第39回 TUBE 「Stories」(1989年) -MUSIC GUIDE ミュージックガイド

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時代を思い出す扉が 歌であってくれればいい … (阿久悠)

第39回 TUBE 「Stories」(1989年)

心の傷の数だけある物語が
思いやりと 勇気を与えてくれる ……
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TUBE 「Stories」

TUBE(チューブ)「Stories」(ストーリィーズ)(5:07) C/W「Precious Time」
作詞:前田亘輝、作曲:春畑道哉、編曲:TUBE
1989年(昭和64年/平成元年)12月1日発売 8センチ シングルCD
¥800(税込)¥777(税別) CSDL-3041 CBS/SONY RECORDS
パナソニック・カー・コンポ「Panasonic CD in1 VZ 700」CMソング

シングルカセット「Stories」(1989年12月1日発売、CSSL-3041、CBS/SONY RECORDS)※オリジナルカラオケ2曲収録
ベストアルバム「TUBEst」収録(1989年12月21日発売、CSCL-1085、CBS/SONY RECORDS)


 1985年6月1日に、シングル「ベストセラー・サマー」でデビューした、前田亘輝(Vo,G)、春畑道哉(G,Key,Cho)、角野秀行(B,Cho)、松本玲二(Dr,Cho)の4人からなるバンド「The TUBE」(現.TUBE)の通算10枚目のシングル。メンバー4人も出演した、パナソニック・カー・コンポ「Panasonic CD in1 VZ 700」のテレビCMソング。CMの歌詞は、CDとは違う。
 1986年発売の3枚目のシングル「シーズン・イン・ザ・サン」で大ブレイク。その後も「Beach Time」「SUMMER DREAM」などがヒット。デビューから8枚目のシングルまでは、作詞が三浦徳子や亜蘭知子、作曲が鈴木キサブロー、織田哲郎、栗林誠一郎らという作家による提供曲を歌っていたが、1989年6月発売の9枚目のシングル「SUMMER CITY」からは、メンバーが作詞・作曲を担当し、「Stories」は自作曲としては2作目のシングルとなる。
 その後も、「あー夏休み」「さよならイエスタデイ」「夏だね」「ガラスのメモリーズ」「夏を待ちきれなくて」「だって夏じゃない」「夏を抱きしめて」「Melodies & Memories」「ゆずれない夏」「Only You 君と夏の日を」などがヒットし、「サザンオールスターズ」や「杉山清貴とオメガトライブ」とともに、「夏のバンド」として人気が定着。
 通算61枚目となる2018年発売のシングル「夏が来る!」もヒットし、毎年恒例の横浜スタジアムでのライブを開催するなど、現在も絶大な人気を誇る日本を代表するバンドのひとつ。今年、2020年は、デビュー35周年となる。


生放送 7時間前に出演が決まり
急遽代役として出演した「夜ヒット」がブレイクのきっかけ!


誰もが知るヒット曲ではないけれど……
知る人ぞ知る、隠れた名曲!


 TUBE と言えば、「夜ヒット」こと『夜のヒットスタジオ』です……。ファンの間ではよく知られたハナシですが、TUBE は、突然、代役として「夜ヒット」の本番当日に呼ばれて出演したコトが、後々、ブレイクへのきっかけとなりました……。1985年(昭和60年)7月17日のコトです。

 「夜ヒット」は、ジャンルに関わらず、いろんなヒトが出ていたのが良かったですね〜。たとえば、松田聖子が『白いパラソル』を歌い、西田敏行が『もしもピアノが弾けたなら』、クリエーションが『LONELY HEART』、千昌夫が『望郷酒場』、山本譲二が『みちのくひとり旅』を歌う……、な〜んて回があったり、シーナ・イーストンが『Just Another Broken Heart(涙のブロークン・ハート)』を歌った回には、八代亜紀、千昌夫、郷ひろみ、近藤真彦、シャネルズ、柏原よしえらも出ていたりと、いろんなヒトが出ていてホントに楽しかったです……。

 で、この年、1985年の4月からは、『夜のヒットスタジオ』が2時間枠となり、『夜のヒットスタジオ DELUXE』としてリニューアルされました。

 その前からも、シーナ・イーストンみたいに、いわゆる「外タレ」アーティストがゲストや中継で出演することがありましたが、デラックスとなってからは、海外の大物アーティストによりチカラを入れるようになり、芳村真理の言う「海外からのお客様」が、ほぼ毎週のように出演していました。

 リニューアル直後の1985年4月17日には、フランク・シナトラがスタジオ出演し、同時に、ティナ・ターナーが衛星中継で出演するという、超大物アーティストが2人も同時に出ていて、みんなが驚かされました。
 ちなみに、その前週の4月10日には、「吉幾三、地元の村民とご対面」なんて企画もやっていたりして……、そのへんの幅の広さが魅力のひとつです。

 ほかにも、この1985年だけで、ボン・ジョヴィ、リチャード・クレイダーマン、スティング、ケニー・ロギンズ、ヒューイ・ルイス、シーラE、ブライアン・アダムス、ホイットニー・ヒューストン、ライオネル・リッチー……などなど(まだまだいっぱいいます)、錚々たる面々が出演。
 さらに、この年以外だと、ポール・マッカートニー、エルトン・ジョン、スティーヴィー・ワンダー、ジャネット・ジャクソン、ヴァン・ヘイレン、ドナ・サマー、ハリー・ベラフォンテ、ピーター・セテラ、ジェイムス・イングラム、ロッド・スチュワート、オリビア・ニュートンジョン、ポール・サイモン、シカゴ、ゲイリー・ムーア、ビージーズ、スタイル・カウンシル、ジョージ・ベンソン&アール・クルー、マンハッタン・トランスファー……(まだまだ有名なヒトがいっぱいいます)とまあ、ものスゴイです……(ポール・モーリア・グランドオーケストラや、ミッキーマウスとミニーマウスも出演している)。

 で、そんなものすごい番組を、プロデューサー兼ディレクター(演出)として作っていたのが、疋田 拓(ひきた たく)氏。「生演奏」と曲をカットしない「フルコーラス」にこだわり、大胆なブッキングと演出、そして、誰もやったことのなかった独特のカメラワークとスイッチングが有名でした。
 そう言えば、「キャンディーズ VS ピンク・レディー 伝説の6曲メドレー」なんて夢のような企画もありましたね……。

 疋田 拓 氏は、フジテレビからテレビ朝日に引き抜かれますが、その後、独立して制作会社を作り、『BS日本のうた』(NHK BSプレミアム)や『日本の名曲 人生、歌がある(現『人生、歌がある』)』(BS朝日)などの人気歌謡番組の制作、演出をやっています。
 80歳近い年齢ですが、なんとなく撮っている根拠のないカットはひとつもなく、全てに意味のある、切れ味鋭いカメラワークは健在です。

 ちなみに、この 疋田 拓 氏、歌詞テロップを最初に入れたヒトとも言われています。なんでも、デビュー当時、『勝手にシンドバッド』を歌っていた桑田佳祐が「何を言っているか歌詞がさっぱりわからなかった」からだそうな。

 ハナシを TUBE に戻します……。
 1985年(昭和60年)7月17日の水曜日、21:02 からの『夜のヒットスタジオ DELUXE』の生放送を控え(21:00〜は予告番組『今夜の夜のヒットスタジオDX』が放送されていた)、スタッフが、その日の海外ゲストの「U2」とトーク内容でモメて、急遽、出演がキャンセルに。
 そこで、プロデューサーの 疋田 拓 氏が、「コレっ!」と当時ADだった「きくち伸」氏に渡したのが、TUBE(当時は「The TUBE」)のデビューシングル『ベストセラー・サマー』(1985年6月1日発売)でした。それが、放送当日の14時ころ。

 そこで、湘南の海でサーフィンをしていた TUBE のメンバーを呼び集め、当時、フジテレビのあった河田町のスタジオに、ビーチサンダルにTシャツのまま行き、放送開始直前に、1回の音合せと1回のカメリハで、そのまま本番。メンバーがスタジオに全員そろったのが、なんと、放送開始10分前の20時50分だったそうです……。

 デビューして、わずか1ヶ月ですから、トークも慣れておらず、多少、緊張もしているようでしたが、それでも、ちゃんと生演奏で、見事に歌い切っています。たいしたもんです。

 それにしても、すごいハナシです。だって、昼の2時ころには、ビーチでサーフィンをしていたのに、突然、「夜ヒット」のような超人気番組の出演が決まり、しかもその日だなんて……。まさに、事実は小説よりも奇なり……です。

 でも、もっとスゴイのは、ケータイなどなかったあの時代に、メンバーを呼び集めて、楽器と衣装を用意して、出演に間に合わせたレコード会社と事務所のスタッフです……、お見事。
 なんでも、海水浴場のアナウンスで「番組出演が決定したのですぐにフジテレビに来てほしい」というようなことを流したとか、「マネジャーがヘリコプターに乗って拡声機で海に呼び掛けた」とか、いろんなハナシがあり、何がホントかわかりませんが……、機会があれば、直接、聞いてみたいです。

 もちろん、メンバーもスタッフもスゴイのですが、やはり、なんと言っても、生放送の7時間前に、TUBE の出演を決めたプロデューサーの 疋田 拓 氏のスゴさにはかないませんね。
 そのタイミングで、差し替えの出演者を入れようという発想もさることながら、それがデビューわずか1ヶ月の新人の TUBE だったコト……。当時は、相当たくさんの売り込みがあったであろうに、ちゃんと音を聴いていて、しかも「このバンドは売れる」という鋭いカン……、さすがです。

 ちなみに、この日、もうひとり、初出演のアーティストがいて、それが、なんと、高中正義。『渚・モデラート』をフルで演奏しました……。
 ほかに、この回には、五木ひろし、谷村新司、舘ひろし、田原俊彦、研ナオコ、河合奈保子、原田知世、LOOK、シブがき隊、堀ちえみ、海外からのお客様がカルチャー・クラブ、そしてマンスリーの布施明が出ていました。

 そして、TUBE は、この出演によって広く知られるようになり、『ベストセラー・サマー』も最終的に10万枚を超えるセールスを記録。翌 1986年の3枚目のシングル『シーズン・イン・ザ・サン』でブレイクします。その後の活躍は、言わずもがな。

 余談ですが(ほぼ全編にわたって余談ですけど)、実は、TUBE と同じく、代役として「夜ヒット」に初出演してヒットに繋がったアーティストが、もう1組います……。1979年11月12日、出演予定だった吉田拓郎が、当日、急遽、出演しなくなり、代打として、当時、デビューしてまだ3ヶ月しか経っていない「チャゲ&飛鳥」が出演し、デビュー曲の『ひとり咲き』を歌いました……。

 さて、TUBE の『Stories』は、「夜ヒット」初出演から約4年後の1989年12月発売、通算10作目のシングルですが、メンバーによる自作曲としては、同年6月に発売された『SUMMER CITY』に続いて2作目のシングルです。

 デビュー曲の『ベストセラー・サマー』は、作詞:三浦徳子、作曲:鈴木キサブローのコンビ、『シーズン・イン・ザ・サン』『SUMMER DREAM』『Beach Time』などは、作詞:亜蘭知子、作曲:織田哲郎のコンビ、というように、それまでは、作家による提供作品ばかりでした。
 なので、ボーカルの前田亘輝は、デビュー10年目のインタビューで「1989年が TUBE にとって本当のデビューだった」とも言っています。

 もちろん、『シーズン・イン・ザ・サン』も『あー夏休み』も『夏を待ちきれなくて』も『Only You 君と夏の日を』も『夏が来る!』もイイのですが、ワタシにとって、TUBE と言えば、なんと言っても、この『Stories』です……(ほとんどのヒトが知らないと思いますが)。

 『Stories』は、TUBE のメンバーも出演した「Panasonic」のカーオーディオのCMソングでしたが、冬にリリースされたせいか、60枚以上ある TUBE のシングルの中での売り上げランキングは32位と実に中途半端で、正直、セールス的には成功したとは言えません……。

 しかし、たとえば、カラオケ「JOYSOUND」の TUBE のカラオケ・ランキングを見てみると、『Beach Time」『Only You 君と夏の日を』『Melodies & Memories』より上の16位だったりと、多くのヒトのココロに残る「隠れた名曲」です(誰も隠してないけど)。

 ギターの春畑道哉が作曲したこの曲は、心地よくビートの効いた力強いサウンドに乗った、キャッチーで日本人の心の琴線に触れるメロディの名曲です。
 そして、ボーカルの前田亘輝が書いた歌詞は、ベタベタなラブソングでありながら、冒頭で引用した部分「心の傷の数だけある物語が 思いやりと勇気を与えてくれる」がココロに響きます……。なかなか書けない普遍的で見事な一節です。

 昨日、6月23日は、75年目の「慰霊の日」でした。司令官だった牛島中将の自決とともに、沖縄での旧日本軍の組織的な戦闘が終わったとされる日です。
 身近なヒトが、ひとり亡くなっただけでもつらいのに、たった80日くらいで、民間人9万人以上を含め日米合わせて20万人もの人が死んでしまったという事実は、その場にいなかった私たちの想像を絶します。住民の4人に1人が死ぬということを経験したことがありませんから。

 しかし、ワタシの知っている「うちなー」の「おじい」や「おばあ」は、みんな、やさしくて、素敵な笑顔のヒトばっかりです。

 べつに、沖縄の「おじい」や「おばあ」に限らず、とんでもない苦労をしていたり、辛い経験をしてきたのに、普段、それらを見せない人たちには、魅力的なヒトが多いです。心の傷の数だけ、人はやさしくなれるのですね……。

 「慰霊の日」に、そんなことを思い、真っ先に浮かんだのが、この TUBE の『Stories』でした……。

 ところで……、6月は祭日がひとつもない唯一の月なので(12月もないけど、31日はなんとなく休みっぽいから)、6月23日を国民の休日にしたらどうでしょう……。

(2020年6月24日 西山 寧)


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