第15回 サザンオールスターズ「Ya Ya あの時代を忘れない」(1982年) -MUSIC GUIDE ミュージックガイド

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便利でないことが、しあわせだった、あのころ …

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時代を思い出す扉が 歌であってくれればいい … (阿久悠)

第15回 サザンオールスターズ「Ya Ya あの時代を忘れない」(1982年)

ああ、もう あの頃のことは 夢の中へ …
知らぬ間に 遠く Years go by ……
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サザンオールスターズ「Ya Ya あの時代を忘れない」

サザンオールスターズ 「Ya Ya あの時代(とき)を忘れない」(3:53)
作詞:桑田佳祐、作曲:桑田佳祐、編曲:サザンオールスターズ、Brass&Strings 編曲:新田一郎、B面「シャッポ」
1982年(昭和57年)10月5日発売 7インチ シングル レコード (45rpm、ステレオ)  VIHX-1589 invitation / ビクター音楽産業

サザンオールスターズ、16枚目の7インチシングル。1974年ころ、青山学院大学の学生らで結成され、1977年に、ヤマハ主催の音楽コンテスト「EastWest ’77」の本選に「女呼んでブギ」で出場し入賞したことがきっかけで、1978年、ビクター音楽産業(現 ビクターエンタテインメント)からシングル「勝手にシンドバッド」でデビュー。1979年には「いとしのエリー」が大ヒットし、その後も、数えきれないくらいのヒット曲を出し、今でも現役の国民的バンドとなる。1987年以降、桑田佳祐がソロ活動も開始し、サザンとソロ、それぞれの活動を数年毎のローテーションで行っている。「Ya Ya あの時代(とき)を忘れない」は、1982年に、7インチシングルレコード として発売された後、1988年と1998年に、それぞれ8センチCDでも発売されている(1988年盤のジャケットはオレンジで、1998年盤はブルー)。さらに、2005年には、12センチのマキシ・シングルとして発売。また、1991年には、LA の有名ミュージシャンらによる、サザンのカバーアルバム「Mid-Summer Blossoms」が発売され、元シカゴのビル・チャンプリンが歌っている(タイトルは「Memories Of Her (Ya Ya)」)。


 先日、久しぶりに渋谷に行きました。むかし、東急プラザがあった場所は、去年の12月にオープンしたばかりの「渋谷フクラス」なるオシャレな商業ビルになっていました。と思いきや、国道246号を挟んだ向かい側の、JTBやらイケベ楽器やら一風堂やらがあったエリアが更地になっていて、再開発工事が始まっていました…。渋谷は、スゴイ勢いで変わっていってますね…。なんでも、渋谷は長らく「オフィスビル不足」だったらしく、それを解消して「ビットバレー化」を目指しているそうな…。

 たしかに、そう言われると、渋谷のオフィスビルといえば、尾崎豊の通学路で歌碑もある、1975年にできた「渋谷クロスタワー」(ワタシには「東邦生命ビル」と言った方が馴染み深いですが)くらいで、長らく駅の周辺に大きなオフィスビルはありませんでした。つまり、「若者の街 渋谷」は、ビジネス街としての機能が低かったのです。

 しかし、2000年ころには「渋谷マークシティ」が開業し、一時、新興IT産業が渋谷に集う「ビットバレー」ブームが起きました。が、翌2001年に「セルリアンタワー」に入った Google の日本法人は、2010年には六本木ヒルズへ移転しちゃいました。さらに、2012年には、駅直結のオフィスフロアを持つ「渋谷ヒカリエ」が完成したことで、DeNA や LINE といったIT企業が入りましたが、LINEは2017年に新宿に引っ越しちゃうというように、まだまだ、渋谷は、オフィスフロアの供給不足なのだそうです。

 ちなみに、渋谷は、その名の通り「谷」です。渋谷駅あたりが谷底で、ちょうどビルの4階レベルくらいが、道玄坂上、宮益坂上と同じくらいの高さらしいです。

 そんなことはともかく、「渋谷ヒカリエ」が出来たころまでは、なんとかついていけましたが、2017年以降、「渋谷キャスト」「渋谷ブリッジ」「渋谷ストリーム」「渋谷ソラスタ」「渋谷スクランブルスクエア(第I期 東棟)」、そして件の「渋谷フクラス」と、もはや、名前を言われても、オジサンにはまるで呪文のようで、何がなんだかサッパリわからず、ついていけません…。

 そういえば、昨日、トヨタ自動車の豊田章男さんが、富士山の裾野に「最新技術を集めた未来都市を作る」と発表していました。いよいよ、そんな時代になってきました。たしかに、自動車会社は、もはやクルマだけを作っていても先はないので、当然、そういう変化が求められます。

 かと思えば、同じ「CES 2020」で、なんと、ソニーが「Sony Vision-S セダン」という自動車を発表していました。まあ、大統領が直接ツイッターで発信した内容がニュースになる時代ですから、もう、何があってもあまり驚きませんが…、そのうち、味の素がテレビを作り出したり、ユニクロが掃除機を作っちゃったりする時代が来るんですかね…。

 たしかに、技術の進歩によって、私たちの生活は、便利になりました。待ち合わせに遅れそうでも、歩きながら電話ができますし、チャンネルを変えるのに、わざわざテレビの前まで行かなくても、寝っころがったままで出来るようになりました。たとえば、家事などは、圧倒的に昔よりラクになっています。

 明らかに便利なモノは受け入れれば良いに決まってます。しかし、時代に遅れまいとして、なんでもかんでも必死でついて行こうとするのも違う気がします。書店や写真屋などが消えていったように、また、先の自動車会社のように、変わる必要がある場合は別ですが。

 ワタシは、勝手に「デジタル・ネガティブ」を自称していますが、いくら便利と言われても、やっぱり「アナログ的なモノ」の方が、実際、ジブンにとっては使いやすいという場合も少なくないですし、また、愛着があったりもします。愛着なんてモノは、効率とは何の関係もありませんが、でも、時として、効率よりも大事にするべきコトもあるのではないでしょうか…。

 いずれにしろ、渋谷のハチ公口には噴水があり、東急プラザの上の紀伊国屋書店で何時間も立ち読みをし、東急文化会館の「渋谷パンテオン」で『007』なんかを見ていたワタシにとっては、当時の渋谷の風景と、当時、そこで感じていた今よりゆったりした時間が懐かしく思えます…。さすがに、東横百貨店の屋上と玉電ビルの屋上を結んでいたケーブルカー「ひばり号」や、路面電車の「玉電」をナマで見たことがありませんが…(地方に住んでいたので)。

 渋谷と言えば、この歌『Ya Ya あの時代を忘れない』を思い出します。まさに、渋谷の歌です。ノスタルジーを感じさせるようなタイトルと歌詞ですが、それよりも、下降クリシェのコード進行に乗せたメロディそのものが、郷愁を感じさせます。

 桑田佳祐のバラードには、『いとしのエリー』をはじめ、『真夏の果実』『白い恋人達』『TSUNAMI』『Oh! クラウディア』『SEA SIDE WOMAN BLUES』『栞のテーマ』などなど名曲が数多くありますが、いずれも、歌詞というよりは、メロディ・ラインそのものの魅力の方が大きいと思います。洋楽に影響されながらも、いわゆる日本人の心の琴線に触れるような、ある種、歌謡曲的な要素を持ったメロディが、それだけで、心を揺さぶります。

 実際、メロディ先行で作り、あとから歌詞を乗せるというスタイルで、メロディに乗せたときの言葉のリズムや響きを最優先にしているから、意味を持ったコトバが乗った時に、メロディそのものが語り出すのでしょう…。それは、何もバラードに限ったことでもなく、たとえば『私はピアノ』『いなせなロコモーション』『ピースとハイライト』などなど、アップテンポの曲でも同じで、やっぱり、メロディそのものが語っています。

 「桑田佳祐が書く歌詞の意味が分からない」とか、「日本語も英語もに文法的に間違っているトコロがある」とか、また、『Ya Ya あの時代を忘れない』で言えば、メロディが、Bread の『If』(1971年)や、Dr.Hook の『A Little Bit More』(1976年)に似ているとか批判するヒトもいますが、そんなコトはナンセンスです。
 国語の授業ではないのですし、文法的に正しいものがヒトに伝わるわけではありません。それに、ワタシも『If』や『A Little Bit More』に似ていると思いますが、とくに何とも思っていません。『If』も『A Little Bit More』も『Ya Ya あの時代を忘れない』も、それぞれ大好きな曲です…。

 だいたい、音楽は、例外なくコピーや真似をすることから始まりますし、何百年も前から、そうやって進化してきたモノです…。桑田佳祐だって、そんなコトを言われるのは百も承知でしょうし、むしろ、リスペクトの意味で、わかっていて、そのままリリースしたのだと想像しています。

 ちなみに、この『Ya Ya あの時代を忘れない』と、とてもよく似た雰囲気の曲が、もう1曲あります。2011年発売、桑田佳祐のソロ4枚目のオリジナル・アルバム『MUSICMAN』の最後に収録されている『月光の聖者達 (ミスター・ムーンライト)』。コレも、なんともノスタルジックで、切ないキモチにさせられる歌です。

(2020年1月 西山 寧)

『Ya Ya あの時代を忘れない』歌詞を見る

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桑田佳祐 – 月光の聖者達 (ミスター・ムーンライト)

『月光の聖者達 (ミスター・ムーンライト)』歌詞を見る