アリス「さらば青春の時」
アリス「さらば青春の時」(4:53) B面「最後のアンコール」(作詞:矢沢透、作曲:堀内孝雄、編曲:矢沢透)
作詞:谷村新司、作曲:谷村新司、編曲:前田憲男
1977年(昭和52年)3月20日 発売 EP盤 7インチ シングルレコード (45rpm、STEREO)
¥600 ETP-10181 Express / TOSHIBA EMI
<再発盤>
アリス「さらば青春の時」(4:54) B面「遠くで汽笛を聞きながら」(作詞:谷村新司、作曲:堀内孝雄、編曲:篠原信彦)
作詞:谷村新司、作曲:谷村新司、編曲:前田憲男
1981年(昭和56年)11月1日 発売 EP盤 7インチ シングルレコード (45rpm、STEREO)
¥700 ETP-17248 Express / TOSHIBA EMI
※ 掲載のジャケット写真は、「アリス永遠のメッセージ」のキャッチコピー付きのセカンドプレス盤(品番は同じ)。
谷村新司、堀内孝雄、矢沢透の3人による、ツインボーカル+ドラムという編成の日本を代表するグループ「アリス(Alice)の10枚目のシングル。「遠くで汽笛を聞きながら」とのリカップリング・シングルとして、1981年にも再発されているが、オリジナル・アルバムには収録されなかった曲。ライブ盤、ベスト盤には収録されている。
アリスは、1971年、谷村新司と堀内孝雄で結成。1972年3月、シングル「走っておいで恋人よ」で東芝EMI(現、ユニバーサルミュージック)からデビュー。同年5月には、矢沢透が参加し3人のアリスとなる。1975年に「今はもうだれも」のカバーが大ヒットし、以後、「冬の稲妻」「涙の誓い」「遠くで汽笛を聞きながら」「さらば青春の時」「帰らざる日々」「ジョニーの子守唄」「チャンピオン」「秋止符」「狂った果実」など数多くのヒット曲を出し国民的アーティストとなる。
1978年には、日本人アーティストとしては初めてとなる日本武道館3日間公演を成功させるが、その後、アリスの活動と並行して行っていた、谷村と堀内のそれぞれのソロ活動が活発化し、1981年5月、アリスの活動の停止を発表。国内ツアー、北京、香港、バンコクの海外ツアー終了後、同年11月に後楽園球場で行われた「アリス・ファイナル」で、一旦、活動を停止。
1987年、再始動し、アルバム「ALICE X」とシングル「BURAI」を発表。2000年には、神戸で阪神淡路大震災追悼コンサートを行い、第51回NHK紅白歌合戦にも出場。翌2001年には全国ツアーも行う。2005年にも、第56回NHK紅白歌合戦に出場。2008年、谷村のベスト盤「音帰し」にアリスの「明日への讃歌」が収録され、堀内と矢沢もレコーディングに参加したことがきっかけとなり、翌2009年から全国ツアーを36会場で行い、ライブ盤「ALICE GOING HOME 〜TOUR FINAL at BUDOKAN〜」も発売される。2010年には、東京ドームで5時間にもおよぶコンサートを行う。
2013年4月、26年ぶり、11枚目のオリジナルアルバムとなる「ALICE XI(イレブン)」をリリース。同年5月から約5カ月間にわたり、全国47都道府県 、全56公演のコンサートツアー「アリス コンサートツアー 2013 〜 It’s a Time〜」を行う。
メンバー全員が70歳の古希を迎えた2019年、約6年ぶりに再始動し、3人でのアリス結成日である5月5日の神戸国際会館から全国ツアー「ALICE AGAIN 2019-2020 限りなき挑戦 -OPEN GATE-」をスタート。2019年6月7日、東京・日本武道館公演を収録した、 DVD/BD でが11月に発売されている。
谷村と堀内は、それぞれソロとしても活躍しており、矢沢は飲食店やギターショップ「RimShot」を経営するなど実業家としても成功している。
Vo/Gt 谷村 新司(たにむら しんじ) 1948年生まれ、大阪府出身、愛称:チンペイ
Vo/Gt 堀内 孝雄(ほりうち たかお) 1949年生まれ、大阪府出身、愛称:べーやん
Dr/Per/Vo 矢沢 透 (やざわ とおる) 1949年生まれ、神奈川県出身、愛称:キンちゃん
なぜか、アルバムに収録されなかったシングル曲!
大ヒット曲ではないけど、
ファンが、コンサートの最後に必ず聴きたい曲!
「モーリス持てば、スーパースターも夢じゃない」……、おそらく、55歳以上であれば、ラジオで大量に流れていたこのCMのキャッチコピーを耳にしたコトがあるハズ(ウチにも、モーリスのギターが1本ありますが、スーパースターは夢でした……)。
そのラジオCMのバックには、毎回、アリスの曲が流れていました(アリスの前は、かまやつひろし がやってたけど)。ワタシは、『今はもう誰も』を最も印象的に覚えていますが、その後、『冬の稲妻』『チャンピオン』、そして、この『さらば青春の時』も流れていました……。
1970年代の後半から1980年代にかけて、アリスは、間違いなく国民的スーパースターでした。もちろん、今でもスーパースターですが、なんと言うか、当時の温度感みたいなものは、スゴイものでした。
アリスと言えば、最初のヒット曲となった『今はもう誰も』や『帰らざる日々』、ブレイクのきっかけとなった『冬の稲妻』、続いてヒットした『涙の誓い』『ジョニーの子守唄』、そして、最大のヒット曲となった『チャンピオン』などを思い浮かべるヒトが多いことでしょう。
ほかにも、リリース当時よりも、後にドンドン人気となった『遠くで汽笛を聞きながら』や『秋止符』などが、一般的には、代表曲と言えます。
『さらば青春の時』は、アリスの10枚目のシングルで、その前の『遠くで汽笛を聞きながら』からちょうど半年後、初の大ヒットとなった『冬の稲妻』の約半年前にリリースされた曲。タイトルだけ見てピンとこなくても、聴けば、きっと「あ〜 コレね」となるハズです……、たぶん。
ちなみに、『遠くで汽笛を聞きながら』は、シングルでは、堀内孝雄の初リード・ボーカルによる曲で、今でこそ代表曲となっていますが、当時は、アルバムからのシングル・カットだったためか、実際にはあまり売れませんでした……。
さて、この『さらば青春の時』は、シングル曲ですが、スタジオ録音のバージョンは、ベスト盤以外、どのオリジナル・アルバムにも収録されていないという珍しい曲です。なぜ、収録されなかったのかフシギです……。
にもかかわらず……、また、一般の多くの人にとっては馴染みが薄いかもしれませんが、アリスのファンにとっては、デビュー曲の『走っておいで恋人よ』と同じくらい、この『さらば青春の時』は特別な曲なのではないかと思います。なんだか、不思議と胸が熱くさせられる曲です。
まあ、ファンとは、そういうもので、必ずしも大ヒット曲が好きなわけではなかったりします。「実は、アルバムのアノ曲がいいんだよね〜」とか熱く語りたいものです……。
とにかく、『さらば青春の時』は、イントロのピアノからいい曲。編曲を担当した前田憲男が弾いたのか、羽田健太郎が弾いたのかわかりまぜんが、曲中のオブリガードもステキです。
日本人が好きな「3連の曲」で、静かに始まり、最後は盛大に盛り上がって終わります。アメリカン・ポップスみたいなアウトロのフェイクも、耳に残ります。
と、静かに始まるのですが、サビ始まりの曲です……。というか、厳密には、ドコがサビなのかはわかりませんが、ワタシは、「サビ〜Aメロ〜前サビ」の「C-A-B」の構成だと思っていますが……。なにしろ、フツ〜の「A-B-C」の構成ではありません。
この曲、たしかに、オリジナル・アルバムには未収録ですが、シングルでリリースされた1977年(昭和52年)以降のライブ盤、『エンドレス・ロード』(1977年)、『栄光への脱出〜武道館ライブ』(1978年)には、収録されています。ファンの中には、「ライブ・バージョンの方が好き」というヒトも少なくないでしょう。
ちなみに、当時は、「ライブ」でも「コンサート」でもなく「リサイタル」と言ってましたね……。チケットも、機械で印字されたモノではなく、ちゃんとデザインされて印刷されたヤツ……、今、見直すと、かなりチ〜プな感じはしますが。
で、2009年、3度目の再結成をした時のライブ盤『ALICE GOING HOME 〜TOUR FINAL at BUDOKAN〜』、2019年の再始動ツアー『『ALICE AGAIN 2019-2020 限りなき挑戦 -OPEN GATE-』でもアンコール曲として歌われ、昨年11月に発売されたライブ DVD/BD にも収録されています。
リリース当時から、コンサートの最後を飾る曲となっていて、実際、ライブ盤には、この曲の前に、「我々の永遠のテーマソングを歌います……」というチンペイさんのMCが入っています。
余談ですが……、アリスほど、ライブ盤が人気だったアーティストも珍しいと思います。今みたいに、Blu-ray やら DVD はモチロン、VHS すらなかった当時、音だけの「ライブ盤」が、十分にワタシたちの胸を熱くしてくれたもんです……。まさに、最初にレコード針をおろす瞬間には、ドキドキしたもんです……。
とくに、アリスは、ライブ盤のリリースも多かったですし、スタジオ録音も良かったのですが、ライブならではのドライブ感が、アリスは魅力でした。
実際、1978年10月に発売された、アリス4枚目の2枚組ライブLP『栄光への脱出〜武道館ライブ』は、オリコン・アルバム・週間チャートで1位となり、その年、レコード大賞の「ベストアルバム賞」を取ってます。
ちなみに、この年、1978年のオリコン・年間アルバム・ランキングには、2位に『ALICE VI』、4位に『ALICE V』、10位に『栄光への脱出 〜武道館ライブ』と、なんと TOP10 に、アリスのアルバムが3枚も入っています。いかに、スーパースターだったかがわかるデータです(ちなみに、年間1位は、ピンク・レディのベスト盤)。
たしかに、この『栄光への脱出 〜武道館ライブ』は、いいアルバムで、収録されている曲もいいですし、バックの演奏も、ピアノに羽田健太郎、ギターに芳野藤丸、ドラムの渡喜敷祐一ら、錚々たるメンバーで、演奏もいいですし、アリスの3人のパフォオーマンスも、この頃が、最も勢いがあったように思います。『さらば青春の時』も、ライブならではの説得力があって、なんだか熱い気持ちになります……。
でも、もっとコアなファンになると、その前のライブ盤、1977年6月にリリースされたアリスの3枚目のライブ・アルバム、「アリス結成5周年記念ライブ」を収録した2枚組LPの方がイイというヒトが出てきます……。キモチはわかります……、ワタシもこのアルバムの『さらば青春の時』が好きです。
このアルバムには、初期の名曲『あなたのために』(作詞・作曲:谷村新司)や、「作詞:中村行延/作曲:堀内孝雄」のコンビで作られたベーやんの『ページ99』『忘れかけていたラブ・ソング』『飛び立てジェット・プレーン』などの名曲も収録されています。
これらを作詞した中村行延というヒトも、もともとはフォーク・シンガーでしたが、たまたま、当時、アリスと同じ事務所「ヤングジャパン」所属で、堀内孝雄の曲で、ちょいちょい詞を書いていました。堀内孝雄のソロアルバム『Song Forever』収録の超名曲『時の流れに』も、中村行延との作品だったりします……。
ほかにも、『さらば青春の時』のカップリング曲だった『最後のアンコール』(作詞:矢沢透/作曲:堀内孝雄)も、このアルバムには収録されています。キンちゃんの作詞と編曲で、3連(シャッフル)のキモチのいい、ゴキゲンなロックンロールです。
ハナシを戻します……。あまり知られていませんが、1977年(昭和52年)に東芝EMIからシングルとして発売された『さらば青春の時』は、実は、1981年に、カップリング曲を『遠くで汽笛を聞きながら』に変えたシングルが、東芝EMIから発売されています。
これは、アリスがポリスターにレコード会社を移籍した後のコトで、発売当初よりも人気の出てきた2曲を、「両A面・ヒットシングル・カップリング」のような扱いにして(1960年代くらいからよくあった手法)、原盤を持っていた東芝EMIが、もう一度、売ろうとした企画盤です。
ちなみに、最初に発売された 1977年という年は、キャンディーズが、7月に日比谷野外音楽堂で「普通の女の子に戻りたい」と言い出した年で(解散コンサートは翌1978年)、邦楽も洋楽も、信じられないくらいたくさんの名曲が発売された年でもあります。
オリコンの年間 TOP 100 の曲は、ほぼゼンブ知っているどころか、「コレが70位なの?」というくらい、今でも歌い継がれている名曲ばかりだったりします……。だから、ただでさえ散漫で長いのに、またドンドン長くなってしまうので、ココでは触れません……(この年だけで、このコラムが50本は書けます)。
さて、この『さらば青春の時』、作詞作曲は、チンペイさんこと谷村新司。おそらく20代後半……、30歳を前に書かれた曲かと思いますが、歌詞のシチュエーションは、「♪就職が決まって髪を切ってきた時〜」の『「いちご白書」をもう一度』(1975年、バンバン、作詞・作曲:荒井由実)に、ちょっと似ている気がします。
髪を伸ばしていたいた学生時代が「やすらぎの時」で「青春」であり、社会人になるにあたって、「今こそ笑って 別れを言おう」「甘えて暮らして 生きてはゆけない」と言っているように感じます……。
しか〜し、それだけでなく、「遥るかな夢を 捨てきれないままに…… 熱い血潮は 胸を焦がして……」と歌われているように、そこには、「捨てきれない夢」があり、まだ「熱い血潮は 胸を焦がして」いたりします……。
それがあるから、続くサビの「振り向かないで 歩いてゆける そんな力を 与えて欲しい」が胸を熱くするのではないでしょうか……。
いずれにしろ、真理が歌われています。
人は、ついつい後ろばっかり振り返って、「あ〜すれば良かった……」とか「あれで良かったのかなぁ……」とか、そんなことばかりを考えがちです。
「後ろばっかり見ていても何も生まれない! 前を向いて進むべきだ!」とは、誰もがわかっていることですが、それでも、なかなかできないのが人間というもの……。だから、できないから、「そんな力を 与えて欲しい」が、私たちのココロに響くのでしょう。
人間は、全て論理的に行動することはできないし、むしろ、説明のつかない矛盾だらけの存在です。完璧な人など存在せず、必ずミスや失敗をする、不完全な存在です。
宗教が、本来、人がより幸せに生きるために存在するハズなのに、その宗教が原因で殺し合いが起きます……。それも、少なくとも、11世紀、1000年近くも前の十字軍のころからなくなりません。
ユダヤ教とキリスト教とイスラム教(ルーツは全て同じ)の聖地が、いずれもエルサレムであるからヤヤコシイのですが、たとえば、日本だって、比叡山などには僧兵などという「お坊さんなのに兵士」がいたりもしたじゃないですか……。
「私、失敗しないので……」は、テレビドラマにはなりますが、実際には、そんなヒトがいたら、とても信用なりません。「失敗を認めることが出来ないヒト」と思ってしまいますから……。自分の失敗を素直に認められないと、前に進めないどころか、同じ失敗を繰り返したりしますし、周りの信用も得られません。
むしろ、山のように失敗をして、それらを乗り越えてきた人には、魅力的な人が多いです。
とにかく……、谷村新司という人は天才です。
むかし、ラジオでやっていた、『天才・秀才・バカ』などという下ネタ満載のコーナーから耳が離せませんでしたが……、それも含めて、チンペイさんは、間違いなく天才です。さすが『昴』……。
モテたい一心でギターをはじめ、MBS『ヤングタウン』や文化放送『セイ!ヤング』では、ビニ本の話ばっかりしていたヒトが、まさか、上海音楽学院の教授になったり、紫綬褒章を受賞するとは、夢にも思っていませんでした。もっとも、本人が一番、思っていなかったでしょうけど……。
でも、そんなに立派になっても、決してエラそうにしていないとこが、またステキです。
チンペイさんは、歌を作る時、一般的な「詞先」とか「曲先」とか、そういう作り方ではなく、歌詞と曲を同時に作っていくそうです……。
そんなヒト……、聞いたことありません……。やはり天才!
(2020年8月5日 西山 寧)
アリス 歌詞一覧
作詞:谷村新司 歌詞一覧
作曲:谷村新司 歌詞一覧
復刻シングルCD「さらば青春の時」MEG-CD
収録CD「ALICE ALL TIME COMPLETE SINGLE COLLECTION 2019」
アリス インタビューアーカイブ(2013年3月 歌ネット)
谷村新司 インタビューアーカイブ(2011年8月 歌ネット)
堀内孝雄 インタビューアーカイブ(2010年4月 歌ネット)