第18回 あおい輝彦「あなただけを」(1976年) -MUSIC GUIDE ミュージックガイド

色あせない昭和の名曲
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第18回 あおい輝彦「あなただけを」(1976年)

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あおい輝彦「あなただけを」

あおい輝彦 「あなただけを」(3:23) B面「水鳥たちの季節」
作詞:大野真澄、作曲:常富喜雄、編曲:惣領泰則、コーラス:シンガーズ・スリー、演奏:テイチク・オーケストラ
制作:佐藤裕明、樋口紀男、録音:武井一夫、撮影:木津康夫
1976年(昭和51年)6月25日発売 7インチ シングル レコード (45rpm、ステレオ) ¥600- RS-11  テイチクレコード

 ジャニー喜多川が率いる少年野球チームのメンバーで結成され、男性アイドル・グループの草分けとなった初代「ジャニーズ」のメンバーとして1962年にデビューし、その後、俳優・歌手となった「あおい輝彦」のソロ11枚目のシングル。オリコンチャートでは6週連続での1位を記録し、1976年の年間チャートでも第7位にランクされる大ヒットとなり、その年の「第27回NHK紅白歌合戦」にソロ歌手として初出場。
 1967年の「ジャニーズ」解散後は、劇団四季の研究生となり、1968年、TBS系 木下恵介アワー枠のドラマ「おやじ太鼓」に出演し、自身が作詞・作曲した1stソロ・シングル「僕の秘密」が劇中歌としても使われた。1970年には、同じく木下恵介アワー枠のドラマ「二人の世界」に出演し、自身が歌った主題歌、2ndシングルの「二人の世界」がオリコン週間最高3位のヒットとなる。その後、1976年「あなただけを」、1977年「Hi-Hi-Hi」「センチメンタルカーニバル」などがヒット。
 俳優としては、映画「犬神家の一族」の佐清(スケキヨ)役や「二百三高地」や、1988年から12年間に渡って演じた、テレビ時代劇「水戸黄門」での「助さん」役が有名。1995年には、「水戸黄門」の主題歌「あゝ人生に涙あり」を伊吹吾郎とのデュエットで歌っている。声優としては、1970年のアニメ「あしたのジョー」の主人公・矢吹丈役でも知られる。


 当時、商店街や喫茶店、レコード店などで、よくかかっていました。ワタシ的には、海水浴場と言えば、ハワイアンの『タフワフワイ』(TA-HU-WA-HU-WAI)や、ビリー・ヴォーンの『真珠貝の歌』(Pearly Shells)と同じくらい、この『あなただけを』のイメージが強く、今でも海水浴所に行くと、勝手にアタマの中で始まります。

 それにしても…このレコード・ジャケット、これぞ!まさに70年代のカッコよさ! でっかい襟の真っ赤なシャツに、白いジャケット、レイバン型のサングラスに、手にはタバコ…。このレコードを買ったのが、つい昨日のコトのようなのに(それはウソ)、今では考えられませんね…。

 この曲が発売された昭和51年(1976年)の喫煙率は、男性が75.1%、女性が15.4%で、まだ「タバコはカッコイイ」と思われていた時代。ハンフリー・ボガート、ジョン・ウェイン、ゲイリー・クーパー、クラーク・ゲーブル、ジェームス・ディーン…らがタバコをくわえる姿は、まさにダンディズムを感じさせるもので憧れでした。
 そう言えば、昔は「タバコを吸う」ではなく、「タバコを飲む」って言っていましたね…。

 さらに10年ほど遡ってみると、昭和41年(1966年)の喫煙率は、男性が83.7%、女性が18.0%で、40代男性に限ってみると、なんと87.3%と9割近く! 男性は、ほとんどが喫煙者という時代でした。
 ちなみに、この「全国たばこ喫煙者率調査」は、昭和40年(1965年)に日本専売公社が調査を始め、JT(日本たばこ産業株式会社)に引き継がれていましたが、実は、2018年で調査をヤメていて、2019年以降、この調査は実施されていません。

 それはともかく、当時を思い出すと、会議室はケムリだらけで、駅のホーム(地下鉄の駅も)の灰皿も、しょっちゅう火事になっていましたね。なにしろ、男性の喫煙率が9割近くでしたから、今とは違い「吸うのが当たりまえ」という時代でした。

 新幹線や在来線の特急は全席喫煙席でしたし(それが当たり前だったので、あえて、そんな言い方はしていませんでしたが)、ホントはダメでしたが、東京の山手線や大阪の環状線など通勤電車内で吸っているオッチャンを見かけるコトも少なくありませんでした。

 モチロン、飛行機の中だって吸えましたし、映画館では、映画を見ながら吸えました。今では考えられませんが、病院の待合室にだって、フツ〜に灰皿が設置されていましたし、整形外科の病室なんかでは、足を吊られた入院患者がタバコをプカプカ吸っていたりしました。

 学校の職員室だって、センセ〜たちは当然のごとく吸っていましたし、担任の机が教室にあった小学校なんかでは、教室でタバコを吸う先生もいました。それがフツ〜のコトだったので、誰もなんとも思っていませんでしたが、たしかに、子供のころ、タバコの煙でケムった特急電車に乗ると、頭が痛くなってツラかった記憶があります…。

 あれから50年…、平成30年(2018年)の最後の喫煙率調査では、男性が27.8%、女性が8.7%だそうです。戦時には陸海軍への支給品でもあった「恩賜の煙草」が、今では「コンペイトウ」(ボンボニエ〜ルって言うんですか?)になってしまったのも致し方ないところですね。

 昭和を生きた現喫煙者にとっては、なかなかキビシイ時代です。「喫茶店で、ゆっくり座ってコーヒーを飲みながらタバコを吸う」などという贅沢は、もはや許されません。
 矛盾するようですが、タバコは、本来、空気のキレイな場所で吸うのが一番おいしいものです。タバコの匂いの染み付いた、阿片窟のような喫煙所なるところで、ギュウギュウで立たされたまま吸っても、それほどウマイものでもないでしょう。

 一方的に喫煙者の肩を持つワケではありませんが、6割以上が税金というタバコを売っているのであれば、もうちょっと考えてあげても良いように思います。PM2.5とか黄砂とか放射能とか合成添加物とか、タバコより先に考えるべき有害なものが他にもたくさんあります。
 なんでも、一説によると、クルマの排気ガスによる空気の汚染度は、エンジンを1分間吹かすだけで、タバコ3千本分になるとも言われているそうじゃないですか。

 もちろん、タバコは吸わないにこしたことはありません。でも、タバコの悪弊ばかりを言い、排気ガスのリスクをあまり言わないというのも、ちょっとヘンなカンジがします。クルマの排気ガスは毎日気づかずに大量に吸っています。喫煙率の高い日本の平均寿命が、世界一だったりするのも、よくわかりませんし。

 いっそ、タバコがそんなに悪いのであれば、大麻みたいに法律で禁止してしまうというのはどうでしょう? 禁酒法みたいに。同時に、国の税収2兆円もなくなっちゃいますが…。なんだか、ダブル・スタンダードに感じてしまうのはワタシだけでしょうか…。まあ、世の中とは、そういう矛盾だらけですからね。

 で、この「あなただけを」は、先週の「三枚の写真」の約半年前、夏を前にした6月に発売された曲です。さわやかで日本人の琴線に触れるようなスキのないメロディ、夏っぽく心地よいエレピが印象的なアレンジと演奏、そして、そこに乗った、あおい輝彦の甘い歌声…「コレぞ日本の歌謡曲!」というような名曲です。

 「メロディ、歌詞、アレンジと演奏、歌声」この4つが奇跡的な出会いをした時に、名曲は生まれ、そこにタイミングや運が重なることで、ヒット曲になります。

 一方的な愛の言葉で、一見、情熱的すぎるような歌詞も、このメロディと歌声に実によく合っています。「よく読むと意味がわからない…」というヒトもいるようですが、それは「よく読む」からいけないのです。そもそも、歌詞は「読むもの」ではありませんし、必ずしも論理的に書かれているものでもありません。むしろ、メロディとの「音(響き)としてのマッチング」の方が大事です。

 歌詞とは「メロディに乗せて歌声で聴くコトバ」であり、メロディに乗った歌声で聴いた時に、耳に残ったり、ココロを揺さぶられたりすれば良いのです。優れた歌詞とは、往々にしてそういうもんです。「気がつくと、ふと口ずさんでしまう…」そういう歌詞が、優れた歌詞なのではないでしょうか。

 さて、この「ザ・歌謡曲」ですが、実は、職業作家による作品ではありません。

 作詞は、『学生街の喫茶店』(コレも名曲!)のヒットで知られる3人組フォークグループ「ガロ」の「ボーカルさん」こと大野真澄。
 作曲は、「海も失恋するのかなぁ〜」のセリフで知られる『海は恋してる』(コレも名曲!)をヒットさせた5人組フォーク・グループ「ザ・リガニーズ」のメンバーであり、その後、フォーク・デュオ「猫」で『地下鉄にのって』を歌った常富喜雄。
 つまり、どういう経緯でそうなったのかはわかりませんが、フォークの世界の二人のシンガー・ソング・ライターが共作した珍しい作品です。

 おそらく、このコンビで曲を作ったのは、後にも先にも、この1曲だけかと思われます(タブン)。しかも、大野真澄も、常富喜雄も、他の歌手への楽曲提供は、そんなにしていませんから、この二人にとっても、提供曲では最大で唯一の大ヒット曲と言えます。なぜ、そういう奇跡的な出会いになったのか、機会があれば、ぜひ、聞いてみたいものです…。

 ちなみに、常富喜雄は、「ザ・リガニーズ」「猫」のあと、フォーライフレコードで、吉田拓郎、杏里、原田真二、伊勢正三、尾崎亜美らを担当していて、杏里の『オリビアを聴きながら』をヒットさせました。2004年には、フォーライフを退社し、再びミュージシャンとして活動を始め、2017年には「猫」の活動を再開しています。
 一方、大野真澄も、現在、伊勢正三、太田裕美とともに「なごみーず」というグループで活動しており、この『あなただけを』を歌ったりもしています。

 ちなみに、ちなみに、「ザ・リガニーズ」のリーダーだった新田和長は、その後、レコード会社、東芝音楽工業に入り、オフコース、チューリップ、赤い鳥、RCサクセション、トワ・エ・モワ、甲斐バンド、長渕剛、寺尾聰、稲垣潤一、加山雄三などなど、錚々たる面々を担当。名プロデューサーとなり、その後、ファンハウス、BMGジャパン、ドリーミュージックなどの社長を歴任したという、ビジネス・パーソンとしても大成功したスゴイ人です。「だって 俺 泳げないんだもん…」とか言ってたヒトなんですけどね…。

 あおい輝彦のヒット曲には、栗原小巻の弟役で出演した、1970年〜1971年、TBSテレビ系列「木下恵介アワー」(日産自動車の1社提供)のドラマ「二人の世界」の主題歌となった『二人の世界』や、1977年の『Hi-Hi-Hi』や『センチメンタルカーニバル』がありますが、この『あなただけを』が最大のヒット曲です。オリコン週間チャートで6週連続第1位、年間チャートでも第7位に入り、この曲で「第27回NHK紅白歌合戦」にソロとして初出場しています(グループとしては「ジャニーズ」で1965年に初出場)。

 『二人の世界』は、作詞をしたのが、このドラマの脚本家である山田太一、作曲が木下恵介の弟で、後に「水戸黄門」の主題歌である『ああ人生に涙あり』も手がけた木下忠司という珍しい作品です。コレもいい曲ですね〜。

 ところで…『あなただけを』のレコード・ジャケットは、今回、掲載しているモノが一般に販売されたモノなのですが、実は、コレとは違うジャケットも存在しています。
 発売前に、放送局やレコード店等に無償配布されるプロモーション用のレコード、いわゆる今で言う「サンプル盤」(以前は「見本盤」「試聴盤」「テスト盤」「プロモ盤」とか言ってました)のジャケットは、サングラスをかけていない、別ポーズの写真が使われているんですね〜。見てみたいでしょ?
 プロモーション目的だから、ちゃんとカオを見せるためにそうしたのか、それとも、後から誰かが「ヤダ」って言い出して変更したのか、どっちかはわかりませんが。でも、見てみたいでしょ〜?

 どうしても見たいヒトは、ココにあります…。


(2020年1月 西山 寧)

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