第43回 高見知佳「しのび逢い 〜Don’t Leave Me Alone〜」(1979年) -MUSIC GUIDE ミュージックガイド

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第43回 高見知佳「しのび逢い 〜Don't Leave Me Alone〜」(1979年)

求める心と ためらう気持ちが
何気ない言葉で はねかえってくる ……
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高見知佳「しのび逢い 〜Don’t Leave Me Alone〜」

高見知佳「しのび逢い 〜Don’t Leave Me Alone〜」(3:08) *「セザンヌの絵」カップリング曲
作詞:高見沢俊彦、作曲:高見沢俊彦、編曲:松井忠重
1979年(昭和54年)11月1日発売 EP盤 7インチ シングル レコード (45rpm、ステレオ)
¥600 PK-177 COLUNBIA / 日本コロムビア

1979年11月25日発売 LP 「ペーパー・ムーンに腰かけて/高見知佳 II」収録(PX-7096 日本コロムビア)

タイトル曲、SIDE 1「セザンヌの絵」(作詞:門谷憲二、作曲:西島三重子、編曲:松井忠重)
TBS系 全国ネット水曜劇場「家路ーママ・ドント・クライ」挿入歌


 1962年7月9日生まれ、愛媛県新居浜市出身、本名:高橋房代こと、歌手でタレントの高見知佳。1979年(昭和54年)11月1日発売、5枚目のシングル「セザンヌの絵」のカップリング曲。レコードジャケットの表面では「しのび逢い(Don’t Leave Me Alone)」という表記で、裏面の歌詞カードでは「し・の・び・逢・い Don’t Leave Me Alone」となっている。1985年9月に、柏原芳恵がタイトルを「し・の・び・愛」に、歌詞も一部を変更してカバーしヒット。同年の「第36回 NHK 紅白歌合戦出場曲」にも出場し歌唱。
 高見知佳は、中学生のころに出場したラジオ局主催の「のど自慢大会」で、25人を勝ち抜いたことでスカウトされ上京。1978年、16歳の時、シングル「シンデレラ」で日本コロムビアから歌手デビュー。その後、シングル19枚、アルバム6枚をリリース。最大のヒット曲は、1984年に「資生堂」の春のキャンペーンソングとなった15枚目のシングル、EPO 作詞作曲の『くちびるヌード』。1985年リリースの19枚目シングル「怒濤の恋愛」を最後に、歌手としての本格的な活動は終了。
 ドラマや映画にも出演するが、「アイアイゲーム」をはじめ、おもに、バラエティ番組で人気となり、歌手としてよりも、バラエティ・タレントとして成功。NHK「スタジオパークからこんにちは」では、番組スタート当初の1995年4月から、堀尾正明アナウンサーとともに司会を務める。1997年4月〜8月の間には、エンディングテーマ曲「あたたかな陽ざしの中」(作詞・作曲:崎谷健次郎)も歌う。
 2001年、39歳の時、結婚を機に芸能界を引退し、沖縄に移住。17年の結婚生活の後、離婚し、現在は、出身地の新居浜市在住。新居浜のコミュニティ FM局「新居浜 FM」、16時からの生放送「Hello! NEW 新居浜 LIVE!!」で、火曜日のパーソナリティを担当しているほか、絵本の朗読イベントなど、地元で活動している。


アルフィーの高見沢俊彦が、高見知佳へ書き下ろした B面曲!
タイトルと歌詞の一部を変更し、
約5年後に、柏原芳恵のカバーによりヒットした名曲!


 「××会社」……、このコラムをお読み頂いているアナタは、無意識に「チョメチョメ会社」と読んだハズ……、50歳以上であれば、「××」は「チョメチョメ」と読みます。

 そうです、高見知佳と言えば、1979年10月から1985年9月までフジテレビ系列で放送されていた、山城新伍が司会の『アイアイゲーム』です。高見知佳のほかに、名高達郎、中尾ミエ、せんだみつお、クロード・チアリ、芹沢博文という、秀逸なキャスティングでした。ギタリストのクロード・チアリとか、将棋棋士の芹沢博文らは、この番組で、その存在を知ったもんです。

 さて、高見知佳は、その後も、ドラマや映画や、『スターどっきり(秘)報告』、『所さんのただものではない!』、青島幸男と司会をやっていた『追跡』など、おもに、バラエティ番組で活躍しました。NHK『スタジオパークからこんにちは』でも、番組開始当初から、堀尾正明アナとともに長く司会をやっていましたね。

 いつもニコニコ、明るく親しみやすいキャラクターと、嫌味のない自由で奔放な発言が、お茶の間にウケました。今で言う「バラドル」(バラエティ・アイドル)の元祖とも言えるのではないでしょうか……。

 しかーし! 本業……、というか、もともとは歌手です。ヌケが良くてキュ〜トな、とてもアイドルらしいイイ声をしているのですが、ご存知のように、歌手としては、あまり成功しなかったのが残念です……。リボンの騎士のサファイヤみたいな衣装で歌った、デビュー曲の『シンデレラ』(作詞:橋本淳、作曲:筒美京平、編曲:船山基紀)とか、とっても良かったんですけどね……(ホントは、コッチも書きたい)。残念です。

 最大のヒット曲はと言えば、1984年に「資生堂」の春のキャンペーンソングとなった、EPO 作詞作曲の『くちびるヌード』です。ちなみに、この前年、1983年の「資生堂」の春のキャンペーンソングは、EPO の『う、ふ、ふ、ふ、』で、コレも、EPO 自身最大のヒット曲となりました……。

 で、今回の曲……、「この曲って、ヨシエちゃんの歌じゃないの〜?」と思った方も少なくないかと思います。

 たしかに、柏原芳恵が1985年にリリースした23枚目のシングル曲で、「紅白」でも歌われた曲です。ですが、もとは、高見知佳が、1979年11月にリリースした5枚目のシングル『セザンヌの絵』のカップリング曲のカバーなんです。

 もっとも、知名度から言えば、圧倒的に柏原芳恵バージョンで、高見知佳の方は、言ってみればシングル B面曲なのでアルバム曲なので、テレビとかで歌われたことはないかと思われ、ファンしか知らない曲だと思います。

 この2曲、ほぼ同じ曲ですが、曲名がちょっと違っています。高見知佳の方は、『しのび逢い 〜Don’t Leave Me Alone〜』で、柏原芳恵の方は『し・の・び・愛』。で、歌詞も、1箇所だけ変更されています。アレンジは全く違うカンジです。

 『しのび逢い 〜Don’t Leave Me Alone〜』、『し・の・び・愛』は、「♪ごめんなさいね 私見ちゃったの あなたの黒い電話帳…… 私の家の 電話番号が 男名前で書いて〜ある〜」の島津ゆたからの歌で知られる『ホテル』と何ら変わらない不倫の歌です。

 柏原芳恵が、約5年後にカバーする際、タイトルとともに1箇所だけ変更された歌詞は、Aメロの最初の1行で、「その薬指に光るリングが」が、「あなたの瞳にひそむ影が」となっています。うまく変えたもんです。

 この1行を変えたところで、やっぱり多くの人は「不倫の歌」と感じるでしょうが、でも、この「リング」という決定的な言葉をなくすだけで……、このたったワン・ワ〜ドをなくすだけで、単なる「遊び人」のプレイボ〜イの歌にも聞こえるようになります……。
 しかも、「あなたの瞳にひそむ影が」と、ちゃんと、他のヒトの存在を暗示しています。見事です。

 柏原芳恵が、この歌をカバーしたのが、19〜20歳くらいだったので、あんまり不倫色を強くしたくなかったのではないでしょうか……。
 高見知佳が歌ったのも、17歳でしたけど……。

 で、「ヨシエちゃんの方がイイ!」とか、「チカちゃんの方がイイ!」とか、いろいろあるとは思いますが、それは、「どっちを先に聴いたか?」とか、「歌声や歌い方の好み」とかになってくるので、どちらがどうとかは言えませ〜ん。モ〜、それは「好み」、好き嫌いの世界なので。

 ただ、ひとつ言えるのは、柏原芳恵の方は、アレンジ(船山基紀)も歌い方も、アダルトな雰囲気になっているというコトです……。
 ちなみに、ヨシエちゃんの『し・の・び・愛』のシングルレコード には、同じ品番で2種類のジャケットがあったりします……(昔は、ちょいちょい、そういうコトがあった)。

 さらに、余談ですが、柏原芳恵の7枚目のシングル、「第23回日本レコード大賞」ゴールデン・アイドル賞を獲得した「♪紅茶のおいしい〜」の『ハロー・グッバイ』も、実は、アグネス・チャンが1975年に発売したシングル『冬の日の帰り道』のB面曲のカバーで、もとのタイトルは『ハロー・グッドバイ』だったりします……(ヨシエちゃんの前にも、讃岐裕子がカバーしている)。

 そんなことはともかく、『し・の・び・愛』として紅白でも歌われたこの名曲は、「THE ALFEE」の高見沢俊彦による作品(作詞・作曲)で、高見知佳の『しのび逢い 〜Don’t Leave Me Alone〜』には、「THE ALFEE」の3人もコーラスで参加しています。

 「THE ALFEE」はと言えば、そのころは、まだ『メリーアン』(1983年)も『星空のディスタンス』(1984年)も『STARSHIP〜光を求めて〜』(1984年)もリリースされていないころ。つまり、売れていないころ。
 1974年に、ビクターから4人組でデビューしたものの売れず、その後、3人で研ナオコらのバックバンドをやり、キャニオンからの再デビューシングル『ラブレター』(当時のグループ名は「Alfie」)が発売されたのが、この『しのび逢い 〜Don’t Leave Me Alone〜』のリリースと同じ1979年。

 つまり、当時、高見知佳と同じ所属事務所(田辺エージェンシー)で、B面曲だったとは言え、まだ売れていなかった「Alfie」の高見沢俊彦の才能に気がついていたヒトがいたというコトです……。
 当時、高見沢俊彦も25歳くらい。切なく耳に残るメロディはモチロンですが、わかりやすい言葉で、不倫の状況とその心情が、たった3分で見事に描かれた歌詞には感服します。スゴイ才能です。

 しかも、メロディへの言葉の乗せ方も絶妙で、言葉がよく聞こえてきます。この曲に限っては、作詞作曲をひとりでやっているからこそ、出来た作品なのかもしれません……。

 ちなみに、この頃の「Alfie」、1983年にロック・スタイルとなって『メリーアン』で売れる前は、まるっきりフォークのカンジですが、ワタシは好きです。『ラブレター』も、最初聞いた時に「イイ曲だな〜」と思いましたし、『無言劇』とか『通り雨』とか名曲もいっぱいあったりします。モノマネもやったりするライブも楽しかったですし……。

 ところで、この『しのび逢い 〜Don’t Leave Me Alone〜』のA面曲『セザンヌの絵』はと言えば、高見知佳本人も出演していた TBS系列のドラマ『家路 〜ママ・ドント・クライ』の挿入歌になった曲で、マイナー調のクラ〜イ雰囲気の曲ですが、耳に残るよくできた歌です……。

 曲を書いたのは、「♪池上線が走る町に あなたは二度と来ないのね」の『池上線』で知られるシンガー・ソングライターの西島三重子。

 『しのび逢い 〜Don’t Leave Me Alone〜』が収録された、1979年11月発売、高見知佳のセカンドアルバム『ペーパー・ムーンに腰かけて/高見知佳II』では、収録12曲中、半分の6曲を作曲していて、『ペーパー・ムーンに腰かけて』『少しは私を好きでしたか』『ジャスト・ワン・ルック』『ミスター・レイン』(4枚目のシングルA面曲)など、実にイイ曲をたくさん書いていたりします(名盤です)。

 いずれにしろ……、繰り返しになりますが、この歌を歌ったのが、高見知佳が17歳、柏原芳恵が19歳……。

 松浦亜弥を最後に、ソロのアイドル歌手というヒトが消えて久しくなりますが、最近のアイドル・グル〜プの中からでも、このくらい歌えて、ソロで張れるヒトが出てきてほしいものです……。ワクワクさせてくれるようなヒトが……。

 オジサンは待っています……。

(2020年7月22日 西山 寧)


高見知佳「しのび逢い 〜Don’t Leave Me Alone〜」歌詞を見る(聴く)!

柏原芳恵「し・の・び・愛」歌詞を見る(聴く)!


高見知佳 歌詞一覧
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収録CD「ゴールデン☆ベスト 高見知佳」日本コロムビア

MEG-CD(復刻CD)「セザンヌの絵 / しのび逢い 〜Don’t Leave Me Alone〜」


高見知佳 日本コロムビア


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