第34回 野口五郎「青いリンゴ」(1971年) -MUSIC GUIDE ミュージックガイド

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第34回 野口五郎「青いリンゴ」(1971年)

心 こころを しばりあい
二人 ふたりで 傷ついた ……
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野口五郎「青いリンゴ」

野口五郎「青いリンゴ」(2:46) Key=Am  B面「君のためぼくのため」
作詞:橋本淳、作曲:筒美京平、編曲:高田弘、演奏:ポリドール・オーケストラ
ディレクター:沢田宣博、ミクサー:大野進
1971年(昭和46年)8月10日発売 EP盤 7インチ シングル レコード (45rpm、ステレオ)
DR-1634 ¥500- ポリドールレコード(日本グラモフォン)

1972年2月1日発売 LP『青いリンゴが好きなんだけど/野口五郎ファースト・アルバム』収録

1971年、高校1年生の時、シングル『博多みれん』でデビューした野口五郎の2枚目のシングル。オリコン週間チャート最高14位を記録するヒットとなり、一躍有名歌手となる。翌1972年の「第23回 NHK 紅白歌合戦」に、当時としては最年少となる16歳10か月で初出場し『めぐり逢う青春』を歌う。以後、「NHK紅白歌合戦」には、第32回までの10年連続を含む計11回出場。1970年代〜80年代にかけて、『君が美しすぎて』『オレンジの雨』『愛ふたたび』『甘い生活』『針葉樹』『グッド・ラック』『真夏の夜の夢』『女になって出直せよ』『コーラス・ライン』『19:00の街』など多くのヒットがある。また、日本テレビ系のバラエティー番組『カックラキン大放送!!』にレギュラー出演するなどし、コミカルな一面も知られる。
1980年代からは、ミュージカルなどの舞台や、ドラマ映画等でも活躍。2000年には、サンタナのヒットシングル「Smooth」に日本語詞を付けてカバーした『愛がメラメラ〜Smooth〜』がヒット。ギタリストとしても知られ、自身のアルバムで演奏しているほかにも、1982年、1993年、2014年と、これまで3作のギター・インスト・アルバムもリリースしている。また、2013年には、「ライブの感動をそのまま持ち帰ること」ができるデジタルコンテンツ配信システム「テイクアウトライブ(Take out Live)」を考案し特許も取得。
2020年6月3日には、野口五郎デビュー50周年メモリアルアルバム『Goro Noguchi Debut 50th Anniversary ~since1971~』が発売予定。


 西城秀樹、郷ひろみ とともに「新御三家」と言われた野口五郎のセカンド・シングルで初のヒット曲となった『青いリンゴ』。当時、高校1年生。ほかの2人より1歳年下ながら、3人の中では、約半年から1年デビューが早くて先輩。
 『青いリンゴ』から遡ること約3ヶ月、1971年5月1日に発売されたデビュー曲が、なぜかマイナー調3拍子の演歌『博多みれん』で、全く売れなかったコトは有名なハナシ……(いい曲なんですけど)。この『青いリンゴ』で、ガラリとイメージを変えなければ、もしかしたら、美川憲一とか森進一とか三善英史みたいになっていたかも……。

 さて、1971年(昭和46年)と言えば、横綱・大鵬が1月の初場所千秋楽で32回目の(最後の)優勝をしたその日に、「ザ・タイガース」が武道館で解散コンサートをしていたりした年です……。
 つまり、沖縄はまだ返還前で、毎日新聞の「フクちゃん」の連載が終わり、NHK総合テレビが全番組カラーになり、銀座にはマクドナルドの日本第1号店がオープンし、ホンダの「ライフ」や「サッポロ一番 塩らーめん」「日清 カップヌードル」などが発売となり、わけもわからず黄色い「スマイルバッジ」を付けながら、「ピ〜ス ピ〜ス!」とか言っていたころです……。

 そのころは、たとえば、「サラダ」とか「パスタ」などは、日常的にウチで食べるものではありませんでした……。
 サラダは、デパートの食堂にあった、アスパラ(当然、ホワイト)とハムとトマトがキャベツの千切りの上に乗った「コンビネーションサラダ」なるものくらいで、ほかには、付け合わせのマカロニサラダくらいなもの。刺身の「つま」とか、トンカツのキャベツの千切り、ポテトサラダはありましたが、基本的に、トマトやキュウリ、漬物以外の野菜を、日常的にナマで食べたりはしていない時代でした……、少なくともウチでは。
 パスタにいたっては、そもそも、そんな言葉は存在せず「スパゲッティ」でしたし、喫茶店にあった「ナポリタン」くらいのもので、種類はそれしかないから、「マスタ〜!スパゲッティちょうだい」って言えば、自動的にナポリタンが出てくるというシステム。あとは、やっぱり、付け合わせのケチャップのヤツだけ……。

 まあ、そんなことはともかく、デビューから僅か3ヶ月で、演歌からポップスへと大胆な方向転換を決めた、勇気ある優秀なディレクターがいたワケです。

 この 1971年(昭和46年)は、ザ・タイガースの解散が象徴するように、いわゆる「GS」ブームからの移行期でもありました。実際、湯原昌幸(雨のバラード)、井上順(昨日今日明日)、堺正章(さらば恋人)、沢田研二(君をのせて)らが、揃ってソロ・デビューした年でもあります。

 ちなみに、「新三人娘」の3人、南沙織、小柳ルミ子、天地真理が揃ってデビューしたのもこの年で、ほかにも、五木ひろし(五木ひろしの芸名で……4度目ですが)、八代亜紀、研ナオコ、欧陽菲菲らがデビューしたというスゴイ年でした。

 一方、野口五郎のデビュー前に、すでに人気だったのは、布施明、にしきのあきら、橋幸夫、あおい輝彦、野村真樹、由紀さおり、弘田三枝子、奥村チヨ、ちあきなおみ、いしだあゆみ、佐良直美らポップス系の人たちとともに、森進一、美川憲一、鶴田浩二、内山田洋とクール・ファイブ、藤圭子、青江三奈、水前寺清子らといった、いわゆる今で言う演歌系の人たちも人気だったため、野口五郎のデビューの際、どっちの路線でいくのか迷ったのかも……。

 「けど、野口五郎やったら、まず『私鉄沿線』ちゃうん?」と言われる方も少なくないかと思いますし、もちろん、ほかにも、『めぐり逢う青春』『君が美しすぎて』『オレンジの雨』『愛ふたたび』『甘い生活』『針葉樹』『グッド・ラック』『真夏の夜の夢』『女になって出直せよ』『コーラス・ライン』『19:00の街』などなど、名曲でヒット曲がたくさんあります……。

 でも、この『青いリンゴ』は、最初のヒット曲であり、「ポップスでの1曲目」という実質的なデビュー曲とも言えますし、それに、まさに「昭和ポップス歌謡曲のお手本!」というような、歌詞、メロディ、編曲、演奏、歌唱、全てにおいてプロフェッショナリズムを感じる見事な出来の曲です。
 アップテンポでノリも良く、キャッチーで言葉もメロも耳に残るし、奇を衒っていない王道のイイ曲です。しかも、メロディも、低い方から高い方まで、野口五郎のオイシイ音域が鳴るように出来ていて、声の魅力がよく出ている曲です。

 で、この曲を作ったのは、1960年代の「GS」の時代から頭角を現し、後に、大ヒットメーカーとなった、橋本淳(作詞)と 筒美京平(作曲)という青山学院コンビです。
 作詞の橋本淳は、『ブルー・シャトウ』『シーサイド・バウンド』『亜麻色の髪の乙女』『君だけに愛を』『モナリザの微笑』『長い髪の少女』など「GS」のヒット曲から、その後も『愛は傷つきやすく』『カナダからの手紙』『弟よ』などを……、作曲の筒美京平は、『また逢う日まで』『さらば恋人』『木綿のハンカチーフ』『わたしの彼は左きき』『17才』『ロマンス』などを書いたヒト。

 で、野口五郎のヒット曲の多くが、『私鉄沿線』など実兄の佐藤寛によるものを除けば、『針葉樹』『グッド・ラック』『甘い生活』『19:00の街』など、作曲はほとんどが筒美京平だったりします。

 ちなみに、『青いリンゴ』以外で、この二人のコンビによる作品はと言えば、オックス『スワンの涙』、いしだあゆみ『ブルー・ライト・ヨコハマ』、平山みき『真夏の出来事』、岡崎友紀『私は忘れない』などや、郷ひろみ『あなたがいたから僕がいた』『誘われてフラメンコ』なんかもそうだったりします。同じコンビで、郷ひろみのヒット曲も書いていたんですね〜。
 さらに、筒美京平は、これらの他にも郷ひろみに書いていて、デビュー曲の『男の子女の子』や『よろしく哀愁』『裸のビーナス』なんかもそうです。
 西城秀樹にも『勇気があれば』『恋する季節』なんかを提供していますが、ヒデキのヒット曲の多くは、馬飼野康二、三木たかし、鈴木邦彦らによるものです……。

 ところで、この当時、昭和40年代ころの歌謡曲のアレンジは、シンプルに聴こえますが、実に緻密に計算されています。この『青いリンゴ』も、メロディと歌詞だけでなく、アレンジも「昭和ポップス歌謡曲のお手本」のような見事な出来です。筒美京平は、自分で編曲までやることが多いのですが、この曲に関しては、ベテランでプロフェッショナルな仕事で定評のあった高田弘が担当しています。

 イントロのストリングスのかけ上がりから、トランペットのソロ、Aメロの「チョン」て聴こえるバイオリンのピチカートやフルートのオブリガードなど、メロディやボーカルを邪魔することなく、さりげな〜く、でも重要な要素として楽曲を盛り上げ、演出しています。
 この曲……、なぜか、ドラムが右に寄せてミックスされていますが……。

 さて、野口五郎と言えば、「新御三家」の3人の中では、どこか近寄りがたい雰囲気のあったほかの2人とくらべて、より身近なカンジがしました。
 大スタ〜でありながら、フレンドリ〜な雰囲気も持っていて、歌っている歌詞の内容も、フォークのように身近に感じられる曲が多かったような気がします……。「ダジャレ好き」と「カックラキン大放送」の「刑事ゴロンボ」とか「ナオコお婆ちゃんの縁側日記」などのせいかもしれませんが……。

 そして、野口五郎を語る上で欠かせないのは、特徴的なビブラートの歌声はモチロンですが、やはり、なんと言っても「ギター」です。

 歌手として、あまりに成功してしまったために、「アイドル歌手が弾くギターなんて〜」とおっしゃる御仁もいらしゃるかとは思いますが、そもそも、デビュー前からセミプロ級の腕前で、1976年、デビュー5年目のアルバム「GORO&HIROSHI 2 / ときにはラリー・カールトンのように」では、田中清司(Drs)、岡沢彰(EB)、矢島賢(G)ら超一流スタジオミュージシャンたちに混じって、実際に何曲かギターソロを弾いていたりします……。

 1979年の30枚目のシングル『真夏の夜の夢』と続く『女になって出直せよ』では、ギターを弾きながら歌っていましたが、その後、またしばらく持たなくなってしまったため、多くの人には、一時的な演出と映っていたかもしれませんが、もしかしたら、今では日本のギタリストのカリスマのようになっている Char みたいになっていたかもしれません……。
 実際、2017年には、雑誌「ギター・マガジン」の特集で、「約40年ぶりに邂逅!野口五郎とCharによるスペシャル対談」が実現していて、歌謡曲とギターについて語り合っています。

 ちなみに、Char がソロデビューしたのは1976年(シングル『NAVY BLUE』)で、野口五郎が『真夏の夜の夢』で突然ギターを弾きだした1979年ころは、Char のほかにも、桑名正博、原田真二、サザン、SHOGUN、ゴダイゴ、オフコース、チューリップ、世良公則とツイスト、柳ジョージとレイニーウッド、敏いとうとハッピー&ブルー(ん? それは違う)……などなど、ロックと歌謡曲が実に自然に融合していた時代でした。

 そうなんです……、野口五郎は歌手である前に、そもそも、ラリー・カールトンとカルロス・サンタナがとくに好きなギターキッズなんです。

 1973年、デビュー2年目、3枚目のアルバム『GORO IN ROCK / 野口五郎ロックの世界』では、その名の通り、全曲洋楽ロックのカバーですし、続く、デビュー3年目の1974年には、なんと、ビートルズやストーンズも使った、ロンドンの「オリンピック・スタジオ」でアルバム『GORO! LOVE IN LONDON / 愛ふたたび』をレコーディングしてます。

 さらに、1976年のアルバム『GORO IN LOSANGELES U・S・A / 北回帰線』では、ロサンゼルス・レコーディングで、現地の錚々たるミュージシャンとともに、ラリー・カールトンが全編でギターを弾いていますし、その後も、リー・リトナー、デビィット・ティー・ウォーカー、デヴィット・スピノザらと共演したりと、実はスゴかったりします……。
 自身でも、1982年以降、ギター・インストのアルバムも3枚リリースしていますし、野口五郎モデルのギターも発売されていました……。

 最後に小ネタを……、
 この『青いリンゴ』、なんと、郷ひろみがカバーしているバージョンもあるんです。ねっ、ちょっと、聴いてみたいでしょ?
 郷ひろみ、1975年のアルバム『ひろみの旅』に収録されていて、アレンジは、オリジナルの野口五郎バージョンと同じ高田弘なのですが、ずいぶんと違った雰囲気になっていたりします。
 ちなみに、このアルバムには、ヒデキのカバー『恋する季節』も入っているという、なかなかレアな逸品だったりします……。

 ついでに、もひとつ小ネタを……、
 このシングルレコードのジャケットの裏は、当然、歌詞カードになっていますが、そこには、昔はよく書かれていた簡単なプロフィールもあって、本名や出身地、生年月日、所属事務所の電話番号とともに、「学歴:堀越学園高等部一年在学中」とか、「現住所」なんてのもあって、「渋谷区神宮前3-16-2」と、ちゃんと番地まで書かれています……。平和な時代でした。
 世の中って、すご〜く変わるんですね〜。

(2020年5月20日 西山 寧)


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野口五郎 ユニバーサル(旧ポリドール)
野口五郎 エイベックス(現所属レコード会社)

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