第21回 西城秀樹「若き獅子たち」(1976年) -MUSIC GUIDE ミュージックガイド

色あせない昭和の名曲
便利でないことが、しあわせだった、あのころ …

週刊・連載コラム「なつ歌詞」

時代を思い出す扉が 歌であってくれればいい … (阿久悠)

第21回 西城秀樹「若き獅子たち」(1976年)

太陽に向かい 歩いてるかぎり
影を 踏むことはない
そう 信じて 生きている ……
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西城秀樹「若き獅子たち」

西城秀樹「若き獅子たち」(4:46) B面「我が青春のフィナーレ」
作詞:阿久悠、作曲:三木たかし、編曲:三木たかし、担当ディレクター:岡村右
1976年(昭和51年)9月5日発売 EP盤 7インチ・シングルレコード (45rpm、ステレオ)
RVS-1032 (JPBO-0270) ¥600- RCA RECORDS / RVC

 1972年にシングル「恋する季節」でRCAレーベルより17歳で歌手デビューした西城秀樹の18枚目のシングル。同年、日本レコード大賞では「若き獅子たち」で3度目となる歌唱賞を受賞。
 小学校の頃より、ギター、ベースを始め、その後、ドラムに転向し小学4年でバンド活動を開始。洋楽ロックが好きで、もともと歌謡曲はあまり聞いていなかったが、高校1年生の時、アルバイト先で歌っていたところをスカウトされ上京。1972年「ワイルドな17歳」のキャッチフレーズでデビュー。以降、「情熱の嵐」「YOUNG MAN(Y.M.C.A)」「ギャランドゥ」「激しい恋」「傷だらけのローラ」「ブーメラン・ストリート」「ブルースカイ ブルー」「ブーツをぬいで朝食を」などヒットを連発。郷ひろみ、野口五郎と共に「新御三家」と呼ばれるようになる。また、俳優として出演したドラマ「寺内貫太郎一家」での小林亜星との乱闘シーンや、「バーモンドカレー」のCMでの「ヒデキ、感激!」のフレーズも有名。NHK紅白歌合戦には、11年連続出場するなど通算18回出場。誰もが知る国民的スター。
 2001年に脳梗塞を発症して以来、入退院を繰り返しながらも歌手活動を継続していたが、2018年5月16日に急性心不全のため、63歳という若さで亡くなった。


 先週、ベイ・シティ・ローラーズとキャンディーズのコンサートに行って来ました。正確に言うと「Bay City Rollers starring Leslie McKeown」と「伊藤蘭コンサート・ツアー2020 〜My Bouquet & My Dear Candies!〜」です。あまりに忙しく、行くのを断念しようかと思いましたが、ホントに無理して行ってよかったです。

 「スーちゃん、ミキちゃんがいない…」とか、「オリジナルメンバーはレスリーだけ…」とかおっしゃる筋金入りのファンの方もいらっしゃるかと思います…。しかし、当時と変わらない印象の歌声の『Give A Little Love(恋をちょっぴり)』とか『Summerlove Sensation(太陽の中の恋)』とか、はたまた『哀愁のシンフォニー』とか『年下の男の子』なんかを聴いてると、得も言われぬ静かな感動とともに、あの頃の感情が一気に蘇ってきて、なんとも言えない不思議なキモチになりました…。

 だって! まさかあの歌を、目の前で、ナマの声で聴けるなんて、夢にも思っていませんでしたから! なにしろ、40年以上も前の歌ですよ! ランちゃんもレスリーも、なんと、もう65歳! 昔では、考えられなかったですね…。
 コンサートが終わったあとの帰り道、「あ〜ホントに生きててよかったなぁ〜」という、もと「全キャン連」とおぼしきオヤジたちの会話も聞こえてきました…。

 長生きすると、思ってもみなかったいいコトがあったりするのですね…。

 ちなみに、谷村新司(71歳)、小田和正(72歳)、堺正章(73歳)、加山雄三(82歳)、北島三郎(83歳)、ブライアン・メイ(72歳)、ポール・マッカートニー(77歳)、ボブ・ディラン(78歳)、ハービー・ハンコック(79歳)…と、みなさん、知らない間に、もうそんなお歳なんですね。ア〜ラ びっくり。48年の間、5歳サバを読んでいた冠二郎だって75歳。90歳を越えている菅原都々子だって、今でも、たまに「月がとっても青いから」を歌っていたりします。そりゃ、ジブンだって歳をとりますよね〜。

 長寿社会になり、歌手の寿命も伸びた一方で、スーちゃん(55歳没)や藤圭子(62歳没)、本田美奈子(38歳没)、清水由貴子(49歳没)や、舌ったらずで鼻にかかった抜群に甘い声が大好きだった甲斐智枝美(43歳没)ら、若くして亡くなった歌手のことを思うと、運命とは言え、悲しいもんです…。
  尾崎紀世彦(69歳没)や、島倉千代子(75歳没)だって、生きていれば、きっとまだ歌っていたと思います。歌声が聴けなくなるというコトは、本当に残念です…。

 つい先日も、2月10日には、パット・メセニーのサウンドには欠かせなかったキーボーディスト「ライル・メイズ」が66歳で亡くなりました。野村克也だって、ついこの間まで、南海でキャッチャーやっていたような気がするのに… 門田、野村、ビュフォードのクリーンナップで……

 で、その野村が、南海ホークスで選手兼任監督となって7年目のシーズンに入り、キャンディーズの9枚目のシングル「春一番」が3月発売され、12月にはベイ・シティ・ローラーズの初来日公演が武道館であった1976年(昭和51年)、西城秀樹の18枚目のシングルとして、この『若き獅子たち』が発売されました。

 いわゆる「新御三家」と呼ばれた3人…、郷ひろみは、正統派アイドルの美少年で中性的なイメージ、野口五郎は、文学的でやや陰りのある軟派なイメージでしたが、ヒデキは、背が高くて彫りが深く、まるで外国の映画スターのようで、女性のファンだけでなく、男が憧れるようなカッコよさを持っていました。

 音楽的にも、郷ひろみは「正統派のアイドル歌謡」、野口五郎は「ウェットな王道の歌謡曲」でしたが、ヒデキの基本は「ロック」です。

 「YOUNG MAN(Y.M.C.A)」「ギャランドゥ」「情熱の嵐」「激しい恋」「傷だらけのローラ」「ブーメラン・ストリート」「ブルースカイ ブルー」などヒット曲も多く、ファンの中でも好きな曲に関しては、それぞれ意見が分かれると思いますが、ワタシは、「作詞:阿久悠、作編曲:三木たかし」のゴールデン・コンビで作られた壮大なバラード「若き獅子たち」を推します。
 「ゼンブ!」とは言いませんが、「ヒデキの魅力」の多くが集約されているように思える曲です。

 まず、三木たかしによるアレンジとメロディが最高です。
 大袈裟なブラスではじまるイントロからワクワクさせて、Aメロは一転、静かでゆったりしたスキのない綺麗なメロディで始まります。Bメロはリズミックで、かつ2回も転調を繰り返した後、サビに繋がる盛り上がりを予感させつつ、実に自然にもとのキーに戻ります。
 そして、力強くダイナミックに音が飛ぶサビのメロ。ストリングスとブラス、コーラスのアレンジも見事ですが、マーチのようなスネアが効いています。いちばん最後のサビの繰り返しの後半は、感情の盛り上がりに比例させるように、意図的にテンポを上げていたりしています。

 そして! 何より、ヒデキのボーカルのカッコよさ!
 Aメロは、言葉を語るように、優しく丁寧に歌っていますが、サビでは一転し、パワフルにエモーショナルに歌い、ココロを掴まれます。「獅子の たぁ〜てっ がみ〜うぉ〜」のシャウトっぽいトコとか、「なみだぁ〜を」と音をつなげてポルタメントで歌って甘いカンジを出したり、転調する最後のサビの繰り返し前、「や〜 み〜 い〜 よぉ〜」と倍の長さになるところに「唸り」を入れたりするところも、ヒデキらしく特徴的で耳に残ります。

 実は、ヒデキの16枚目のシングル「君よ抱かれて熱くなれ」(1976年2月発売)から、22枚目のシングル「ボタンを外せ」(1977年9月発売)まで、7作連続で、この「阿久悠&三木たかし」のコンビによる作品です。驚くべきは、それがわずか1年半の間だということ。「ブーメランストリート」や「ラストシーン」もその中に入っています。

 ヒデキ以外で、このコンビを代表する曲と言えば、『みずいろの手紙』(あべ静江)、『乙女のワルツ』『きみ可愛いね』『木枯しの二人』(伊藤咲子)、『お元気ですか』清水由貴子)、『思秋期』(岩崎宏美)、『津軽海峡・冬景色』(石川さゆり)などがあります。ねっ、どれも名曲ばかりでしょ。

 ちなみに、この『若き獅子たち』に似たタイプの曲の(どちらかと言えばこっちの方が人気なのが)『ブルースカイ ブルー』ですが、この曲は、作詞は同じく阿久悠ですが、作編曲は馬飼野康二(まかいの こうじ)です。

 馬飼野康二も、ヒデキには『激しい恋』『傷だらけのローラ』『至上の愛』など数多く書いていますが、他に、『古い日記』(和田アキ子)、『愛のメモリー』(松崎しげる)、『くるみ割り人形』(石川ひとみ)、『いとしのロビン・フッドさま』(榊原郁恵)などを書いた大作曲家です。
 編曲家としても人気で、たとえばキャンディーズなら『哀愁のシンフォニー』(作曲:三木たかし)、『やさしい悪魔』(作曲:吉田拓郎)、『暑中お見舞い申し上げます』(作曲:佐瀬寿一)など、キャッチーで印象的なアレンジが素晴らしく、ワタシを先週も感動させてくれたというワケです。

 しかし、このヒトの本当にスゴイところは、今でも活躍しているというコトで、『勇気100%』(光GENJI)、『オリジナル スマイル』(SMAP)(MARK DAVIS名義)、『A・RA・SHI』(嵐)、『無責任ヒーロー』(関ジャニ∞)をはじめ、Sexy Zone や Hey! Say! JUMP などなど、ジャニーズの最近のアイドルの曲もたくさん書いています。

 で、実は…、この馬飼野康二の2歳年上のお兄さん、馬飼野俊一も有名な作編曲家というスゴイ兄弟なんです。お兄さんの方は、とくに、編曲家として有名で、『笑って許して』『草原の輝き』『ひとりじゃないの』『石狩挽歌』『てんとう虫のサンバ』『北酒場』『さそり座の女』…などから、最近では、山内惠介の『唇スカーレット』などのアレンジもやっています…。

 さて、ご存知のように、ヒデキは、何度か脳梗塞で倒れていますが、2回倒れたあと、2013年に(たしかテレビ東京の)公開収録番組で歌った『若き獅子たち』は見事でした。もちろん、若い時の歌もいいのですが、年齢を重ねないと出てこない説得力が加わり、ココロが揺さぶられました。

 それにしても…、ベイ・シティ・ローラーズはオバサンが7〜8割で、伊藤蘭の方はオジサンが7〜8割という会場風景…、当たり前でけど。とくに、ランちゃんの方は、まぁ〜これまで見たコトのない、なんとも異様な雰囲気の会場でした。
 会社帰りなのか、スーツを着た髪の薄い部長風のヒトから、ナイス・ミドル風の杖をついたヒト、鉢巻をしてペンライトを振る腹のでっぷりしたオヤジまで、実に様々なオジサンが1,000人くらい大集合! それが、一斉に盛り上がるもんですから、それはモ〜…。まるで、華丸大吉の「おかあさんといっしょ」をパロディにしたネタ、「おじさんといっしょ」の世界を現実に見ているようでした…。

 この年、1976年のオリコン・年間チャートでは、キャンディーズの『春一番』が22位、ヒデキの『若き獅子たち』は61位でした。すごくベタな言い方をすれば、どちらも「記録ではなく、記憶に残る名曲」と言えますね。なんでも、数字や記録が全てではありません。

(2020年2月 西山 寧)


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