第13回 辛島美登里「サイレント・イヴ」(1990年) -MUSIC GUIDE ミュージックガイド

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第13回 辛島美登里「サイレント・イヴ」(1990年)

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辛島美登里「サイレント・イヴ」

辛島美登里(からしま みどり)「サイレント・イヴ」(4:43) 作詞/作曲:辛島美登里、編曲:若草恵
1990年(平成2年)11月7日発売 8cm CD シングル  税込¥930- FHDF-1060 ファンハウス
プロデューサー:金子文枝(FUN HOUSE) 演奏:島村英二(Dr)/高水健司(EB)/松原正樹(EG)/島健(Kbd)/若草恵(Kbd)/斎藤ノブ(Per)/篠崎正嗣ストリングス、ほか

1989年にシングル「時間旅行」で歌手としてメジャーデビューした、鹿児島県出身の作曲家でありシンガーソングライターでもある辛島美登里の6枚目のシングル。TBS系のテレビドラマ『クリスマス・イヴ』の主題歌として書き下ろされた楽曲で、オリコンでは週間1位となり、1990年度の年間65位、翌年1991年度には年間12位と、年をまたいでチャートイン。大ヒットを受け、1年後の1991年10月25日には、カラオケトラック付きとしてジャケットも新たに再発売された(FHDF-1129)。その後、「あなたは知らない」(TBSテレビドラマ「愛はどうだ」主題歌)、「愛すること」(NHKドラマ新銀河「ラスト・ラブ」主題歌)など多くのシングル曲が、ドラマ主題歌、番組のテーマ曲、CMソングなどにも使われヒット。「愛すること」では、第37回日本レコード大賞・作詞賞を受賞。歌手デビューの前は、作曲家として、永井真理子、浅野ゆう子、斉藤由貴、酒井法子、観月ありさ、森口博子など、多くのシンガーに楽曲を提供しており、2019年12月18日発売、城南海の最新アルバム『one』にも2曲書き下ろしている。


 きのう、街の至る所でケーキを売っているのを目にして「今日はクリスマスイブなんだな…」と気がつきました。夕方、ケーキ屋の前は大行列。コンビニでは、おまわりさん二人が楽しそうにチキンを買っていました…。しまいには、YAHOO!知恵袋に「クリスマスケーキを食べる日は、正しくは24日ですか?25日ですか?」などという、なんとも平和な質問がたくさんあったり…。

 「クリスマスだからって、ケーキを食べなくてもいいじゃん!」とは思いますが、たとえば、お彼岸の「ぼた餅」とか、「柏餅」や「ひなあられ」、中秋節の「おだんご」と考えれば、なんとなく納得できたりもします。ちなみに、小学生のころ、浄土真宗のお坊さんのおウチの「クリスマス会」で、ケーキを頂いたことがあります…。なんとも懐が深いですね。

 でも、「クリスチャンでもないのに、クリスマスで騒ぐな!」とか、そういうヤボなコトは言いません…。街はイルミネーションで華やかに飾られ、子供たちは、ケーキを食べながらサンタさんからのプレゼントを楽しみにする…。商業主義の結果かもしれませんが、べつに何も悪いコトはありません。ただ、なんかシャクなので、ワタシは、クリスマスイブにケーキを買ったりはしません。

 ところで、クリスマスは、たしかに「イエス・キリストの誕生(降誕)を祝う日」ではありますが「イエス・キリストの誕生日」ではありません。もっと言うと、イエス・キリストは名前ではありません。
 「ミサ」というのはカトリックで、プロテスタントでは「礼拝(れいはい)」と言います。「神父」がカトリックで、プロテスタントでは「牧師」。さらに、キリスト教では、カトリックもプロテスタントも、旧約聖書と新約聖書の両方を合わせて「聖書」と言います。旧約聖書がカトリック(旧教)で、新約聖書がプロテスタント(新教)、というのは間違いです。もっと言うと、旧約聖書は、ユダヤ教の正典でもあり、イスラム教のコーランの一部でもあります。

 ちなみに、「聖書」いわゆる「バイブル」という本は、世界で最も読まれている史上最大のベストセラーで、その総売上は数百億冊とも数千億冊とも言われ、正確な数は誰にもわかりませんが、いずれにしろケタ違いです。「ノンフィクション部門で最も売れた本」としてギネスにも載っています。

 クリスマスといえば、バブルの頃を思い出します…。

 当時のクリスマスは、ティファニーの『オープンハート』を買って、マキシム・ド・パリ』とか『サバティーニ』で高級ディナーを食べて、『赤プリ』に泊まる(旧・赤坂プリンスホテル、現在のザ・プリンスギャラリー東京紀尾井町)…というのが、イケてるモデル・ケースのように言われていました。
 高級ホテルだけでなく、渋谷の円山町のラブホ街までも大混雑となり、ものすごい数のカップルが彷徨う光景も見られました。テレ朝の『トゥナイト』では、山本晋也カントクが「スゴイですね〜 バカですね〜 ほとんどビョ〜キ」とレポートしていたことを思い出します…。

 そんなバブル真っ只中の1990年(平成2年)、『サイレント・イヴ』は、仙道敦子と吉田栄作が主演したTBS系のテレビドラマ『クリスマス・イヴ』(脚本:内館牧子)の主題歌として書き下ろされ、大ヒットとなりました。

 歌声やメロディ、アレンジは勿論、実に良くできたこの歌詞について、作詞をした辛島美登里は、「不倫をしていた大阪出身の友達が言った言葉がもとになった」と言っています。その友達は、「不倫をしていると何でも買ってもらえるし、やさしくもしてくれるけど、盆と正月だけは会えんのよ…、大事な時にはいないんよ…」と言っていたそうです。

 女の人はティファニーのネックレスを買ってもらって、男の人はホテルを一生懸命予約する…、そんなことが普通だった頃に、辛島美登里は、「そういう人たちもいるかもしれないけど、そうじゃない人たちもきっと沢山いるはず」と思い、頼まれた主題歌のドラマはトレンディドラマにも関わらず、「トレンディじゃない感じの切ない歌を書こう」と思って書いたのが、この『サイレント・イヴ』」です。

 良い歌詞の多くは、実際に書かれている言葉によって「書かれていない、その言葉の裏側にある気持ち」を、聴き手に無意識にイメージさせ、感情を刺激します。

 たとえば、「さようならを決めたことは けっしてあなたのためじゃない…」というフレーズの裏側には、「自分の意思で決めた…と 思いたい自分」もいて、そこが逆に、より切なさを感じさせます。また、最後の方では、「ひとりで泣かせてね… もう一度 私の夢をつかむまで…」とあり、その裏側には、ひとりで前に進もうという希望や力強さも見えます。

 「けっしてあなたのためじゃない…」に関して辛島美登里は、「男勝りな自分の気持ち…」とも言っていますが、そのへんは書くと長くなってしまうので、ココでは割愛します。ご興味のある方は、昔のインタビューに詳しくありますので(下にリンクを付けておきます)、そちらでお読みくださいませませ…。

 とにかく、最小限の言葉数、ひとつも無駄な言葉のない歌詞で、かつ、とても耳に残る印象的なフレーズがたくさんある曲です。ひとりで過ごす女性の姿が、映像的に浮かび上がり、その微妙な心の動きに切なくさせられます。
 さらに、それらの言葉を乗せたメロディも、若草恵によるストリングスが美しい編曲も、島健や高水健司、松原正樹といった超一流の職人ミュージシャンによる演奏も、どれをとっても完璧としか言いようのない作品です。

 そして、何より、言葉とメロディーを伝える役割、クリスタルのような透明感のある独特の歌声も最高です。決して押しつけがましくなく、あたたかく、やわらかい…。ヒットしないワケがありませんね…。何度聴いても感動する名曲です。

 この『サイレント・イヴ』は、稲垣潤一、沢田知可子、つるの剛士、青木隆治、永井みゆき、島津亜矢、水森かおり、クリス・ハート、林部智史…などなど、数多くの歌手にカバーされており、最近では、辛島美登里と同郷(鹿児島県)の「西田あい」と「城南海」のカバーもオススメです。

 ちなみに…、テレビ朝日『タモリ倶楽部』の名物コーナー『空耳アワー』のオープニング・ジングルを歌っている「HIROSHI & MIDORI」の MIDORI は、辛島美登里です(HIROSHI は 同番組ナレーターの武田広)。

 さて、今日は12月25日…、売れ残ったケーキを安く買うのが、毎年の楽しみです…(え〜っ !!!)

(2019年12月25日 西山 寧)

『サイレント・イヴ』歌詞を見る

辛島美登里 歌詞一覧
作詞:辛島美登里 歌詞一覧
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ウィキペディア 辛島美登里

歌ネット インタビュー・アーカイブ 辛島美登里(2012年9月)


辛島美登里「サイレント・イヴ」ライブ
2015年12月22日 辛島美登里 Christmas Symphonic Concert 2015
すみだトリフォニーホール