第58回 トランザム「はだしで地球を駆けるのさ」(1978年) -MUSIC GUIDE ミュージックガイド

色あせない昭和の名曲
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第58回 トランザム「はだしで地球を駆けるのさ」(1978年)

ああ 光の中を ああ 風のように …
はだしで 地球を駆けるのさ
この さわやかな世界へ ……
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トランザム「はだしで地球を駆けるのさ」

「はだしで地球を駆けるのさ」 トランザム(TRANZAM) (3:56)
作詞:浜田哲二、作曲:チト河内、編曲:チト河内
B面「パーハップス・メイビー」(作詞:三浦徳子、作曲:チト河内)
1978年(昭和53年)発売 アナログ 7インチ シングル レコード(45rpm、STEREO)
¥600 VV-14 VICTOR / ビクター音楽産業

※ 原曲:コカ・コーラ テレビ CM ソング「Come on in. Coke ’78」(トランザム)

<メンバー>
チト河内(Drs)
富倉安生(EB)
高橋伸明(Vo,EG)
熊谷安弘(EG)
小松崎純(Kbd)
後藤司(Kbd)


 GS期から活躍するチト河内(Drs)と石間秀機(EG)を中心に、ハプニングス・フォー時代のチト河内の盟友トメ北川(Vo)、石間秀機と共にフラワー・トラヴェリン・バンドで活躍した篠原信彦(Key)、新六文銭のメンバーだった後藤次利(EB)という実力派ミュージシャンたちが集まって1973年に結成されたロックバンド「トランザム(TRANZAM)」のシングル。もとは、コカ・コーラのテレビCMソング「Come on in. Coke ’78」として作られ、放送されていた曲で、シングル・レコードとして発売されるにあたり、歌詞の一部とサイズが変更されている。
 トランザムは、1974年にアルバム『トランザム』で 東芝EMI エキスプレスからデビュー。その後、日本コロムビアを経て、テイチクに移籍。1976年には『ビューティフル・サンデー』(田中星児とは別バージョン)がヒット。また、日本テレビ系ドラマ「俺たちの勲章」(「あゝ青春」)、「俺たちの旅」など「俺たちシリーズ」四部作の音楽を手がけ、同時に中村雅俊の音楽プロデュースも行う。
 コカ・コーラのテレビCMソングは、1977年〜79年まで担当。NHK 少年ドラマシリーズ「その町を消せ!」の主題歌「季節」、NHK みんなのうた「ともだちはいいもんだ」、1981年の国際障害者年のテーマソング「地球の仲間」などでも知られる。
 1981年に、グループとしての活動を休止したが、2004年のプロ野球1リーグ制問題が勃発の時に、1978年に非売品EPとして制作されたパシフィック・リーグ連盟歌『白いボールのファンタジー』(作詞:島田富士彦、 作曲:中村八大、編曲:チト河内)が注目され、26年ぶりに初めて発売され、オリコンデイリーチャートでは16位に入る快挙となった。


CMソングが書き下ろしだった時代……
実力派アメリカン・ロック・バンド「トランザム」による
さわやかすぎる コカ・コーラの CMソング!


 このトランザムというバンドは知らなくても、おそらく、55歳以上の方であれば、この曲『はだしで地球を駆けるのさ』は、「スカッとさわやかコカ・コーラ」のコピーとともに、耳にしたことがあるハズ……。

 もともとは、コカ・コーラの CM用に『Come on in. Coke ’78』として作られた曲で、その後、『はだしで地球を駆けるのさ』のタイトルで、シングル・レコードが発売されました。セールス的に大ヒットした曲ではありませんが、多くの人が耳にしていて、覚えている曲だと思います。

 テレビ CM バージョンでは、「♪Come on in. Come on in. Coke〜」となっていた歌詞は、レコード化にあたり、「♪Come on in the shininng way〜」となっています……。だからかどうかはわかりませんが、当時のシングル・レコードのジャケットには、そういうCMタイアップの表記はありません。

 さらに、CMサイズの1分半しかなかった曲なので、歌詞も足されて、ちゃんとした曲になっています。

 冒頭に SE的に 入っている、「ミニモーグ」か「ローランド SH-1」かわかりませんが、モノラル・シンセの駆け上がりから、シングル・コイルのエレキ・ギター(たぶん、テレキャスター)のアルペジオ、オブリガードのスライドギターや、分厚いコーラス……と、「スカッとさわやかコカ・コーラ」のCMコピーどおり、これ以上ないくらいカラッと爽やかなサウンドの曲でした……。

 もちろん、メロディも爽やかなのですが、サビの「♪はだしで〜 地球を かっけ〜るのさ〜」のところなどは、日本人の心の琴線に触れるような、日本的な良さもあって、耳に残ります……。

 そして、極め付きは、力強いのに重くなくて爽やかなボーカル、高橋伸明(高橋のぶ)の歌声です。実に魅力的です。その後、サーカスも、この同じ曲をコカ・コーラのCMで歌っていますが、やっぱり、高橋伸明の歌声が、この曲には合っています。こういう声のヒトって、あんまりいませんね〜。

 ちょうど、同じころ活動していたウェスト・コースト系のロックバンド「T-Bird」のボーカル、田島康史(ヘッケル)も、こんなカンジの声でした……。

 たぶん、「T-Bird」は、ほとんどの方がご存知ないかと思いますが、金沢をベースに活動していて、ビクター・フライングドッグからレコードを出していたバンド。当時、金沢在住であれば、CM で使われていた『オレンジ色の風』は聴いたコトがあるハズ……。
 あと、MBS 制作、TBS 系列テレビで、1980年から土曜の朝に放送されてた『八木治郎ショー・いい朝8時』(オール阪神・巨人が時事ネタをやってた)のオープニングテーマ曲『モーニング・ライフ』を覚えているヒトもいるかもしれません……。

 「T-Bird」は、すご〜くポップで、さわやかで、ギターがカッコよくて、いいバンドだったんですけどね〜、残念ながら、CD化はされていません……。

 で、昔は、CMソングと言えば、この『Come on in. Coke ’78』みたいに、書き下ろしで作られていたもんです……。それが、いつのころからか、出来上がった曲を CMに くっつけるようになっていって、とくに、1990年代以降は、「タイアップソング」などという言い方で、レコード会社にとっては、テレビドラマ主題歌と同じく、レコードを売るためのプロモーションになっていってしまいました……。

 だから、昔は、専門というワケではありませんが、CMソングを得意としていた作曲家もいましたね……。三木鶏郎、小林亜星、そして、関西では『探偵ナイトスクープ』の最高顧問を務めるレジェンド「浪花のモーツァルト」こと キダ・タロー……。

 三木鶏郎は、テレビ CM ソングの第1号とも言われている森永ミルクキャラメルの『やっぱり森永ネ』や、「♪牛乳せっけん よいせっけん〜」の『牛乳石鹸のうた』、『魔法使いサリー』でも有名なスリー・グレイセスが歌った『キリンレモンのうた』などなど……たくさんあります。
 CM ではありませんが、『ナショナル劇場』(ナショナル ゴールデン・アワー)の『明るいナショナル』、「♪あっかっる〜い ナッショッナ〜ル」も三木鶏郎の作曲です。

 小林亜星はと言えば、音楽の教科書にも載ったブリジストンの『どこまでも行こう』(名曲です)、シモンズが歌った「♪ほ〜ら チェルシ〜 もひと〜つ〜 チェルシ〜」の明治製菓『チェルシーの唄』、ハニー・ナイツが歌ったライオン「エメロン」の『ふりむかないで』、「♪この〜木 なんの木 気になる木」の日立製作所『日立の樹』など、それは、もう数えきれません。

 そして、「浪花のモーツァルト」ことキダ・タローは、『日清 出前一丁』や、デューク・エイセスが歌った「♪と〜れとれ ピ〜チピチ カニ料理〜」の『かに道楽』などがとくに有名ですが、北陸のヒトなら「日本海みそ」の『雪ちゃんの唄』(いまでも使われてる)も覚えていることでしょう……。

 このほかにも、「コマーシャルソングの女王」と言われた楠トシエの清酒黄桜『かっぱの唄』、「ケロリン」の『青空晴れた空』、「ダイハツ・ミゼット」の『みんみんミゼット』、野坂昭如が歌ったサントリーの『ソ・ソ・ソ・ソクラテス』、西城秀樹で有名になった『バーモントカレーの歌』(作詞:野坂昭如、作曲:いずみたく)などなど、耳に残っている書き下ろしのCMソングはいっぱいあります……、そりゃ当然ですね。

 なかでも、バズが歌った日産スカイライン『ケンとメリー〜愛と風のように〜』、ゴダイゴによる、三菱自動車『ミラージュのテーマ』、トヨタ自動車『スプリンター・リフトバック』、明治製菓『リリック』、味の素『レッド・シャポー』などは名曲です……。

 そうやって、古い記憶を辿ってみると……、CMではないですが、ダーク・ダックスが歌った東芝の企業イメージソング『光る東芝の歌』とか、米山正夫が作曲して、当時のヤンマー宣伝部長が作詞した「ヤン坊マー坊天気予報」の『ヤン坊・マー坊の唄』なんかも、思い出しますね〜。インパクトがあって、いつまでも耳に残っています……。

 トランザムも、「ハウス とんがりコーン」「雪印 ネオソフト」「マツダ ファミリア」など、100曲以上の CMソング を歌っていますが、やっぱり、コカ・コーラのシリーズが一番です。

 トランザムは、コカ・コーラの CM を1977年〜79年の3年間担当していて、最初が、1977年『Come on in. Coke ’77』(『あふれる光の中で』というタイトルで、テイチクからシングルB面で発売)、次が、1978年の『Come on in. Coke ’78』(今回の『はだしで地球を駆けるのさ』)、そして、翌年、1979年には『Come on in. Coke ’79』……。いずれも、いい曲です……。

 ちなみに、1977年にトランザムが担当する前、1975年から1976年までは、ダイアナ・ロス、グレン・キャンベル、スタイリスティックス、B.J.トーマスと、アメリカのアーティストたち、それも、スゴイ人たちが担当していました。
 で、トランザムの直前に担当していた B.J.トーマスによる『Come on in. Coke ’76』は、トランザムが日本語カバーのシングルを発売していたりします……。その、B.J.トーマス が歌った曲も、すごくイイ曲で、そのイメージも参考に、『あふれる光の中で』や『はだしで地球を駆けるのさ』を作ったのかと思われます……。

 ところで、このトランザムというバンドのリーダー、チト河内(チトかわち)は、最初、実兄のクニ河内らと、キーボードが中心のギターレスな GSバンド「ザ・ハプニングス・フォー」で、1967年東芝からでデビューしています。
 
 このバンドは、1972年に解散しますが、その後、小室等(ギター・ボーカル)、柳田ヒロ(キーボード)、後藤次利(ベース)、チト河内(ドラムス)、吉田拓郎(リードギター・ボーカル)というメンバーで、「新六文銭」を結成します。でも、ツアーをやっただけで、レコードリリースのないまま消滅……。

 その後、チト河内は、内田裕也やジョー山中がいたこともある1970年にデビューした実力派ロックバンド「フラワー・トラベリン・バンド」にいた石間秀機(G)、「新六文銭」で一緒だった後藤次利(B)、「ザ・ハプニングス・フォー」で一緒だった トメ北川(Vo)と 篠原信彦(Knd「フラワー・トラヴェリン・バンド」にもいた)のメンバーで「トランザム」を結成し、1974年に、東芝 エキスプレスから、アルバム『トランザム』でデビューしました。

 トランザムは、その後、日本コロムビアを経て、1975年からはテイチクに移籍し、日本テレビ系ドラマ「俺たちの勲章」「俺たちの旅」など、シリーズ四部作の音楽を手がけ、同時に中村雅俊の音楽プロデュースもやったりしています。

 1976年には、ダニエル・ブーンの日本語カバー、シングル『ビューティフル・サンデー』がオリコンチャート9位にランクインするヒットとなりましたが、ご存知のように、田中星児のバージョンの方がヒット……。
 どっちも発売は、1976年3月25日とおなじで、いわゆる「競作盤」(ひとつの楽曲を複数の歌手が同時にレコードを出すこと。昔は よくあった)みたいですが、歌詞は、トランザム盤と田中星児盤では全く違います……。

 トランザム盤の『ビューティフル・サンデー』は、アノ松本隆が作詞をしていますが、「♪隣に住んでる 下宿屋のマドンナ ヘイ ヘイ ヘイ 出ておいでよ〜」というモノ…… 下宿屋のマドンナって……アナタ……。そりゃ、「♪さわやかな日曜 ふりそそぐ太陽〜」の方が売れますよね……。

 で、この頃には、初期のメンバーは、ほとんど入れ替わっていて、デビュー時からのメンバーはリーダーのチト河内だけとなっていました。
 1977年には、今度は、ビクター音楽産業へ移籍し、この年より1979年にかけてコカ・コーラのコマーシャルソングを担当すると言うわけです……。

 トランザムは、1981年にバンドとしての活動を休止しますが、2004年のプロ野球 1リーグ制問題が勃発した時に、1978年に非売品EPとして制作された パシフィック・リーグ 連盟歌『白いボールのファンタジー』(作詞:島田富士彦、 作曲:中村八大、編曲:チト河内)が注目を浴びたことで、26年ぶりに初めて発売され、オリコンデイリーチャートでは16位に入る快挙となりました。

 トランザムの活動休止後、リーダーのチト河内は、ドラムやパーカッション・プレイヤーとして、多くのステージサポートやレコーディングに関わるとともに、アレンジャーとしても活躍しました……。

 ちなみに、兄のクニ河内の方も、アレンジャーとして活躍していますが、CMソングも 800曲くらい書いてい て、『ピッカピカの一年生』とか『東鳩オールレーズン』なんかが代表作です……。

 で、この『はだしで地球を駆けるのさ』を作曲したのは、バンドリーダーで ドラムの チト河内 ですが、作詞をしたのは、当時、外資系の広告代理店、マッキャンエリクソンで、コピーライター、クリエイティブ・ディレクターとしてコカ・コーラを担当していた濱田哲二というヒトです……。優秀な職業作詞家がワンサカいた時代だったにもかかわらず……です。

 以前、このコラムでも書いた ハニー・ナイツ『ふりむかないで』と、同じようなパターンですね……(コッチは、電通社員だった池田友彦が作詞)。レコード会社でも、キングレコードのディレクターが「音羽たかし」のペンネームで書いていたりもしました(詳しく知りたい方は、このコラムの第44回をお読みください)。

 なんでも かんでも「昔は良かった……」などと、モ〜ロク ジジイ みたいなコトは言いませんが、広告代理店とかレコード会社のサラリーマンが歌詞を書くなんて……。こういう自由でダイナミックなカンジは、いまはないですね…… 昔は良かったなぁ〜……、あっ!言っちゃった!

(2020年11月11日 西山 寧)



トランザム「はだしで地球を駆けるのさ」歌詞を見る(聴く)!


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収録CD「<COLEZO!>トランザム ベスト」ビクター

収録CD「コカ・コーラCMソング集 1962-89」amazon


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