第14回 藤山一郎・奈良光枝「青い山脈」(1949年) -MUSIC GUIDE ミュージックガイド

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第14回 藤山一郎・奈良光枝「青い山脈」(1949年)

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藤山一郎・奈良光枝 「青い山脈」

藤山一郎(ふじやま いちろう / 本名:増永 丈夫)・奈良光枝(なら みつえ / 本名:佐藤 みつえ)「青い山脈」(3:18)
作詞:西條八十、作曲:服部良一、編曲:永作幸男、B面「恋のアマリリス」(二葉あき子)
1949年(昭和24年)3月10日発売 SP盤10インチレコード (78rpm、モノラル)  A-527 コロムビア

 『酒は涙か溜息か』『丘を越えて』『東京ラプソディ』『男の純情』『長崎の鐘』など、戦前・戦後と数多くのヒット曲を持つ藤山一郎が、同名の映画主題歌として奈良光枝とともに歌った曲。その後、藤山一郎ひとりで歌ったバージョンもある。
 藤山一郎は、1911年(明治44年)東京生まれ。幼少期からピアノを習い、慶應義塾幼稚舎、慶應普通部を経て、東京音楽学校声楽部(現在の東京藝術大学音楽学部)に入学。進学後、世界恐慌の煽りを受けた昭和恐慌の影響で、実家のモスリン問屋の経営が傾き多額の借金を抱え廃業。家計を助けるために写譜のアルバイト等を始め、その後、コロムビアでレコードの吹き込みの仕事を始めるようになる。1931年(昭和6年)7月、藤山一郎の芸名で在校中にコロムビアからデビューし「酒は涙か溜息か」などがヒット。1933年(昭和8年)東京音楽学校を首席で卒業しビクターに専属歌手として入社。その後、テイチクに移籍し「東京ラプソディ」「男の純情」などがヒット。テイチクとの契約終了後は再びコロムビアに戻り、「懐かしのボレロ」「上海夜曲」などがヒット。戦時中は、戦意高揚のための軍歌なども歌い、南方戦線へ慰問にも行くが、終戦とともに慰問先で捕虜となり、約1年後にようやく帰国。戦後の1949年(昭和24年)『長崎の鐘』とともに『青い山脈』が大ヒット。昭和の日本を代表する国民的歌手。


 ずっと「紅白」を見ていました…。ウラの「年忘れにっぽんの歌」の方は録画で見ます。

 最近の「紅白」は、昔とは違いバラエティ色が強いと、お嘆きの方も少なくないかと思いますが、ワタシは、今回の第70回の記念回は、楽しく見ることができました。
 たしかに、合戦色が強く、純粋に歌を競っていた頃とはだいぶ雰囲気は違いますが、国民的ヒット曲が出にくくなったこの時代ですから、そういうカタチが求められているのかもしれません…。

 まあ、70年近くもやっていれば、そりゃあ、いろいろと変わって当然です。昔は、『報道ステーション』みたいな、いわゆる「ニュース・ワイド番組」などは存在しませんでしたし、洗濯機に付いていた脱水ロ〜ラ〜だって、乾燥までやってくれる全自動洗濯機に変わって、世の中から消えました…。

 お正月と言えば、長らく「紅白」と「染之助・染太郎」だったように、そもそも、紅白は、毎年恒例の「お祭りごと」です。最近の紅白も、歌が中心の総合エンターテインメントショ〜と考えれば良いのではないでしょうか…。今回、子供も、若者も、我々のような中高年も楽しめるようなバランスの良い出演者と曲目でしたし、前半は、お祭りっぽくバラエティ色を全面に押し出し、後半は、比較的じっくりと歌そのものを聴かせる…という、メリハリのあるよくできた構成と演出だったかと思います。

 CMなどの広告収入とは関係のないNHKでも、見てもらわなければ始まらないので、視聴率は大事です。音楽も多様化し、若者のテレビ離れも進んでいます。そんな中、制作側も「家族3世代で楽しめる紅白を作る」というコトは、それはそれはタイヘンだろうと思います…。

 で、紅白と言えば、やはり、なんと言っても藤山一郎ではないでしょうか。

 1951年(昭和26年)1月3日、まだ内幸町にあったNHKで行われた第1回の『NHK紅白歌合戦』(前身の番組は前年までの『紅白音楽試合』)に白組のキャプテンとして出場し、大トリで『長崎の鐘』を歌いました。ちなみに、当時は、紅白あわせても出演歌手は14人という規模で、紅組には、菅原都々子、暁テル子、菊池章子、赤坂小梅、松島詩子、二葉あき子、渡辺はま子、白組には、藤山一郎のほかに、鶴田六郎、林伊佐緒、近江俊郎、鈴木正夫、楠木繁夫、東海林太郎がいました。

 もちろん、藤山一郎には、多くの大ヒット曲がありますが、やはり、なんと言っても『青い山脈』です。『リンゴの唄』もそうですが、戦後の日本で、多くの人の心を救い、希望を与えてくれた歌です。

 マイナー調の曲でありながら、軽快なリズムのせいか、不思議と暗い感じがしません。西條八十によるカール・ブッセのような歌詞と、天才・服部良一によるシンコペーションを多用した日本人の心の琴線に触れるメロディがたまりません。心地よく、クリアに響く、歯切れのいい藤山一郎の歌声で、それらが伝えられます。藤山一郎は、生前、「歌は言葉に曲がついたもの、曲は言葉を犠牲にしてはならない」と話しています。

 第1回の紅白では『長崎の鐘』を歌いましたが、その後、特別出演した1979年(昭和54年)の「第30回 NHK紅白歌合戦」と、40回記念で第1部を「昭和の紅白」として開催された1989年(平成元年)の「第40回 NHK紅白歌合戦」では、『青い山脈』を歌っています。とくに、40回記念の1989年(平成元年)では、当時、78歳にもかかわらず、背筋をピンと伸ばし、変わらないイメージのよく響く歌声を披露し、あらためて、その格調高い歌唱と楽曲に感動したものです。

 1981年1月1日に放送されたTBS『全国歌謡曲大調査、明治から昭和この百年!史上最大のベストテン』では、『青い山脈』が1位を獲得。さらに、発売から40年経った1989年にNHKが放映した『昭和の歌・心に残る200』でも第1位。
 桑田佳祐が2009年に発売したライブビデオにも収録されていたり、2009年の「第60回 NHK紅白歌合戦」では、ジャニーズの『NYC boys』がメドレーの中で歌ったり、2012年のソフトバンクのCMでも使われ、耳にしたコトを覚えているヒトも少なくないでしょう。
 さらに、昨年末、2019年、第70回の記念紅白の事前告知番組でも、40回記念回の『青い山脈』の映像が放送されるなど、長年にわたり、発売から70年が経った今でも愛され続けています。

 ご存知の通り、もともと『青い山脈』は、藤山一郎と奈良光枝のデュエット曲で、石坂洋次郎の小説をもとにした映画『青い山脈』の主題歌として作られた曲です。このレコードは、7月の映画の公開に先行して3月に発売され、映画が公開されるころには既に大ヒットとなっていて、映画館でみんな歌えるくらいでした。

 ちなみに、映画『青い山脈』は、その後も3回製作されていますが、この主題歌は変わることなく使われていて、1957年(昭和32年)版では宝田明が、1963年(昭和38年)版では神戸一郎と青山和子が、1975年(昭和50年)では石川さゆりと潮哲也が歌っています。さらに、1974年(昭和49年)のテレビドラマ版では、坂口良子と志垣太郎(レコードでは円谷弘之)が歌っていたりもします…。

 レコードは、10インチ(25センチ)のSP盤で、このころは、まだ写真やタイトルが書かれたジャケット的なモノはなく、レコード会社の名前が入ったパリパリした袋(スリーブ)に入っていましたね…。中身が何かは、真ん中の丸いマドから見えるレーベルでしかわかりませんでした。

 で、ハナシは、紅白に戻りますが…、それでも、せめて「懐かしの名曲コーナー」とかやってくれないですかね…。あるいは、歌詞の内容をかみしめたり、その楽曲と歌唱だけを楽しみたいヒトたち向けに、(主音声と副音声みたいに)マルチチャンネルを使って(メジャーリーグ中継が伸びた時に、途中からチャンネルが変わっちゃうヤツ)、その歌手しか映さない副映像を放送するっていうのはどうでしょう…。

 それから、やっぱり、なるべくカラオケじゃなくて、ライブ感を感じることができる生演奏でやってほしいものです…。今回の紅白を見ていても、その違いは歴然としています。空気感やドライブ感、ダイナミクス、歌との一体感が全く違って聴こえます。
 だいたい、カラオケで歌うコトを、お客(視聴者)は、誰も望んでいません。モチロン、「そんなことはど〜でもいい…」ってヒトもいるかと思いますが、でも、少なくとも、お客(視聴者)側が希望したり、お客(視聴者)のコトを考えてやっているコトではありません。ただ単に、制作側の都合で、「大きなセットが置けない」とか「舞台転換に時間がかかる」とか「コストがかかる」とか、そういった理由でしょう…。

 コンサートとは、基本的には生の演奏を聴きに行くモノです。カラオケでの歌唱は、ショッピングセンターのキャンペーンのステージでも聴けます。
 この年末年始にも、多くのクラシックのコンサートがあり、生のオーケストラの音を楽しもうとどこも満員ですが、それがもし「CDコンサート」だったら、聴きに行くでしょうか? あるいは、オペラをカラオケでやるでしょうか? ライブでは、必ずしも、キチンと整音されたCDみたいな音が良いわけではないのです…。

 時代とともに、構成や演出が変わるのは当然ですし、自然なコトかと思いますが、音楽を楽しむ番組であるとすれば、このカラオケ問題を含め、もっと音楽を中心に考えた構成や演出にしてほしいものです。
 とくに、NHKですから、音楽業界のためにも、そういう姿勢を持つべきではないでしょうか…。実際、NHKの音楽番組、「うたコン」や「新BS日本のうた」では、今でも、ちゃんと生演奏でやっているではないですか!

 みなさま、あけましておめでとうございます! みなさまに、幸多からんことをお祈りします!

 本年も、「MUSIC GUIDE」をどうぞ宜しくお願い致します!

(2020年1月1日 西山 寧)

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