第68回 杏里(ANRI)「砂浜」(1981年) -MUSIC GUIDE ミュージックガイド

色あせない昭和の名曲
便利でないことが、しあわせだった、あのころ …

週刊・連載コラム「なつ歌詞」

時代を思い出す扉が 歌であってくれればいい … (阿久悠)

第68回 杏里(ANRI)「砂浜」(1981年)

君の小さな誤ち 許す事できないで
大切な人を一人 失くしたんだ あの頃 ……
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杏里(ANRI)「砂浜」

「砂浜」杏里(ANRI)(3:54) Key= Eb A面「コットン気分」(作詞・作曲:かおる、編曲:岡田徹)
作詞:かおる(伊藤薫)、作曲:かおる(伊藤薫)、編曲:岡田徹
ディレクター:常富喜雄、レコーディングエンジニア:鈴木幸一
1981年(昭和56年)4月21日 発売 EP盤 7インチシングルレコード (45rpm、STEREO) 
¥700- 7K-19(OS-232) FOR LIFE / フォーライフレコード

<セルフカバー>
1987年 アルバム『meditation』収録バージョン(フォーライフ 33KD-116)
1995年 アルバム『OPUS 21』収録バージョン(フォーライフ FLCF-3580)
2003年 アルバム『R134 OCEAN DeLIGHTS』収録バージョン(フォーライフ FLCF-3967)
2014年 アルバム『Surf & Tears』収録バージョン(IVY Records QYCI-10016)


杏里(ANRI)(あんり)
1961年(昭和36年)神奈川県出身の歌手、作詞家、作曲家。2000年から、米国・ロサンゼルス在住。
1978年、高校2年生、17歳の時、『オリビアを聴きながら』でフォーライフ・レコードから歌手デビュー。1982年発売、10枚目のシングル、花王の TV-CM でも使われた『思いきりアメリカン』が ヒットし、翌1983年に発売された 5枚目のアルバム『Bi・Ki・Ni』もヒットする。さらに、同年、テレビアニメ『キャッツ♥アイ』のオープニングテーマにもなったシングル『CAT’S EYE』や『悲しみがとまらない』が大ヒットしたことで大ブレイク。
その後も、洗練されたおしゃれな夏のイメージで、『気ままにREFLECTION』『HAPPYENDでふられたい』『SURF & TEARS』『SUMMER CANDLES』『最後のサーフホリデー』『ドルフィン・リング』などヒット曲多数、多くの曲がテレビCMでも使われた。1994年には、長野オリンピック冬季競技大会公式イメージソング『SHARE 瞳の中のヒーロー』もヒット。
2000年、米国・ロサンゼルスに移住してからは、レコード会社を日本クラウン、コロムビア、ユニバーサルへと移籍。その後、2011年にはワーナーに移籍し、デヴィッド・フォスターが作曲した日本航空のテーマ曲『I Will Be There with You ~あふれる想い』を収録したアルバムをリリース。
2013年にはアイビーレコードへ移籍。デヴィッド・フォスター、ピーボ・ブライソン、ジョニー・ギル、デイヴ・グルーシン、スティーヴ・ガッドら、豪華アーティストやミュージシャンとコラボし、アルバムをコンスタントにリリースしている。


結果的に… 角松敏生と小林武史を育てた杏里…。
『オリビアを聴きながら』ほど知られた曲ではないけど…、
「コッチの方が好き!」というヒトも少なくない名バラード!
飽きのこない、ノスタルジックな気分にさせられる、まさに隠れた名曲!


 読者の皆さんの中には、「今回のジャケット写真、間違えてるんじゃね?」(最近の若者風に言ってみました)と思われた方もいらっしゃるかと思います……。
 今回は、ジャケットに大きく書かれている A面の『コットン気分』ではなく、左下にち〜っちゃく書かれているB面曲『砂浜』について書きます。
 
 もちろん、A面の『コットン気分』もイイ曲ですし、ワタシも大好きな曲ではあります。「コロンより爽やかで、香水より気軽なパフュームデオドラント」のナレーションが付いた、花王『リマーラ』の CMソングとして耳にした方も少なくないでしょう。CM には、杏里も出ていましたし。
 
 でも、今回は『砂浜』です……。
 
 このコラムで B面曲を取り上げるのは初めてですし、おそらく、これまで書いてきた中で、最も知られていない曲かもしれません……。

 いわゆる、杏里の代表曲とされている『オリビアを聴きながら』『思いきりアメリカン』『CAT’S EYE』『悲しみがとまらない』『SUMMER CANDLES』みたいに、「誰もが知っている曲」ではありませんが、ファンの間ではとても人気が高い、実にイイ曲なんです。
 
 ず〜っと追っかけている熱烈なファンでなくても、ワタシみたいに、ちょっと杏里を聴いていたというようなヒトの中にも、「この曲が 一番 心に残っている……」という方も少なくないようです。

 実際、1981年のリリース後、シングル B面曲だったにも関わらず、ベストアルバムやセルフカバーアルバムの多くに収録されていて、ワタシの知る限り10枚はあります……。
 コンサートでも欠かせない曲になっているみたいで、杏里自身も「リクエストがとても多い曲」と言っています。
 
 『砂浜』が収録された「ベストアルバム」「セルフカバーアルバム」

 1982年『思いきりアメリカン 〜I Love Poping World,Anri〜』(ベスト)フォーライフ
 1986年『ザ・杏里』(ベスト)フォーライフ
 1987年『meditation』(バラード・セルフカバーアルバム)フォーライフ
 1988年『MY FAVORITE SONGS』(ベスト)フォーライフ
 1995年『OPUS 21』(新録 セルフカバー・ベスト)フォーライフ
 2000年『Anri The Best』(全曲オリジナル音源でのベスト)フォーライフ
 2003年『R134 OCEAN DeLIGHTS』(デビュー25周年記念ベスト)フォーライフ
 2007年『a day in the summer The Best from “16th Summer Breeze” and “OPUS 21″』
                            (ベスト)フォーライフ
 2009年『ANRI AGAIN Best Of Myself』(新録 セルフカバー・ベスト)ユニバーサル
 2014年『Surf & Tears』(新録 セルフカバー・ベスト)アイビーレコード
 
 ねっ、スゴイでしょ。とくに、1995年の『OPUS 21』とか、2003年の『R134 OCEAN DeLIGHTS』とかは、『砂浜』がアルバム1曲目だったりもします。まあ、ベスト盤がこんなにたくさん出てるってことだけでもスゴイけど……。
 
 そんなワケで、この『砂浜』(『SUNAHAMA』ってローマ字表記の時もある)には、1981年 初出のオリジナルバージョン以外に、ワタシが知っているだけでも、4つの別バージョン、セルフカバーがあったりします。
 ベスト盤だけでなく、何度もリテイクされているということだけでも、いかにこの『砂浜』が名曲であるかということの証明です。
 
 『砂浜』のバージョン違い
 1981年 シングル『コットン気分』B面収録(オリジナルバージョン)
 1987年 アルバム『meditation』収録バージョン(『SUNAHAMA』表記)
 1995年 アルバム『OPUS 21』収録バージョン
 2003年 アルバム『R134 OCEAN DeLIGHTS』収録バージョン
 2014年 アルバム『Surf & Tears』収録バージョン
 
 で、こういう場合、どうしても、「やっぱり、最初に聴いたバージョンが好き……」ってなってしまうのが世の常で、ワタシも、アレンジ、歌唱とも、オリジナルバージョンが好きです。
 でも、1987年のアルバム『meditation』、2014年のアルバム『Surf & Tears』収録バージョンも、なかなか良かったりもします。まあ、そのへんは、好みもありますけど……。
 
 さて、杏里と言えば……、最近は、2016年くらいから、欧米を中心とした海外での「80’s ジャパニーズ・シティポップ・ブーム」で(コロナ前は、海外から、東京の中古アナログレコード店に爆買いするためにたくさん来てた)、山下達郎や竹内まりや、大貫妙子、吉田美奈子、松原みき、大瀧詠一、角松敏生らとともに、杏里も人気です。
 
 杏里の場合、デビュー曲こそ、尾崎亜美が作詞作曲した名バラード『オリビアを聴きながら』でしたが、どちらかと言えば、1982年にリリースされた10枚目のシングル『思いきりアメリカン』でブレイクして以降、アルバム『Bi・Ki・Ni』くらいからのファンキーなギターのカッティングが印象的な、キラキラした夏の海のイメージが強いのではないでしょうか……。
 
 余談ですが、『コットン気分』と同じく、花王『リマーラ』のCMソングになった『思いきりアメリカン』から、杏里も歌詞を書くようになります……、この曲は作詞家の竜真知子と共作ですが。

 その後、作詞に加え、作曲も手掛けるようになり、『SUMMER CANDLES』(作詞: 吉元由美、作曲: 杏里、編曲: 小倉泰治)や 『ドルフィン・リング』(作詞・作曲: ANRI、編曲: 小倉泰治)などの自身のヒット曲はもちろん、多くの歌手に楽曲提供もしています。

 で、実は、この『思いきりアメリカン』は、当時、杏里のバックバンドを務めていた小林武史が、初めて人に提供した曲だったりもします……(編曲は佐藤準)。
 
 そして、杏里が洗練された夏のイメージのアーティストとなっていったのには、当時、同じ事務所にいた角松敏生との出会いがありました。

 『思いきりアメリカン』に続く 11枚目のシングル『Fly By Day』(作詞・作曲:角松敏生、編曲:瀬尾一三)を角松敏生が提供したことから杏里のアレンジに関わるようになり、1983年当時は、まだ無名だった角松敏生が、5枚目のオリジナル・アルバム『Bi・Ki・Ni』のA面収録の5曲全曲の作詞・作曲・編曲・プロデュースをまかされたのです……。

 シングルカットもされた『Lady Sunshine』や『Good Bye Boogie Dance』『Dancin’ Blue』(以上、作詞・作曲・編曲:角松敏生、ブラスアレンジ:佐藤準)、『Surf City』(作詞・作曲・編曲:小林武史)などを収録したこの名作アルバムは、当時、自己最高のオリコンアルバムチャート27位を記録するヒット。
 
 で、1983年の6月に、このアルバム『Bi・Ki・Ni』とシングル『Lady Sunshine』が同日発売となったのですが、さらに、その年の8月には『CAT’S EYE』(作詞:三浦徳子、作曲:小田裕一郎、編曲:大谷和夫)、11月には、角松敏生がプロデュースしたシングル『悲しみがとまらない』(作詞:康珍化、作曲:林哲司、編曲:角松敏生/林哲司)と立て続けにヒットが出たことで、杏里は、おしゃれで洗練されたイメージの本格派のシンガー、アーティストとしてのポジションを確立……。
 
 1978年のデビュー時こそ『オリビアを聴きながら』の大ヒットで華々しかった杏里でしたが、なにしろ、17歳の高校2年生でしたし、その後、アイドル路線がうまくいかず、パッとしない数年を過ごしたのち、ココでブレイクしたというワケです。

 だから、角松敏生も小林武史も杏里に関わったことがきっかけで、その後、人気者になっていったのです……、杏里自身はもちろん。
 
 さて、この『砂浜』は、そんな大ブレイクする前の低迷期、しかも、シングルのB面曲…… なのに、ベスト盤には必ずと言っていいほど収録され、何度もリテイクされるほど、多くの人から愛されています。
 
 もちろん『オリビアを聴きながら』は、いつ聴いても名曲中の名曲と思いますが、『砂浜』は、『オリビアを聴きながら』ほど派手ではありませんが、むしろ、そこが魅力で、どちらかと言えば地味なんですが、何度聴いても飽きない不思議な魅力のある曲です……。バラードと言えばバラードですが、ミディアムテンポですし……。
 
 メロディはサビ始まりで、サビを「A」とすると、あとは「B」「B’」しかないシンプルな構成です。
 ですが、その全くスキのないメロディが、どこもかしこもいちいち良く出来ていて、ワタシたち、日本人の心の琴線に触れてきます。
 
 歌詞だけを読んでも、とくに何かスゴイことを言っているわけでもないのですが、ごくフツ〜の言葉で、さりげなく普遍的なことを言っています。それを、このメロディにのせて、杏里の明るい響きの歌声で聴かされると、なんだかココロが揺さぶられてしまうのです……。
 
 歌詞のシチュエーションは砂浜ですし、メロディもサウンドも夏っぽいこともあって、なんともノスタルジックな気分にさせられたり、若かりしころの思い出が頭の中に浮かんできたり、時には、ジブンの過去の過ちを思い出させたりもします……。
 
 ちなみに、歌詞の中に、直接的に「夏」は出てきませんから、ヒトによっては、春とか秋の砂浜をイメージするかもしれませんが……。
 
 『オリビアを聴きながら』の場合、サビの「♪出会った頃は こんな日が 来るとは思わずにいた……」という、多くの人が経験する失恋した時のキモチに、聴いた人は共感します。そして、このキラーフレーズに、この曲の全てが集約されています。
 
 『砂浜』も、表面的には、失恋ソングのように書かれてはいますが、「♪悲しみの夜や 淋しい夜更けはいつも……」「♪少年の頃の心 何処に行ってしまった……」「♪君の小さな誤ち 許す事できないで……」「♪みんな 見せかけの恋や 形だけの愛ばかり……」などなど、ただ単に恋愛のハナシに留まらず、ジブンのこれまで人生を、自然と振り返らせるトリガーとなるような言葉が耳に残るのです……。
 
 な〜んて言ったらいいのかな〜、伝わるかな〜、この曲を好きなヒトにはわかってもらえてると思うけど……。

 誰でも、ジブンの青春時代を思い出して、胸がキュンとするようなことがあるハズ……、そんなキモチにもさせられるというか……。
 
 だって、誰でも、胸が痛むような苦い思い出や、若かりし頃の失敗や後悔があるものです。

 恋愛だけでなく、そういう聴き手の心の内面にまでスッと入ってくるから、単純な失恋ソングの『オリビアを聴きながら』』よりも、より心に迫って来るのではないでしょうか……。
 
 さらに、最後の、「♪元気でいろよと 強く生きろと ひとつ 言ってくれ…… そして 夕陽で照らしておくれ……」というフレーズを耳にすると、不思議と「あしたもがんばってみようかな……」というキモチにさせられる、まるで人生の応援歌のようでもあります……。
 
 ココがまさに、歌の不思議なところで、歌詞カードを読んでも、べつに何とも思わないのに、メロディに乗せて、魅力的な歌声で歌われた時に、グッとくるのです……。
 
 言葉、メロディ、歌声に加えて、淡々としていて、余計なコトをしていないシンプルなアレンジもイイです。
 先にも書いたように、アレンジは計5バージョンありますが、オリジナル・バージョンをベースにしていますから(当たり前ですが)、いずれもシンプルです。
 
 初出のオリジナルバージョンのアレンジは、ムーンライダーズのキーボーディストだった岡田徹によるもの。基本的には、アコースティックギター、エレキギター、エレピ、ベース、ドラムの 4リズムに男性コーラスだけといった、ホントにシンプルな楽器構成です。
 
 こういう曲の場合、ついついストリングスとかを入れて盛り上げたくなるものですが、オリジナルバージョンには、一切入っていません。見事な引き算のアレンジです。
 でも、それでいて、物足りないカンジはなく、むしろ、メロディや言葉、歌声がよく伝わってきます。
 
 ストリングスの代わりに、ボーカルとぶつかりそうな音域に「ウ〜ア〜」の男性コーラスを入れたり、イントロからひたすらずっと続く、波打ち際をイメージしたようなアコギとエレピの「チャ〜ラ〜 チャ〜ラ〜」の8分のフレーズなど、とにかく、岡田徹のセンスを感じますね〜。
 
 ちなみに、岡田徹がアレンジしたオリジナルバージョンの後は、コレも杏里の代表的なバラード『SUMMER CANDLES』(1988年、作詞: 吉元由美、作曲: 杏里)をアレンジした小倉泰治がやってます……。
 
 で、この『砂浜』は、「かおる」というヒトが作詞作曲した曲ですが、「かおる」とは、欧陽菲菲の『ラヴ・イズ・オーヴァー』を作詞作曲した「伊藤 薫(いとう かおる)」のコトです。
 
 伊藤薫は、もともと、1972年、19才の時にフォークデュオでデビューしていて、その後、ソロでも活動したり、ギタリストとしてバックバンドをやったりもしていましたが、1978年に、水越けいこのデビュー曲『しあわせをありがとう』を作詞作曲したことで、作家活動をはじめたヒト。
 
 1979年、水越けいこ『ほほにキスして』(作詞・作曲:伊藤薫)がヒットしたことで、その後、多くのアーティストに作品を提供するようになります。
 
 【伊藤薫 提供曲の一部】
 石川ひとみ『ミス・ファイン』(作詞:康珍化、作曲:伊藤薫)
 甲斐智枝美『スタア』(作詞・作曲:伊藤薫)*デビュー曲
 石坂智子『ありがとう』(作詞・作曲:伊藤薫)*デビュー曲
 野口五郎『19:00の街』(作詞:伊藤薫、作曲:筒美京平)
 やしきたかじん『あんた』(作詞・作曲:伊藤薫)
 谷村新司 『Far away』(作詞・作曲:伊藤薫)
 前川清『愛がほしい』(作詞・作曲:伊藤薫)
 高橋由美子『Fight!』(作詞:小澤幸代、作曲:伊藤薫)……
 
 などなど、いずれも『ラヴ・イズ・オーヴァー』ほどの大ヒットにはなっていませんが、どれもイイ曲ばかりです。
 とにかく、心に響くメロディと言葉を書くヒトで、抜群のポップセンスを感じます。とくに、甲斐智枝美『スタア』なんか、究極のアイドルポップとして完璧で、ホントにいい曲です……。
 
 余談ですが、『ラヴ・イズ・オーヴァー』(作詞・作曲:伊藤薫)は、最初、1979年に発売された時には、シングル『うわさのディスコ・クィーン』の B面曲でした……。それが、1980年にA面として発売され、1982年にもアレンジを変えたバージョンでA面曲として発売。さらに、1983年にはジャケットを変更したバージョンが発売と、実に4回もリリースされる中でジワジワと人気に火がつき大ヒット。
 ロングセラーとなり、1983年7月にオリコンチャート入りを果たし、12月には2週連続で1位、翌1984年度のオリコン年間ランキングでは 18位を獲得したのです。
 
 で、伊藤薫は、最近でも、水森かおりのシングル『ひとり長良川』『越後水原』『高遠 さくら路』『水に咲く花・支笏湖へ』などの作詞や、松原健之とのデュエット曲『悲しみの雨』『秋の手紙』なども提供しています。
 
 ところで、杏里と言えば、早くから、海外の大物ミュージシャンと共演していることでも知られています。
 
 1984年に発売された7枚目のオリジナルアルバム『COOOL』は、角松敏生によるプロデュースのもとロサンゼルスでレコーディングされ、ベースには、ネイザン.イースト(Nathan East)、ギターには、ポール・ジャクソン・ジュニア(Paul Jackson Jr.)、ピアノに、ドン・グルーシン’Don Grusin)、サックスには、アーニー・ワッツ(Ernie Watts)、トランペットには、ジェリー・ヘイ(Jerry Hey)…… といったように、AOR ファンにはたまらない、LA のスゴ腕スタジオミュージシャンが参加しています。
 
 そして、井上鑑が サウンドプロデュースした、1986年、10枚目のオリジナルアルバム『TROUBLE IN PARADISE』は、ロンドンでレコーディングされ、「イエス」「キング・クリムゾン」「ジェネシス」のプログレ三大グループ参加したドラマーのビル・ブルーフォード(Bill Bruford)や、ジューダス・プリーストやマイケル・シェンカー・グループ、ホワイトスネイクなどのハードロックから、ザ・フーやジェフ・ベック、TOTO まで、数多くのミュージシャンのドラマーとして活躍したサイモン・フィリップス(Simon Phillips)らも参加しています。
 
 さらに、1988年のアルバム『BOOGIE WOOGIE MAINLAND』以降は、ほぼ LA レコーディングとなっていって、先のヒトたちに加えて、ドラムのジョン・ロビンソン(John Robinson)、ベースに、ニール・ステューベンハウス(Neil Stubenhaus)、ギターに、マイケル・ランドゥ(Michael Landau)や ディーン・パークス(Dean Parks)らも参加しています……。さすがに、いい音してます……。
 
 だいたい、デビュー曲の『オリビアを聴きながら』も、高校2年の夏休みにロサンゼルスでレコーディングしてたりしますから、最初がそれですから、杏里にとって、その印象と憧れが強かったのでしょうか……。

 で、2000年には、ついに、ロサンゼルスに移住してしまいました……。
 
 LA のスゴ腕スタジオミュージシャンたちだけでなく、マイケル・フランクス、ジョニー・ギル、ピーボ・ブライソン、フィリップ・ベイリー(EW&F)らとデュエットしたり、デヴィッド・フォスター書き下ろしの曲を歌ったり(アルバムで『オリビアを聴きながら』のピアノをデヴィッド・フォスターが弾いてるバージョンもある)、デイヴ・グルーシンやスティーヴ・ガッド・バンドとレコーディングしたり、一時は、杏里との婚約も報じられたギタリスト、リー・リトナーがアルバムをプロデュースしたりと、もはや、名実ともに、カリフォルニアのシンガー……。日本人歌手で、ここまでのヒトは、なかなか他にいませんね。
 
 しか〜し、なんと言っても特筆すべきは、杏里の場合、1978年のデビュー以来、40年以上に渡って、一度も休むことなく歌手活動を続けているということでしょう……。
 だから、40年も前の初期の名曲『砂浜』だって、4回もリメイクされちゃうんですね〜。
 
 ところで、この『砂浜』が発売された1981年(昭和56年)が、どういう年だったかというと、東北や北陸のヒトたちにとっては、その前年からの「五六豪雪」を覚えていることでしょう。

 後楽園球場のコンサートで、ピンク・レディーが解散、アリスが活動停止し、大滝詠一の『A LONG VACATION』が発売。
 洋楽では、ノーランズ、シーナ・イーストン、アラベスク、クインシー・ジョーンズの『愛のコリーダ』がヒット。8月26日の後楽園球場では、星野仙一が激怒した有名な「宇野ヘディング事件」が起きました……。
 
 レンタルレコード店が大流行していて、「黎紅堂」「友&愛」「レック」「ジョイフル」の大手4社が、レコード会社13社と日本レコード協会に民事訴訟を起こされたのもこの年。
 
 日本レコード大賞は、大賞が寺尾聰『ルビーの指環』、最優秀歌唱賞は、岩崎宏美『すみれ色の涙』、そして、最優秀新人賞は、近藤真彦の『ギンギラギンにさりげなく』でした。
 
 そのほかに売れていた曲は、こんな↓カンジ。
 
 松山千春『長い夜』
 五輪真弓『恋人よ』
 チャゲ&飛鳥『万里の河』
 中島みゆき『ひとり上手』
 松任谷由実『守ってあげたい』
 南佳孝『スローなブギにしてくれ』
 クリエーション『ロンリー・ハート (Lonely Hearts)』
 西田敏行『もしもピアノが弾けたなら』
 石川ひとみ『まちぶせ』
 石川優子『シンデレラ サマー』
 松田聖子『チェリーブラッサム』『夏の扉』『白いパラソル』『風立ちぬ』
 沢田研二『ス・ト・リ・ッ・パ・ー』『渚のラブレター』『おまえがパラダイス』
 郷ひろみ『お嫁サンバ』『未完成』
 西城秀樹『眠れぬ夜』『リトルガール』
 竜鉄也『奥飛騨慕情』
 都はるみ『大阪しぐれ』
 山本譲二『みちのくひとり旅』
 松村和子『帰ってこいよ』
 石原裕次郎『ブランデーグラス』
 川中美幸『ふたり酒』
 
 ニューミュージック、歌謡曲、演歌と、ジャンルも様々に、今でも歌い継がれている名曲ばかりです。で、このほかにも、誰もが知っているヒット曲は、まだまだあるんです……。

 なんだか、音楽的に、今よりも豊かな気がしてしまうのは、ワタシだけでしょうか……。
 
 ところで、音楽メディアが CDになってからは、A面/B面 というのはなくなりましたが(今では、デジタル配信でカタチすらなくなってしまいましたが……)、そもそも、ある時期までは、レコードには、A面/B面 という表記も考え方もありませんでした。

 レベール面に、「A」「B」のかわりに、「1」「2」と書かれているレコードもありますが、最初のころは、そういう表記そのものがありません。だいたい、4曲入りとかもありましたし……。
 
 初期のSP盤は、レコード会社の名前とか広告が入ったスリーブ(レコード袋)に入っているだけで、ジャケットそのものがありませんでした。
 その後、ジャケットが登場してきたわけですが、最初の頃は、収録されている 2曲の曲名は、A面/B面 などという区別なく、だいたい同じ大きさの文字で書かれていたもんです……。
 
 とくに、ヒット曲 2曲を合わせて再発していた「ベスト・カップリング・シリーズ」とかは、どっちも A面ですし。
 
 それが、いつのころからか、「A面がメインで、B面はオマケ」みたいになってしまい、より A面曲のタイトルを目立たせようという意図から、B面曲の曲名が、どんどん小さくなっていきました……。
 
 でも……、この「Side B 砂浜」って表記、こんなに小さくしなくっても……。

(2021年 3月 31日 西山 寧)


コラム「なつ歌詞」は、基本的に、隔週 水曜日 更新です(不定休)。

次回 4/14 のコラムはお休みします。



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杏里(ANRI) 歌詞一覧
作詞:伊藤薫(かおる) 歌詞一覧
作曲:伊藤薫(かおる) 歌詞一覧


オリジナルバージョン 収録CD『ANRI the BEST』amazon

配信 1981年 オリジナルバージョン『ANRI the BEST』 mora

配信 1987年『meditation』バージョン mora
配信 1995年『OPUS 21』バージョン レコチョク
配信 2003年『R134 OCEAN DeLIGHTS』バージョン mora
配信 2014年『Surf & Tears』バージョン mora


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いずれも初出のオリジナルバージョンではありませんが……。


『砂浜(SUNAHAMA』 1987年『meditation』バージョン

『砂浜』 2014年『Surf & Tears』バージョン

『砂浜』 2003年『R134 OCEAN DeLIGHTS』バージョン

【期間限定】『砂浜』(Live at Pacifico Yokohama)