岡田奈々「青春の坂道」
岡田奈々「青春の坂道」(3:40) Key=C B面「恋はかくれんぼ」
原案:中司愛子、作詞:松本隆、作曲:森田公一、編曲:瀬尾一三
1976年(昭和51年)3月10日発売 EP盤 7インチ・シングルレコード (45rpm、ステレオ)
NA-32 ¥500- NAV RECORDS / キャニオン・レコード
日本テレビ系テレビドラマ「俺たちの旅(第22話)」挿入歌
松竹映画「青春の構図」挿入歌
1974年、岐阜市の高校1年在学時に柳ヶ瀬でスカウトされ、同年、オーディション番組『あなたをスターに!』(テレビ朝日系)で第2回チャンピオンとなり、翌1975年5月10日、16歳の時、シングル『ひとりごと』でNAVレコードより歌手デビューした岡田奈々の4枚目のシングル。当時、出演していた人気テレビドラマ『俺たちの朝』の挿入歌となったこともあり、オリコン最高位23位、売り上げ10万枚を超えるヒットとなった。
ポッキーの初代CMガールやドラマ出演など、正統派アイドルとして活躍した後、20歳となった1979年以降は、女優業を中心に映画やドラマで活躍。
2019年には、デビュー45周年記念として、39年ぶりのレコーディングを行い、33年ぶりの新曲『坂の途中で』(作詞」三浦徳子、作曲:都志見隆、編曲:船山基紀)を発表。変わらない歌声を披露した。
人の名前がなかなか思い出せなかったり、「あれっ? 今なにをしようと思ってたんだっけ?」となるコトが、最近、とくに増えました…。ずいぶん前ですが、アルツハイマー病を予防する食事法「マインド食」なるものが、ガッテンで紹介されていたので、やってみようかと思っています…。
「自分と何か?」と問われれば、その答えは「記憶」です。自分を自分たらしめているのは、そのヒト固有の記憶で、「自分自身の記憶」が「自分そのもの」なのです。
しかし、ワタシたちは、なんでもかんでも覚えているワケではありません。細かいコトまで完璧に覚えているコトがある一方、簡単に忘れてしまっているコトもあります。記憶というのは、選択的に働いているようです。
夏目漱石にも影響を与えたと言われている、19世紀の米国の哲学者であり心理学者でもあるウィリアム・ジェイムズによると、「全ての物事を記憶していたとしたら、何も覚えていないのと同じくらいに気分が悪くなるだろう」と言っています。う〜ん、たしかに、そうかも…。
記憶は、「経験」と「それに伴う感情」と置き換えることもできます。ワタシたちの記憶の中には、いい思いをした経験もあれば、思い出すとツラくなるイヤな感情もあります。中には、いわゆるPTSDのように、過去の記憶に悩まされているヒトもいるかと思います。
ですが、一般的には、時が経つに連れて、イヤな記憶は薄れ、いい思い出ばかりが残ってゆくようにも感じます。心理学者によると、人間の脳は、一度覚えたものを忘れ、もう一度それを思い出した時に、記憶がより深く刻み込まれるようにできているらしいです。
つまり、何度も思い出せば思い出すほど、その記憶は深く刻まれ、さらに、思い出すたびに、微妙に変化しながら脳に刻み込まれるのだそうです。
誰でも、イヤなコトは思い出したくないですし、楽しかった思い出は、何度も反芻したくなるものです。だから、思い出は美化されてゆくのでしょう…。
今や遥か彼方の記憶となった青春…、広辞苑には「年の若い時代。人生の春にたとえられる時期」とあります。
昨年、2019年に発売された千昌夫の最新曲『人生に乾杯』(作詞:いではく)では、「オジンと言われても いま 青春してる…」と歌われています。70歳を超えても青春…、う〜ん、勇気づけられます…。
一方、1977年に発売されたアリスのシングル『さらば青春の時』は、谷村新司が、なんと28歳の時に書いた詞です。何を思って20代でそんな歌詞を書いたのかはわかりませんが、まあ、そのへんが非凡な才能を持っている故なのでしょう…。
いずれにしても、多感な青春時代に出会った曲は、一生忘れないものになっているハズです。
岡田奈々の『青春の坂道』は、西城秀樹『若き獅子たち』の半年前に発売されました。大ヒットとはなりませんでしたが、オリコン・チャート最高位が23位で、10万枚以上売れた曲ですから、ファンでなくても、聴けば「あ〜コレね〜」と知っているヒトも多いハズです。
ちなみに、最近の若者も岡田奈々を知っていますが、それは、AKB48に岡田奈々というコがいるためで、「岡田奈々ちがい」です。
で、ご存知のように、1970年代には、『明星』『平凡』『近代映画』という、青春アイドル雑誌がありました。『明星』と『平凡』には、いわゆる「歌本」という小冊子が付録で付いていて、そこに、最新ヒット曲の歌詞とかコードとかメロ譜とかが載っていたので、それが欲しくて買っていたりもしました(もちろん、本誌にあったアイドルのグラビアも目的だったコトは、言わずもがなですが)。
『青春の坂道』の歌詞は、その『明星』(集英社)で歌詞を一般公募し、入選した中司愛子さんの歌詞を原案に、松本隆が作詞した曲です。シングル・レコードのジャケットにも、ちゃんと「『明星』募集歌」と書かれています。一般公募という話題づくりと、『明星』とのタイアップだったのですね。
この中司愛子さんというヒトが、いったいどういうヒトで、その後、何をしているのかは不明ですが、いずれにしろ、原案をもとに書かれていますから、『木綿のハンカチーフ』や『白いパラソル』などといったほかの松本隆作品とは、ちょっとテイストが違っています。
作曲は、河島英五『時代おくれ』、天地真理『ひとりじゃないの』、キャンディーズ『ハートのエースが出てこない』、桜田淳子『はじめての出来事』、和田アキ子『あの鐘を鳴らすのはあなた』などで知られる森田公一。
編曲は、かぐや姫、吉田拓郎、長渕剛、チャゲ&飛鳥、徳永英明、中島みゆき…らの編曲やプロデュースを多数手がけている瀬尾一三(せお いちぞう)です(最近、本も出ました)。
メジャーになったりマイナーになったりするメロディが切なさを演出し、瀬尾一三らしいアコースティック・ギターが中心となったフォーク系のサウンドが心地よい名曲です。
ちなみに、森田公一とトップギャランの『青春時代』(作詞:阿久悠、作曲・編曲:森田公一)は、この『青春の坂道』が発売されたわずか5ヶ月後の1976年8月21日の発売。なにか刺激を受けたのでしょうか…。
ちなみに、ちなみに、森田公一作曲の名曲『南の島のハメハメハ大王』も、1976年の作品です…、どうでもいいことですが…。
岡田奈々のボーカルは、素直で嫌味がなく、キンキンしない木管楽器のようなやわらかい声なのに、抜けがいいのが特徴的です。言葉の語尾が明るい響きで、発音もクリアなので、歌詞の世界がよく伝わってきます。プレートのリバーブ(当時は EMT-140 という巨大な鉄板の入ったリバーブを使っていました)も、実にキモチ良くかかっています。
発売当時、岡田奈々は、毎週日曜よる8時の人気のテレビドラマ『俺たちの旅』(ユニオン映画・日本テレビ、1975年〜1976年)に、主演・中村雅俊演じるカースケの親友オメダ(田中健)の妹役・中谷真弓としてレギュラー出演していましたが、1976年3月7日放送の第22話『少女はせつなく恋を知るのです』で、『青春の坂道』が劇中歌として使われました。
劇中で本人が歌うシーンがあるのですが、カースケ(中村雅俊)に片思いをしていた真弓(岡田奈々)の思いを表すために、歌詞は、ちょっと変えてありました。
その放送の3日後、1976年3月10日に、シングル『青春の坂道』を発売するという戦略もあたり、ドラマの人気もあって、岡田奈々の最大のヒット曲となりました。
ちなみに、同年、岡田奈々主演の松竹映画『青春の構図』でも挿入歌として使われ、劇中に歌うシーンがありますが、これもレコードとは違うアレンジのオリジナル・バージョンです。
テレビドラマ『俺たちの旅』は、当初、2クール(半年)でしたが、高視聴率だったことから4クール(1年)延長され、さらに、放送終了後も、単発のスペシャル特番が3作、『俺たちの旅 十年目の再会』(1985年)、『俺たちの旅 二十年目の選択』(1995年)、『俺たちの旅 30年SP 三十年目の運命』(2003年)と、ほぼ30年にも及ぶ人気でした。
個人的には、食堂のご主人を演じた名古屋章が、脇役ながら、強烈な印象が残っていますが…。
ポッキーの初代CMガールにもなった岡田奈々、20歳のころからは女優に専念するようになったため、歌手としての活動期間は短いものとなりました。清潔感のある美少女ですが、近寄りがたい雰囲気ではなく、近所にもいそうな(いないけど)身近なカンジも魅力でした…。
レコードのジャケット写真は、あの篠山紀信によるものだそうです。
ですが…「ナナ」なのに、なぜ数字の6が書かれた服を着ているのか…。
(2020年2月 西山 寧)
岡田奈々 歌詞一覧
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