第10回 槙みちる「若いってすばらしい」(1966年) -MUSIC GUIDE ミュージックガイド

色あせない昭和の名曲
便利でないことが、しあわせだった、あのころ …

週刊・連載コラム「なつ歌詞」

時代を思い出す扉が 歌であってくれればいい … (阿久悠)

第10回 槙みちる「若いってすばらしい」(1966年)

あなたが いつか言ってた
誰にでも 明日がある
だから あの青い空を見るの ……
MUSICGUIDEから最新情報をお知らせします。

槙みちる「若いってすばらしい」

槙みちる(槇みちる)「若いってすばらしい」(2:33) 作詞:安井かずみ、作編曲:宮川泰
1966年(昭和41年)3月発売 7インチシングルレコード (45rpm STEREO) SV-377 日本ビクター

大阪府出身、16歳の時、渡辺プロにスカウトされ上京し、1965年『可愛いマリア』でデビューした歌手、槙みちる4枚目のシングル(デビューから3枚目のシングルまでは「槇みちる」の表記で、その後も「槙」と「槇」で表記が何度も変わる)。『若いってすばらしい』は、NHKの番組「若い十代」の今月のテーマソングとして披露されたことで評判を呼びレコード化。その後、大ヒットとなる。発売当時は18歳でアイドル的な露出をしていたが、わずか4年で表舞台からは去る。その後、かねてからの希望だったスタジオミュージシャンの道に進み裏方として成功。これまでに歌ったCMソングは3千曲以上にもなり、岩崎宏美「ロマンス」、山口百恵「しなやかに歌って」、ピンク・レディー「モンスター」など数多くのヒット曲のバックコーラスも担当。2010年7月放送『NHK歌謡コンサート』の『時代の歌 こころの歌』のコーナーでは、40年以上たっても変わらない歌声をこの曲で披露。現在もソロ歌手として活動しており、今年、2019年11月には、ニューヨーク・レコーディングのアルバムをリリース。

 夕方、大学生とおぼしき男女7〜8人の集団と、駅前ですれ違いました。キャッキャしていて、若者たちは、実に楽しそうです。もちろん、彼らなりにイヤなことやツライことはあるでしょう。でも、将来、味わうことになるであろう本当の苦しみや辛さは知らず、希望と明るい未来だけがあり、たいした悩みはなく、髪は黒く、カラダのドコにも痛いところはなし…。まったく羨ましい限りです。若いって、いいもんです。それだけで価値があります。

 まさか、ベルリンの壁がなくなるとは夢にも思っていなかったように、香港がホントに中国に返還されるなんて考えてもみなかったように、はたまた、レコード店や駅前商店街がなくなるなんて思わなかったように、若い頃は、ジブンが50歳や60歳や70歳になるとは、これっぽっちも思っていませんでした…。なってみて初めて驚きます…「ジブンがそんな歳になっただなんて信じられない…」と。

 誰でも、ある程度の年齢を重ねると、「若いころに戻りたい…」そんなコトを思います。痛くない腰やヒザ、フサフサでツヤツヤした髪、徹夜で頑張れる体力や、「恐れ」や「いらんコト」を知らない真っ直ぐなココロ、「もう一度、あの頃に戻ってやり直せれば…」などと思うものです。それは当然で、自然なコトです。

 でも、それがエスカレートすると、ちょっと困ったことになっていきます。ジブンの若かりし頃を思い出し、「あの頃は良かった」だの「最近の若者はなってない」だの言いはじめ、若者たちにとっては「面倒くさい年寄り」という存在になっていきます…。

 「ソ ソ ソクラテスか プラトンか〜♪」(1976年『ソ・ソ・ソクラテス』野坂昭如)でも知られる(若者はそんな歌は知りませんが)、ソクラテスの弟子でアリストテレスの師である古代ギリシャの哲学者プラトンが、あの寿命の短かった時代に、「最近の若者は…」などとホントにそんなコトを言ったのかどうかは知りませんが、まあ、つまりは、近代になってからは、「最近の若者は…」は、ずっと繰り返し言われているということなのでしょう。だから、私たちが若かりしころにも、私たちのコトを「最近の若者は…」と言っていたヒトは大勢いたハズです。

 だいたい「昔の方が若者は品行方正だった」なんてコトもありません。私たちも迷惑をかけながら、怒られながら育ってきています。人間の本質は、いつの世も変わりません。

 だから、若者を一方的に批判するのはヤメたいものです。反対に若者の側から見れば、私たちのコトを「最近のオッサンやオバハンは…」と思っているかもしれません…。あたかもジブンが絶対的優位であるかのように、「最近の若者は!」を錦の御旗として無意識にジブンを正当化し、周りから見れば実に身勝手で社会性を欠いた言動をしているオッサンやオバハンを見かけるコトも少なくありません。

 「あの頃はよかったね〜」と昔を懐かしみ、思い出に浸るのは悪いコトではありませんが、だからと言って「今は良くない」とするのは違います。なぜなら、その良くない環境を作り出したのは、他ならぬ自分自身だからです。
 それに、子供は大人を見て学びます。もしも仮に「今の若者がなっていない」のだとすれば、それは、その前の世代、つまりは、私たちに責任があるとも言えます。

 クドイようですが(だいたい、いつもクドイですが)、「急激な技術革新や社会の変化についていけない…」と感じることは自然なコトです。ワタシも、日々、そう感じています…。
 しかし、時代や若者のせい、ジブン以外の「何かのせい」にしてはいけません。言葉も社会も変わってゆくのが自然なことです。いくつになっても、その変化を受け入れられる柔軟性や好奇心、新しいコトに挑戦したり、成長し続けたいと思うキモチを、持ち続けたいものです…。
 それが、つまりは、若くいられる秘訣ではないでしょうか…。いくつになっても、若いってすばらしいコトです…。

 で、槙みちるの「若いってすばらしい」は、50年以上!も前の曲ですが、今聴いても、明るく、爽やかで、元気になれる歌です。作詞の安井かずみ、作編曲の宮川泰、そして、槙みちるが集まって、わずか30分でできたという歌詞もメロディも素晴らしいだけでなく、槇みちるの歌唱が本当に魅力的です。
 言葉の発音と響きの明るさ、伸びやかで、パンチがあるのにやわらかい歌声…。「気持ちにな〜る〜の」や「誰に(ん)でも あしたがあ〜る〜」のあま〜い歌い方もグッときます。

 作曲した宮川泰は、自身の著書『若いってすばらしい 夢は両手にいっぱい 宮川泰の音楽物語』(2007年、産経新聞出版)の中で、「『明日があるさ』を聴いて感動して、俺もこんな曲を作りたいと思って作った」と言っています。たしかに、そう言われると、『明日があるさ』(作詞:青島幸男、作曲:中村八大、歌:坂本九)も、同じように元気になれる名曲で、今聴いてもワクワクします。
 著書のサブタイトルにもなっていることからもわかるように、宮川泰自身も「自分の曲の中で一番好きな曲」だそうです。自身のメロディだけでなく、「歌詞がとってもいい、明るく元気になってウキウキしてくる…」とも書かれています。
 さらに、こんなことも言っています。この歌詞について、「単に年齢が若いことがいいいことだと言っているわけじゃないんです。老いも若きも、誰も彼もが、年齢に関係なく若々しく生きていこうよ、というメッセージが込められたものなんです…」と。だから、半世紀以上が経った今でも、名曲として残っているんですね…。

 それにしても…、最近の若者って、どうしてこういう曲が作れないんですかね……

 あっ、言っちゃった!

(2019年12月 西山 寧)

『若いってすばらしい』歌詞を見る

作詞:安井かずみ 歌詞一覧
作曲:宮川泰 歌詞一覧

1966年のヒット曲を見る 「歌ネット・タイムマシン」


収録CD『ビクター TWIN BEST 青春歌謡大全集』
収録CD『That’s WATANABE HIT SONGS COLLECTION テレビ黄金時代 TV HIT PARADE』
収録CD『ロッテ 歌のアルバム [ビクターエンタテインメント編] 』
収録CD『ベストヒット!青春歌謡』

まきみちる オフィシャルサイト

ウィキペディア 槇みちる