回った結果、初めて、オリコン「演歌・歌謡」週間 シングルチャートで 1位となった。
 
 丘みどりの前は、大御所のアーティストしか担当してこなかった中村氏だったが、「鬼のキャンペーンを組み、それまで10年間売れていなかった丘みどりを、たった1年半で紅白に出場する歌手にまで育てた極めて優秀な人だ。
 
 「だって、もう、中村さんが泣きながら、"今年の……(泣)紅白なんですけど……(泣)" って、その状態の声で言われたら "ああ、ダメだったんだな" って。言葉の前に、中村さんの涙で知るっていう……あははは(笑)。"なんでだよ! 先に泣くな!" みたいな(笑)。そこで、なんかちょっと涙がとまりました……あははは(笑)。」
 
 実にいい人だ。普通のマネージャーなら、冷静に事務的に伝え、「今年はダメだったけど、来年に向けて、また今日から頑張ろう」といったようなことを話すのではないだろうか。
 だが、一緒になって、いや、むしろ先に大泣きしてしまっているというのは、普段から、担当歌手である丘みどりと同じ気持ちで仕事をしているということだ。一緒に戦う戦友のような感じなのだろうか。いずれにしろ、歌手と同じような気持ちになれるマネージャーだから、信頼されているのだろう。
 しかし、その「とっぽい」見た目からは、それほどよく泣くとは思えない。人は見かけによらない。
 
 「中村さんは、ホントに "喜怒哀楽オバケ" で、めっちゃくっちゃ泣くんですよ。だから、感情をいつも、なんか奪われるんですよね(笑)。コンサートとかでも、すごく上手に歌えた時とか……。」
 
 「たとえば、初めての紅白のときとか、すごい緊張してて、でも、ステージ上では泣いちゃダメだっていうのを、よく徳光さんに言われてるので、ステージ袖に入ってから、思いっきりな泣きたいなって思ってたんです。で、"よっしゃ!歌えた!" ってステージの袖に入ると、"よかったね〜〜(泣)" って中村さんがもう先に泣いてるんですよ(笑)。先に泣かれると……、やっぱ、大の大人が、オジサンが泣いてると、"あ〜 すごい泣いてるね……" って冷静になるんですよね(笑)。」
 
 「私も、すごい喜怒哀楽が熱い感じのタイプなんですけど、中村さんは、それ以上なんです。なんか、すごい私がクールな感じで、"まあ、まあ、まあ……そんなに泣かずにさぁ……" みたいな感じになって楽屋に帰るっていう……(笑)。」
 
 この関係はおもしろい。中村マネージャーが泣いているのを見て、それまで我慢していた涙が出るのではなく、逆に冷めてしまい、むしろ、なだめる側になる。どっちが歌手で、どっちがマネージャーなのかわからないが、いいコンビであることは間違いない。
 
 「そうなんですよ。もう逆に冷めちゃう。すごい冷めちゃって、私も喜怒哀楽が激しいのに、"取られたな、この感じ" って思って。先越されるとやっぱりね、すごいクールに、どんどんクールになってきてる自分に気づく……みたいな……、あははは(笑)。」

 昨年からのコロナの影響は、まだ続いている。コンサート、キャンペーン、イベントなどは激減したままだ。
 
 「そうですね……。やっぱり、それまでは、毎日、歌ってましたし……、3日に1回は少なくともステージで歌ってたので、それが一切なくなったっていうのは、みんなそうだと思うんですけど、自分だけじゃないんですけど、やっぱりものすごい悔しかったです。去年は、15周年っていうのもあったので、はい、悔しい思いがいっぱいありましたね。
 
 昨年、2020年は、ソロ歌手としてデビューして15周年。10月7日には、15周年記念の初となるベストアルバム『丘みどり 15周年ベストアルバム』が発売されたが、デビュー15周年記念のリサイタルなど、たくさん予定されていたコンサートが全てなくなった。
 
 「だから、今年、必ずやろうと思ってるのが、15周年記念リサイタルですね。去年できなかったので、今年中に必ずするっていうことは、ひとつ決めています。それと、もっともっと歌いたい、ステージに立ちたいなって思いは常にあります。」
 
 「あとは、もう本当に、いろんな枠にとらわれずに、いろんなことにチャレンジしていく姿勢を忘れずに活動したということですね。たとえば……、何だろうなあ……、う〜ん……、バラエティ番組とかもそうですし、いろんなこと……、映画だったりとか、いろんなことにチャレンジしたいなって思います。」
 
 5月4日の「みどりの日」には、ファンクラブ配信イベントで、ファンに結婚と妊娠を報告し、自身の公式サイトでもコメントを発表した。今後は体調を見ながら、仕事を続けるとのことなので、まさか引退するとは思っていなかったが、ちょっと安心した。

(取材日:2021年4月12日 / 取材・文:西山 寧)


丘みどりのヒストリーをもっと知りたい方は、コチラ↓をご覧ください。

『丘みどり 15周年ベストアルバム』ロング・インタビュー(2020年9月)MUSIC GUIDE




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